植物栽培ナビラズベリー【地植え】の育て方

監修  宮崎大学農学部教授 國武 久登
基本情報
基本情報
科名属名
原産地
分類
栽培のスタート
日照条件
生育適温
水やり
特徴
樹高
種まき期
植えつけ期
開花期
収穫期
植えつけから収穫までの期間
開花から収穫までの期間
栽培カレンダー

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準備と植えつけ

準備

種類・品種選びのポイント

 ラズベリーの育種は欧米で盛んに行なわれました。特に1965年、ニューヨークで‘カスパート'という品種が育成された後、アメリカを中心にして急速に栽培されるようになりました。

 ラズベリーは、果実の色で大きく3つに分けられ、赤ラズベリー、黒ラズベリー、および紫ラズベリーがあります。日本では、一般的に赤ラズベリーと黒ラズベリーが流通しており、最近では、赤ラズベリーの変異種として黄色果実の品種も販売されています。

 また、ラズベリーは夏に冷涼な気候を好み、関東地方以北の寒冷地での栽培に適しています。しかし、西南地方の暖地でも、鉢栽培であれば十分に果実を収穫することができます。一般に、自家結実性で、夏と秋の年2回収穫できる二季なり性の品種があるのも魅力のひとつです。

 なお、ラズベリーの茎には小さなトゲがありますが、気になるものではありません。

育て方のコツ

 ラズベリーの用土は、水はけのよいものを選び、半日日陰程度の場所で育てるとよいでしょう。関東地方以西の平野部では、夏の日ざしが強いので、鉢栽培であれば半日陰の場所に移動させましょう。また、鉢栽培では、植えつけから3年を越えると、鉢の中で根が回ってしまい、新梢が発生しにくくなります。2年ごとに植え替えをすると、毎年収穫できるようになります。

 

植えつけ方

植えつけ

 ラズベリーの苗は、秋から早春にかけて、通信販売や園芸店で購入することができます。流通するのは、株分けやさし木でふやされた1~2年生苗がほとんどです。茎が太く、根がポリポット内にしっかりと張っている苗を選びましょう。

 植えつけ適期はブルーベリーと同様に休眠期がよく、極寒期は避けた3月ぐらいがよいでしょう。暖地では、秋植えでも根の活着がよく、9月から11月にも植えることができます。

 鉢植えの場合は、まずポリポットから苗を抜き出し、根が傷まない程度に軽くほぐします。6号(直径18cm)程度の鉢に、赤玉土小粒、腐葉土、川砂を6:3:1で混合した用土を使用して植えつけます。その後、表土に1株あたり3g程度の粒状肥料「マイガーデンベジフル」を置いて、たっぷりと水やりして完成です。

 庭植えの場合は、直径40cm、深さ30cm程度の植え穴を掘り、掘りあげた土、腐葉土、赤玉土小粒、完熟堆肥を5:3:1:1の割合で混合し、1株あたり50g程度の粒状肥料「マイガーデンベジフル」をよく混合します。次に、それらの混合土を2/3程度まで植え穴に埋め戻し、苗を植えつけます。その後は、枝の1/3程度を切り戻し、支柱を立ててひもで結び留めておきましょう。最後はたっぷりと水やりを行いましょう。

 

 

栽培管理

管理

水やり

 庭植えの場合は、植えつけ時にしっかり水やりしていれば、後は土の表面が乾いている場合に水やりするだけで問題有りません。

 鉢植えの場合は、4月から7月までは1日1回、8月から9月は1日2回、そして10月から3月は表土が乾いたタイミングを水やりの目安とします。なお、ベランダ栽培では、夏場の乾燥に注意が必要です。

 

肥料

 庭植えの場合は、萌芽が始まる前の3月までに元肥として、粒状肥料「マイガーデンベジフル」を1株あたり50g程度施し、さらに5月から6月と、8から9月に追肥として、同様の肥料を1株当たり25g程度を施しましょう。施肥の量は、株が大きくなるにつれて、少しずつふやすとよいでしょう。

 なお、肥料は株元ではなく、樹の枝の広がりよりも外側に施しましょう。

 鉢植えの場合は、同様の時期に同様の肥料を、1株あたり3g程度を施します。葉色の様子を見ながら、施すことがポイントです。

剪定

 ラズベリーに限らず、果樹の冬期剪定をする場合、結果習性を理解したうえで剪定をすることが重要です。特に、ラズベリーは、ほかの果樹とは異なる習性を持っているので注意しましょう。

