植物栽培ナビオリーブ【鉢植え】の育て方

監修  千葉大学環境健康フィールド科学センター 助教 三輪 正幸
基本情報
基本情報
科名属名
原産地
分類
栽培のスタート
日照条件
生育適温
水やり
特徴
樹高
種まき期
植えつけ期
開花期
収穫期
植えつけから収穫までの期間
開花から収穫までの期間
豆知識

国内では小豆島が産地として有名なオリーブですが、生の果実は全国的に流通してません。家庭で育てて収穫すれば、塩漬けや酢漬けなどの加工を自身で楽しむことができます。渋抜きの方法も多彩なので、ぜひとも鉢植えで育ててみてみてください。

シルバーリーフが美しく、樹の形も整っていることから庭木として盛んに利用されていますが、結実している例は少ないようです。 実つきが悪い原因で最も可能性が高いのが、受粉樹がないことです。オリーブは自身の花粉では実つきが悪いので、異なる2品種以上を近くに植える必要があります。‘ルッカ’など受粉樹が不要とされる品種もありますが、これらの品種でも受粉樹があったほうが実つきがよくなる傾向にあります。
 次に受粉におよぼす水の影響です。開花期が5~6月で梅雨の時期に当たるため、花粉が雨で洗い流されてうまく受粉できないことがあります。鉢植えは5~6月だけでも軒下などの雨が直接当たらない場所に置くとよいでしょう。また、開花中は、水やりの際に花房に水をかけないように注意することも重要です。
 開花直後の花から花粉をとり、ほかの品種に人工授粉してやると確実に受粉が行なわれ、実つきが格段によくなります。これらのポイントをおさえれば、枝葉を楽しむ庭木としてでなく、果実を収穫する果樹としてオリーブを栽培することができます。

地中海の乾燥した地域が原産の果樹のため、土を乾かし気味に育てた方がよく生育するイメージがありますが、あまり根を乾かすと花つきや実つきが悪くなることがあるので、注意が必要です。あえて水やりを控えて鉢土を乾かす必要はなく、通常の果樹と同様に、鉢土の表面が乾いたらたっぷりと水をやりましょう。

耐寒性の分類について・・・東京を基準にして、露地で十分に越冬できるものを耐寒性、霜よけや暖房のある室内に取り込まないと越冬できないものを半耐寒性、本格的な温室がないと越冬できないものを非耐寒性として分類しています。

栽培カレンダー

カレンダーは拡大してご覧ください。

準備と植えつけ

準備

使用するもの

・品種名が明記されたさし木苗かつぎ木苗
・苗木の根鉢より一回りほど大きな鉢。6〜10号鉢程度(直径18〜30cm)。
・市販の「オリーブ用の土」か「果樹・花木用の土」→基本用土を配合する場合:「野菜用の土」と鹿沼土小粒を7:3で混合した用土
・苦土石灰
・鉢底石
・鉢底ネット
・土入れ、または移植ゴテ
・ひも(麻ひも、紙ひもなど)
・肥料(用土に肥料が含まれていない場合。粒状肥料「マイガーデン粒状肥料」、「マイガーデンベジフル」など)
・ジョウロ

 

ワンポイント

基本的には受粉樹が必要で、異なる2品種以上で育てると実つきがよくなります。「受粉樹が不要」と記載された品種でも受粉樹と一緒に育てた方が実つきがよくなる傾向にあります。受粉樹には花粉が多い‘ネバディロブランコ’などがおすすめです。pH6.5~7.0の中性付近の土壌を好むので、市販の「オリーブ用の土」が最適です。入手できなければ、「果樹・花木用の土」を用いるか、「野菜用の土」と鹿沼土小粒を7:3で混合して用いますが、10号鉢なら一握り(30g程度)の苦土石灰を混ぜ込むとよいでしょう。

植えつけ方

[植えつけ]植えつけ適期:関東地方以西 2〜3月
寒さがゆるんだ2〜3月が植えつけの適期です。「オリーブ用の土」や「果樹・花木用の土」などを使用して植えつけます。

[仕立て]棒苗を植えつけて変則主幹形仕立てにする場合
植えつけ時:ほかの果樹とは異なり、枝がじゃまなほど長すぎない限りは、切り詰める必要はありません。
植えつけ2〜3年目の冬:混み合った枝は間引きます。なるべく横向きの枝を残し、直立する枝は優先的に間引きます。残した枝のうち20cm以上の長い枝については、先端を1/3程度切り詰めて充実した枝を発生させます。
植えつけ4年目以降の冬:剪定を参照してください。

 

植え付け2~3年目の冬

植えつけ時の枝の切り詰めは基本的にはしなくてよい。
同じ箇所から枝分かれしていればどちらかを切る。

 

