植物栽培ナビ熱帯スイレンの育て方

監修  園芸研究家 倉林雪夫
基本情報
基本情報
科名属名
原産地
分類
栽培のスタート
日照条件
生育適温
水やり
特徴
樹高
種まき期
植えつけ期
開花期
収穫期
植えつけから収穫までの期間
開花から収穫までの期間
豆知識

スイレンには大きく分けてヨーロッパや北アメリカ原産の温帯スイレン(耐寒性スイレン)と、アフリカや東南アジア原産の熱帯スイレンがありますが、ここでは近年人気の高まってきた熱帯スイレンについて解説します。

ひと昔前には、熱帯スイレンの栽培には広い温室と大きな池が必要と思われていましたが、実際にはバケツ程度の容器でも栽培できる種類もたくさんあり、マンションのベランダでも十分に楽しめるのが熱帯スイレンの大きな特徴です。熱帯スイレンには不思議な性質があり、栽培する容器のサイズ(特に水面の広さ)によって育ち方が変わります。つまり、大きな池で雄大に葉を広げ巨大な花を咲かせていた品種でも、小さなスイレン鉢で栽培すればコンパクトに育ち、かわいい花を咲かせてくれます。

特に葉の中央に小さなムカゴを付けるムカゴ種と呼ばれる系統は小型に作れる品種が多く、家庭での栽培にオススメです。

  • スイレン鉢での栽培
    スイレン鉢での栽培

また、夏だけの花と思われがちですが、開花期間が長く秋遅くまで楽しめるのも大きな魅力です。
1輪の花は朝開いて夕方には閉じますが、3日間開閉を繰り返します。咲き終わった花は水に沈み、交代するかのように次の花が上がってくるため、ほぼ毎日のように美しい花が眺められます。しかも3日間の開花中、花の表情が次々と変わるのも面白い特徴で、日によってまるで違う種類のように咲いてくれます。花の色はピンクや青紫、黄色や白色と多彩で、蛍光を帯びたような花弁の質感が魅力的です。

  • 開花1日目
    開花1日目
  • 開花2日目
    開花2日目
  • 開花3日目
    開花3日目

花茎が丈夫なので、切り花として楽しめるのも熱帯スイレンの大きな魅力です。水揚げが良いため、切り取った花をそのままコップに投げ入れるだけでテーブルフラワーとして楽しめ、美しい色彩だけでなくその素晴らしい香りを室内で楽しめます。コツは開花1日目の花を切ることで、日の当たらない室内であっても残り2日間きちんと開閉を繰り返してくれます。

  • 切り花
    切り花
  • 開花1日目の花を使う
    開花1日目の花を使う
栽培カレンダー

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準備と植えつけ

準備

使用するもの

・葉の展開している苗
・スイレン鉢(直径20㎝~50㎝程度のもの)
・植え込み用の鉢(5~6号の浅鉢)
・スイレン用土(なければ、田土、荒木田土、赤玉土小粒で可)
・肥料(「マイガーデン粒状肥料」が最適)

 

ワンポイント

植え付け適期:5月下旬~6月(苗が市販される)
①苗は小さな葉が多数あるものは避け、数枚の大きな葉が付いたものを選びます。
②スイレン鉢は直径40㎝以上の方が後の管理は楽で花数も多いです。
③鉢はプラ鉢かまたは駄温鉢を使います。柔らかいポリポットは避けましょう。
④用土はサラサラの状態だと株を固定できないので、粘土状に練って使います。

植えつけ方

植え込み鉢の中心に芽が来るように苗を置き、根は崩さず周りに用土を入れて苗を固定します。この時、新芽の付け根が土に埋まらないよう注意します。肥料は用土に混ぜ込むのではなく、株から離れた位置にまとめて埋め込みます。量は6号浅鉢で15g程度(通常の基準よりかなり多め)です。肥料が水中に溶け出さないよう、しっかりと用土で埋め込んでおきます。
植え込んだ後はすぐに水を張ったスイレン鉢に入れ、株を水没させておきます。

スイレン植え方

 

ワンポイント

新芽が水から出ていると傷んでくるので手早く植え付け、すぐに水中へ戻しましょう、葉が水没していても大丈夫です。

栽培管理

管理

置き場所

 

半日以上日の当たるところに置きます。

 

水やり

 

水が減ってきたら、株元が露出しないうちに水を継ぎ足していっぱいにします。水道水をそのまま入れてかまいません。
水が極端に濁らない限り、水替えは不要です。

 

肥料

 

元肥が十分にいれてあれば追肥不要ですが、葉色が薄くなって生育が悪くなってくるようなら、「マイガーデン粒状肥料」または、市販のスイレン用肥料か錠剤型の肥料を株元から離れたところに埋め込みます(水中に溶け出さないよう、土に埋めてふたをする)。

 

古葉摘み

 

黄色くなってきた葉や重なり合った葉などは早めに摘み取ります。

 

わき芽摘み

 

小さな葉が出てきたらわき芽なので、付け根から摘み取ります(わき芽が増えると花が咲きにくくなる)。

 

花ガラ摘み

 

終わった花は閉じた状態で水中にもぐりますが、放置すると腐ってきて水が汚れるので、摘み取ります。
特に小型のスイレン鉢での栽培では花ガラが容器の外に出て虫の発生源になるので、忘れずに摘み取ります。

 

防寒・冬越し

 