 まず、ラズベリーの花芽は「混合花芽」と言って、ブドウのように1つの芽の中に葉枝と花芽の両方を持っています。また、その分化期は一般的なもので7月上旬から中旬と言われています。

 次に、ラズベリーには「一季なり性」と「二季なり性」があります。「一季なり性」の種類は、春に地下茎からでてくるサッカーや、株元から発生するシュートのような栄養枝(1年枝またはプライモケーン)が伸長して、冬期の低温に遭遇した後、結果母枝(2年枝またはフローリケーン)となります。そして翌春、果実は、結果母枝の芽から伸長する結果枝の先端に着きます。この結果母枝と結果枝は、結実後、冬までに枯死してしまいます。

 一方、「二季なり性」の種類は、まず春に、結果母枝から発生した結果枝の先端に果実が着きます(春果)。この結果母枝は一季なり性種と同様、冬期に枯死します。さらに、春に発生したサッカーが結果枝となり、秋にはその先端に果実が着きます(秋果)。こうした仕組みによって、1年のうちに2回、収穫を楽しめるというわけです。ちなみにこの秋果をつけたサッカーは、翌年には結果母枝となり、結果枝を発生させて春果を着けます。その収穫後には枯死するという、サイクルを繰り返します。

 ラズベリーの剪定は、1月から2月に行ないます。果実をつけたすべての枝(結果枝)を、つけ根から切り取ります。なお、「二季なり性」の種類は、秋に果実がついた枝には翌年に果実が着くので切り取らず、残すようにしましょう。切り取ってもよい枝(イラストの1)は、枯れ込んで灰色になっているので、識別は容易です。

 次に、残す結果母枝を決め、枯れた部分(イラストの1)があれば切り取ります。結果母枝から出ている側枝は、1~2芽を残して切り詰めましょう(イラストの2)。春になると結果枝が30cm以上伸びるので、株全体のバランスをとるために切り詰めますが、スペースが十分ある場合は、2芽以上残してもかまいません。また、夏期に風通しよくしたり、株の中に光が入るように、細い枝は切除して枝と枝の間隔をあけます(イラストの3)

 最終的には、しっかりして大きい芽をもつ、太く充実した結果母枝を、1株あたり5~6本残すようにします。剪定後は、実がなったときの姿を考えながら、支柱やトレリスなどに誘引します。

 剪定後の切り口、及び傷口のゆ合促進には、殺菌剤「トップジンMペースト」を剪定整枝時の枝の切り口に塗布します。

 

収穫

収穫

 ラズベリーの収穫期は「一季なり性」であれば6月から7月、「ニ季なり性」であれば6月から7月と、10月から11月です。ラズベリーの果実は一度に成熟しないので、完熟したものから開花直後の幼果まで、ひと株でさまざまな段階の果実を見ることができます。完熟した果実の色は、品種によって赤、黄色、黒がありますが、ともに成熟すると柔らかくなり、独特の芳香が強く漂います。果実の傷みを避けるために、収穫は天気のよい日の朝、または夕方に行ないます。

ふやし方

 ラズベリーの仲間は、4月~5月ぐらいになるとたくさんのサッカーが出てくるので、それをつけ根から切り取って採取し、新しい鉢に植えつければ、容易に繁殖ができます。この時期は出芽して間もない時期ですので、根を切るとすぐに萎れてしまします。採取したら、すぐに水に浸けておくことがポイントです。

監修  宮崎大学農学部教授 國武 久登
1963年、福岡県久留米市生まれ。佐賀大学農学部、千葉大学大学院自然科学研究科修了、学術博士(植物育種学)。佐賀県農業試験研究センター研究員、東海大学農学部助教授を経て、現在、宮崎大学農学部応用生物科学科教授(専門は、植物遺伝育種学、果樹園芸学)。宮崎大学大学院博士課程農学工学総合研究科教授、東海大学大学院非常勤講師を兼任。
カンキツやブルーベリーなどの果樹の品種改良や増殖に関して研究中。また、美味しい家庭果樹の栽培や普及も手がける。著書に、「新版・園芸相談 家庭果樹」、「育てて味わう!まるごとベリー」、「よくわかる栽培12ヶ月 ラズベリー、ブラックベリー」など多数あり。

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病気

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