植物栽培ナビびわ【鉢植え】の育て方

監修  千葉大学環境健康フィールド科学センター 助教 三輪 正幸
基本情報
基本情報
科名属名
原産地
分類
栽培のスタート
日照条件
生育適温
水やり
特徴
樹高
種まき期
植えつけ期
開花期
収穫期
植えつけから収穫までの期間
開花から収穫までの期間
豆知識

初夏の風物詩、ビワ。冬でも葉がある常緑性の植物なので、目隠し用の庭木としての需要が高く、庭先でみかけることが多い果樹です。食べた果実から取り出したタネをまいたら発芽したという話をよく聞きますが、タネから育てた場合には初結実まで9年程度かかるため、果実を収穫する目的ならタネからスタートするのではなく、苗木を買って植えつけるとよいでしょう。

「ビワを庭に植えると病人がでる」という不本意な迷信もありますがが、これは庭植えにすると大木になり、家が日陰になることから発生した迷信で、実際にはビワを植えても家族にに危害が加わることはなく恐れることはありません。鉢植えで育てて剪定を適切に行えば、コンパクトに仕立てることができるので、ぜひともチャレンジしてみてください。

庭先で実るビワは市販果実よりも小さい傾向にありますが、家庭でも大きな果実を収穫するにはいくつかポイントがあります。
①まずは冬の寒さです。秋から冬に開花し、小さな果実の状態で越冬するため寒さに弱く、- 3℃を下回ると落果します。そのため、冬は鉢植えを室内の日当たりのよい場所など、暖かい場所に移動します。
②次に摘果です。1果房に4個以上結実させると、養分不足で果実が小さくなるので、3~4月に1果房に1~3果に間引きます。
③最後に品種の選択も重要です。苗木を新たに植える際は、‘瑞穂’や‘福原早生’、‘大房’などの大果な品種を選ぶとよいでしょう。
 以上のポイントをおさえれば、家庭でも1果80gを超える果実の収穫も夢ではありません。

耐寒性の分類について・・・東京を基準にして、露地で十分に越冬できるものを耐寒性、霜よけや暖房のある室内に取り込まないと越冬できないものを半耐寒性、本格的な温室がないと越冬できないものを非耐寒性として分類しています。

栽培カレンダー

カレンダーは拡大してご覧ください。

準備と植えつけ

準備

使用するもの

・品種名が明記されたつぎ木苗
・苗木の根鉢より一回りほど大きな鉢。6〜10号鉢程度(直径18〜30cm)。
・市販の「果樹・花木用の土」→基本用土を配合する場合:「野菜用の土」と鹿沼土小粒を7:3で混合した用土
・鉢底石
・鉢底ネット
・土入れ、または移植ゴテ
・支柱(60cm程度)
・ひも(麻ひも、紙ひもなど)
・肥料(用土に肥料が含まれていない場合。粒状肥料「マイガーデン粒状肥料」、「マイガーデンベジフル」など)
・ジョウロ

 

ワンポイント

‘麗月’を除き、受粉樹が不要なので、苗木1本だけでも実つきがよいのが特徴です。寒冷地で育てる場合は耐寒性が強い‘大房’や‘田中’などの品種、大きな果実を収穫したい場合は‘福原早生’や‘瑞穂’などの品種がおすすめです。冬に植えつけると寒さで傷むことがあるので、寒さがゆるんだ2月下旬ごろから植えつけると無難です。

植えつけ方

[植えつけ]植えつけ適期:関東地方以西 2〜3月
寒さが緩んだ2〜3月が植えつけの適期です。根が酸素を好むので、深く植えすぎないように注意しましょう。木が斜めに生育しないように支柱を設置して枝を誘引します。植えつけ時の枝の切り詰めは、基本的には不要です。