球根を完全に休眠させるため、10月頃から水深を浅くし株元が水から出るようにしておきます。

新芽の展開が止まり、古葉の葉柄が球根からポロッと取れるようになれば球根が休眠に入っているので、根を切って土から取り出し、洗って室内で保管します。

少し水気を含んだ水苔で包みチャック付きのポリ袋に密封して室内で春まで保管しておきます。水苔の代わりにフェルトで包んだり、ココチップやおが屑でも良いです。

または、水の入ったコップに入れ、室内の窓辺で管理する方法もあります。この場合は徐々に葉が伸び水も汚れてくるので、適当に水替えと掃除を行い春まで維持します。
越冬温度は5℃~10℃程度で良い。

もう一つの方法として、ムカゴ種に限り、ムカゴで小球を作りそれを上記の方法で保管すると越冬しやすいです。

この場合は、切り離した葉をひっくり返さずに浮かべておくと新芽や根があまり伸びず、小さな球根ができます。

  • コップに入れて越冬
    コップに入れて越冬
  • 室内の窓辺に置く
    室内の窓辺に置く
  • 上向きで作ったムカゴ球
    上向きで作ったムカゴ球

 

ふやし方

 

ムカゴ種の場合、ムカゴのついた葉を株から切り離し水に浮かべておくと簡単に小苗が作れます。

この場合、少し古くなった葉が適していて、葉柄を4㎝程つけて葉を切り離し、ひっくり返して水に浮かべておくのがポイントです。すぐに新芽と根が伸び出し、3~4週間ほどで植え付けできるサイズまで育ちます。

  • 発根したムカゴ
    発根したムカゴ

植え付けるときは黄色くなった親葉を取り外し、根は2㎝に切り詰めておくと扱いやすいです。植え付け方法は、浮いてこないよう用土に軽く押し付け針金で作ったUピンで固定すると良い。土に埋め込んでしまうと生育が遅くなります。

時期は7月から8月が適期で、上手に育てれば秋までに開花させられます。

非ムカゴ種の場合、わき芽が出たら葉のサイズが5㎝程度になるまで育て、それをかきとって育てると良いです。
または、越冬した翌年には球根から多数の芽が出るので、それを分けることもできます。

 

越冬した球根 の植え付け

 

4月中旬頃に水の入ったコップに入れ、日の当たる暖かい窓辺で芽出しを行います。週に一度水を入れ替えておくと1~2週間で発芽し始めるので、葉が5㎝以上に伸びてきたら鉢に植え付けできるようになります。

  • 根が伸びてきたら植え付ける
    根が伸びてきたら植え付ける

植え付けのタイミングは屋外で水温が15℃以上になってからで、充分に暖かくなってから行います。寒いと休眠してしまいかえって生育が遅くなります。

植え込むとき、新芽が土で埋まらないよう浅植えにしますが、球根が大きい場合邪魔になるので、球根本体を横にねかせて植えると植えやすくなります。古い球根からは発根しないので埋める必要はありません。また、根が長く伸びていたら、新芽に絡んでしまうので、すべて埋めてやるか、邪魔な場合は切り詰めても構いません。

わかりにくいのですが、球根から複数の芽が出ていると花が咲きにくくなるので、一番大きな芽だけ残し、あとは芽カキして植え付けると花が早く咲いてきます。

この場合は、植え付け後十分に活着して浮き葉が展開し始めてから肥料を埋め込んだ方が安全です。水中に溶け出さないよう、株元から離れたところにまとめて埋め込み、土で覆っておきます。

 

害虫&病気対策

 

熱帯スイレンは病害虫の少ない植物なので、ほぼ無農薬で栽培が可能です。

しかしアブラムシが付くことがあり、放置しておくと生育に影響するので、早めに防除します。

メダカを飼っていなければ、「オルトランDX粒剤」を水中に撒けば簡単に防除できますが、メダカがいる場合には魚に影響の少ない「モスピラン・トップジンMスプレー」を葉に散布します。

鉢から飛び出している葉が多いと、その葉裏に付きやすくなるので注意します。特に秋口に大量発生することがあるので、気を付けましょう。

葉が直径1~2㎝にくりぬかれ水に浮いていたら、ミズメイガの仕業です。その中に小さな芋虫が潜んでいるので、回収して捕殺します。

ごくまれに、葉に褐色の斑点が出る褐斑病が発生しますが、少ないうちに病気の葉を回収してしまえば、ほとんど問題ありません。

 

ワンポイント

葉がスイレン鉢から飛び出し、水面から離れても枯れることはないので、無理に水面に戻すのは避けたほうが良いです。

また、スイレンが元気であれば水はあまり濁らないが、極端に汚れてきたら水替えしたほうが良いです。
真夏の日向では日中水温が40℃ほどになるが、短時間であれば問題ありません。

一緒にメダカを飼うのはボウフラの防除にもなり、オススメです。

監修  園芸研究家 倉林雪夫
1950年 東京都生まれ 明治大学農学部卒。
三重県の(株)赤塚植物園育種開発部参与。シャクナゲやタイタンビカス等さまざまな植物の育種を担当。熱帯スイレンについては、海外からの導入だけでなく、量産体制のシステム作りや一般への普及に取り組んできた。
NHK「趣味の園芸」で過去2回熱帯スイレンのテーマで出演。

害虫・病気対策

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熱帯スイレンで適用のある害虫・病気と対処薬剤

害虫

病気

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使用に際しては必ず商品の説明をよく読んで、記載内容に従ってお使いください。
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