栽培管理

管理

使用するもの

・ジョウロ
・肥料(粒状肥料「マイガーデン粒状肥料」、「マイガーデンベジフル」などの追肥)
・摘果バサミ
・剪定バサミ
・紙コップ、絵筆(人工授粉用)
・食塩、ガラス瓶(塩漬け用)

 

ワンポイント

摘果する際には、先端が細く加工された摘果バサミを用いると便利です。
剪定する際に切れない剪定バサミを使用すると、切り口がいびつになって木に 残る傷口の癒合が遅れ、病気や枯れ込みが入りやすくなります。剪定バサミは 少々高価でも、よく切れる上等なものを使用するとよいでしょう。

置き場所

 

春から秋は日当たりと風通しがよく、雨が直接当たらない場所に置くと病害虫が発生しにくく実つきもよくなります。冬は-12℃を下回らない場所に置きましょう。

 

水やり

 

鉢土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。

 

肥料

 

3月に元肥、6月に追肥、11月に礼肥を施します。肥料は鉢土の全域に均一になるように施します。

 

人工授粉

 

開花期が梅雨と重なるため、うまく受粉できないことがあります。毎年のように実つきが悪い場合は、人工授粉を検討しましょう。開花直後の花房の下にコップを添え、乾いた絵筆などでコップ内に花粉を落とします。花粉と一緒に花弁が落ちても取り除く必要はありません。コップ内に花粉がたまったら、絵筆を用いてほかの品種の花に受粉します。

 

摘果

 

適期は7〜8月ごろです。まずは1果房あたり1果になるように間引きます。次に葉の数を目安にさらに間引きます。目安としては1果あたりの葉が8枚程度です(葉果比8)。隔年結果性が強いので摘果は重要な作業です。

 

収穫

 

果実の肥大が停止して緑色から黄緑色に変化した10月ごろから収穫することができます。黄緑色の果実は、歯ごたえがあり、えぐみが少し強いのが特徴です。11月ごろまで待って紫色に完熟した果実を収穫すると、軟らかい食感で香りや風味を楽しむことができます。

 

脱渋

 

果実は完熟してもオリュロペインという渋み成分が大量に含まれているため、渋抜き(脱渋)しなければ食べられません。オリーブの渋みを抜くには、業務用には苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)という劇物の薬品が使用されますが、取り扱いには注意が必要なので家庭用には塩漬けがおすすめです。果実1kgあたり150g程度の食塩を混ぜてガラス瓶に密封すると、1〜2ヵ月で可食状態になります。好みで水にさらして塩抜き・渋抜きしてから食べます。

 

剪定

 

[手順]
①木の芯を止める:3年以上が経過して樹高が高くなってきたら、木の芯を止めるため、木の先端を枝分かれしている部分で切り取ります。木の先端以外の部位でも枝が長くなってきたら同様に剪定します。この作業は樹高が高くなったらその都度行ないます。ただし一度に大量の枝を切り戻すと、翌年に太くて長い枝が発生して実つきが悪くなることがあるので、太い枝を切り戻す際は、切り取る長さが50cm程度になるようにします。
②不要な枝を間引く:混み合った枝や枯れ枝、徒長した枝などの不要な枝をつけ根から間引きます。オリーブは2枚の葉が同じ場所につく対生のため、同じ場所から2本の枝が発生しやすく、枝が混み合いやすい傾向にあります。同じ場所から枝分かれした場合は、どちらかの枝を選んでつけ根で間引きましょう。
③長い枝のみ、先端を1/3〜1/2程度切り詰める:花芽と葉芽の区別は外見からはつきませんが、カキやブルーベリーとは異なり、枝の中間付近にも花芽がつきやすいので、すべての枝をある程度の長さで切り詰めても翌年も収穫量が激減することはありません。夏に伸びる枝は長くなりすぎる傾向にあるので、20cm以上の枝の先端は1/3〜1/2程度切り詰めて、新しい枝の発生を促します。

 

①〜③の手順に従って剪定する。
切り詰めに強いので長い枝は積極的に切り詰める。

 

収穫

ワンポイント

毎年のように実つきが悪い場合は、人工授粉を検討しましょう。また、隔年結果性が強いので摘果は重要な作業です。

監修  千葉大学環境健康フィールド科学センター 助教 三輪 正幸
1981年岐阜県生まれ。千葉大学環境健康フィールド科学センター 助教。専門は果樹園芸学。教育研究に加え、「NHK趣味の園芸」の講師をつとめ、家庭でも果樹を気軽に楽しむ方法を提案している。著書「剪定もよくわかる おいしい果樹の育て方」、ほか監修書など多数。

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