農薬取締法が改正されました
私たちは米や野菜類などは安全という認識のもと、お店で購入して毎日食べています。ところが昨年、輸入農作物から残留農薬が検出された、日本では禁止された外国産の農薬が輸入使用され、国産農作物から検出されたなど、「安全」という保証が揺らぐという事態がおきました。農作物に対する安全性は生活する上で基本中の基本であり、今後このようなことが起きないように昨年の臨時国会に農薬取締法の一部改正案が審議承認され、2003年3月10日より施行されました。
ここでは園芸愛好家の方が農薬を使用する際に関係する取締法の主たる改正点の概略をご説明します。
・定義の変更
従来の取締法では製造業者、輸入業者、販売業者など「業者」が取締の対象でしたが、今回の改正では輸入者、製造者、販売者など「個人」が取締の対象になりました。また、使用者(農家だけでなく一般人も含む)も新たに取締の対象になり、違反した場合の罰則規定が設けられました。
(理由)従来は業者が取締の対象であり、農家を含めた個人は対象外でした。最近は日本の農薬登録がない無登録農薬を個人または代行業者に依頼して輸入使用した例もあり、安全性の観点から販売者や使用者など個人責任を明確にしました。
・無登録農薬の禁止
正式に日本の農薬登録を取っていない無登録農薬について、従来は販売のみが禁止されていました。今回の改正では販売に限らず、製造、輸入が禁止され、使用までが罰則の対象になりました。
(理由)農薬とは植物を加害する病害虫等を退治する薬剤、植物の生理機能に影響を及ぼす薬剤等をいい、すべて農薬登録を取ることが必要です。実際、天敵類や食品としても利用されている物質でも登録を取っています。
無登録農薬を農作物等の病害虫防除に使用することも法的に禁止され、アブラムシやうどんこ病などの病害虫に効く、生育促進効果があるなどの効果をうたっている物は、例え天然物(木酢液や植物抽出物など)といえども農薬登録を取るか、特定農薬に指定されなければ無登録農薬になりますので注意が必要です。
特に、「本剤は農薬でないため安心して使用できます」といって病害虫防除目的に販売している薬剤もありますが、明らかに取締法に違反しております。中には分析すると殺虫剤が検出され回収命令がでた製品もあります。必ず、農林水産省登録第○○○号と記載されている登録された農薬で防除してください。
・特定防除資材(特定農薬)制度の新設
特定農薬とは「その原料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼさないことが明らかなもの」をいい、農林水産大臣と環境大臣が指定することになります。今回、指定された種類は「食酢」、「重曹」、「使用される場所で採取された天敵」の3種類です。
特定農薬に指定されますと、農薬登録は不要になります。
(理由)農薬登録を取るためには効果・薬害試験の他に、様々な毒性試験や環境に対する影響などを調査しなければなりません。膨大な試験費がかかるため、安全性が明らかな物質で病害虫に対しての防除効果が認められている物質が指定されることになります。
今回の指定には都道府県や個人から約740種類の指定依頼がありましたが、安全性が不明、防除効果が不明などの理由で、上記3物質のみが指定されました。
・適用作物のグループ化
従来は作物毎、病害虫毎の適用でした。今回の改正で一部作物では○○類のように適用作物群としての登録が認められます。
(理由)例えばトマト、なすなどは生産量が多く、栽培面積が広いため多くの薬剤が適用をとっています。しかし、生産量が少ないマイナー作物(生産量が3万トン以下)には適用のある農薬が少なく、使用できる農薬がないのが現状でした。そのため、形状や利用部位などから類似性の高い作物をまとめて○○類として認めることになりました。
具体的には豆類、豆類(未成熟)、非結球アブラナ科葉菜類、なばな類、非結球レタス類、うり類、トウガラシ類、果樹では小粒核果類、ベリー類などです。また、野菜類、草花類、樹木類などの分類もできました。
・使用者責任の導入
植物には多くの品種があり、更に栽培方法も地域によっては異なります。また、外見からは植物の健康状態が分からないこともあり、農薬を使用することにより、葉が変色するなどの薬害を生じることがあります。特にグループ化の登録では薬害が起きる可能性があります。薬害は補償問題になることがあるため、適用拡大に消極的な一面もありましたが、今回からは、使用上の注意事項に「本剤を始めて使用する場合は使用者の責任において薬害の有無を確認すること」云々という文章が入ることになり、使用者責任になります。
薬害には本質的な薬害と栽培環境や植物の生育状況によって出る薬害があります。前者にはスミチオンとアブラナ科植物の関係、エアゾル剤の近接散布などがあり、これらはラベルの注意事項に記載されています。
・罰則規定を伴う使用基準の遵守
適用作物、適用病害虫、使用時期、使用回数などの安全使用基準は、今までは使用者が遵守することが望ましいという基準でしたが、今回の改正では適用作物、使用時期、使用回数、使用方法が遵守しなければならない基準として定められ、使用者が違反しますと罰則の対象になります。
また、使用者の中には家庭菜園を楽しんでいる一般消費者は勿論のこと、農家の方も含まれます。家庭菜園では自己責任で薬剤を散布し自ら食しますが、農家の生産物は不特定多数の人々が食するため、作物毎に散布した農薬の種類や散布量などを記録するように指導されます。
・罰則の強化
今回の改正では大幅に強化されました。使用者は従来の罰則の対象外でしたが、無登録農薬の使用や使用基準違反では3年以下の懲役、罰金は100万円以下という厳しい内容になります。
・使用者の努力義務
罰則の対象にはなりませんが、当然の内容ですが次のような項目が新たに使用者の努力義務として明文化されました。
・製品に記載されている有効期間の切れた農薬は使用しない。
・住宅地周辺などで散布する場合は農薬が飛散しないようにする(家庭園芸では強風時の使用はさけるなど)。
・土壌くん蒸剤を使用する時はガス漏れに注意する。
・その他
改正点の内、販売業者などに対する部分や一般消費者には無関係と思われる部分の説明はここでは省略しています。詳細はお問い合わせください。
最後になりましたが、人間に使用する薬は医薬品、動物に使用する薬は動物薬、植物に使用する薬が農薬ということです。天然=安心、化学品=危険という考え方をする人もいますが、フグの毒、トリカブトの毒、更には毒キノコも天然です。農薬は様々な毒性試験や環境に対する影響試験を実施し、その結果登録が認可されます。既に、なたね油、重曹、デンプン、石けんなど我々の身近にある製品も農薬として登録を取っています。繰り返しになりますが、植物の病害虫防除目的に使用する物は農薬登録を取るか特定農薬に指定されることが必要です。登録等がなければ、例え天然物といえども無登録農薬として取り扱われますので注意してください。
農薬も薬の一種です。薬は使用方法を守って使用すれば有益ですが、誤った使い方をすれば問題を起こすことがあります。使用前に説明を良く読んで適正に使用することをお願いいたします。
適用作物名のグループ化と適用拡大のお知らせ
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