[仕立て]棒苗を植えつけて変則主幹形仕立てにする場合
植えつけ時:「果樹・花木用の土」などを使用して植えつけます。ほかの果樹とは異なり、枝が長すぎない限りは切り詰める必要はありません。
植えつけ2〜3年目の冬:枝分かれしやすく、同じ位置から何本もの枝が発生します。植えつけ2〜3年目に発生する枝はゆくゆく木の骨格となるので、多く残すとそれぞれが細く貧弱になります。そのため、混み合わないように間引いて充実した枝に生育させます。
植えつけ4年目以降の冬:剪定を参照してください。

 

1ヵ所当たりの枝分かれが2〜3本になるように混み合った枝を間引く。

 

栽培管理

管理

使用するもの

・ジョウロ
・肥料(粒状肥料「マイガーデン粒状肥料」、「マイガーデンベジフル」などの追肥)
・果実袋
・剪定バサミ

 

ワンポイント

剪定する際に切れない剪定バサミを使用すると、切り口がいびつになって木に残る
傷口の癒合が遅れ、病気や枯れ込みが入りやすくなります。
剪定バサミは少々高価でも、よく切れる上等なものを使用するとよいでしょう。

置き場所

 

春から秋は日当たりと風通しがよく、雨が直接当たらない場所に置くと病害虫が発生しにくいです。冬は-3℃を下回らない場所に置きましょう。

 

水やり

 

鉢土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。

 

肥料

 

3月に元肥、6月に追肥、9月に礼肥を施します。肥料は鉢土の全域に均一になるように施します。

 

摘蕾

 

1つの花房に100個以上の花蕾がつきます。すべて残すと養分を消費しすぎるので、10〜2月の花蕾や花は、下の段の軸2〜3本(段)のみを残して、ばっさりと間引きます。

 

摘果

 

気温が上昇して果実が肥大し始めた3〜4月ごろに摘果します。まずは1果房あたり1〜3果になるように間引きます。次に葉の数を目安にさらに間引きます。目安としては1果あたりの葉が25枚程度です(葉果比25)。

 

袋かけ

 

摘果が終わった果実は、市販の果実袋をかぶせて病害虫から守ります。

 

収穫

 

果実袋を外し、果実全体が橙色に色づいたものから順次収穫します。果実を支え、上に持ち上げると収穫できます。

 

剪定

 

[手順]

①木の芯を止める:3年以上が経過して樹高が高くなってきたら、木の先端を枝分かれしている部分で切り取り、木の芯を止めます。木の先端以外の部位でも、枝が長くなってきたら同様に剪定します。この作業は樹高が高くなったらその都度行ないます。ただし一度に大量の枝を切り戻すと、翌年に太くて長い枝が発生して実つきが悪くなることがあるので、太い枝を切り戻す際は切り取る長さが50cm程度になるようにします。

②不要な枝を間引く:混み合った枝や枯れ枝、徒長した枝などの不要な枝をつけ根から間引きます。特に何本も枝分かれしている場合は、1ヵ所2〜3本になるように間引きます。新しい枝に切り替えると老木になっても結実量が減ることはありません。

③葉が少ない枝を間引く:何年も葉を伸ばして使用した場合、常緑果樹なのでつけ根付近の葉が落ちます。枝が古くなると果実がつきにくくなるほか、果実がなる部分が木の外周部分ばかりになって、冬の寒さで果実が傷みやすくなります。つけ根に葉がない古い枝は間引いて周囲の新しい枝に更新します。

 

①〜③の手順に従って剪定する。

枝分かれの数を減らして各枝を充実させる。

 

ワンポイント

枝のつけ根に葉がない古い枝は、間引いて周囲の新しい枝に更新しすると、実つきが回復します。

監修  千葉大学環境健康フィールド科学センター 助教 三輪 正幸
1981年岐阜県生まれ。千葉大学環境健康フィールド科学センター 助教。専門は果樹園芸学。教育研究に加え、「NHK趣味の園芸」の講師をつとめ、家庭でも果樹を気軽に楽しむ方法を提案している。著書「剪定もよくわかる おいしい果樹の育て方」、ほか監修書など多数。

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