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10月-1.スイート・スイート・オクトーバー

雨上がりに探す花の香り

 雨の多かった夏が過ぎると、秋雨の季節。雨の合間を見計らって、ちょっと散歩に出かけましょう。今回のみちくさは、「花の香り」がナビゲートしてくれますよ。
 秋雨の季節は、雨雲レーダーをこまめにチェック。雨雲と雨雲の合間を狙って、それ!とばかりに散歩や買い物に出かけたり、外作業を急いだり。
 その日も雨上がりのアスファルトをぐんぐん自転車で走っていたところ、雨のにおいに混じって、ときおりどこからか漂ってくる花の香りがふわっと鼻をかすめたのでした。「これはー、残りのテイカカズラかな」「これはー、あらまぁ、この住宅街のどこかにクズが茂って花が咲いているのかな」「んー、針葉樹。どこかでコノテガシワの生垣でも剪定したのかしら」。植物の香りは自転車の速度で現れては、景色と一緒に消えていきます。

 そんなとき、ハッとして自転車を停めて、あたりをキョロキョロ見回してしまった香り。間違いありません。今年もやってきたあの香り、キンモクセイです。この香りに気づくと、秋がどんどん進んでいるのを知ることとなって、ちょっと切なくなったり、ワクワクしたり、複雑な気分になります。
 せっかく自転車を停めて見回してみたものの、見える範囲にキンモクセイの木は見つかりませんでした。いったいキンモクセイの香りというのは、どのぐらいの範囲を漂うことができるのでしょうか。そういえば、木を探しても目につかないことが度々あります。

キンモクセイの仲間たち

 まれに「あ!キンモクセイ!」と香りを頼りに木を探し当てた場所に、オレンジ色ではない花が咲いていることがありませんか?
 クリーム色をしたギンモクセイやウスギモクセイは、キンモクセイよりも見ためもちょっと控えめで、香りもキンモクセイほど華やかではありません。
 でも、青いような澄んだ香りに感じられ、姿が控えめなぶん、木にたどり着いたときは感動が強く、忘れがたいものになります。なお、原産地の中国から、花つきがよい雄株だけが日本へ導入されたキンモクセイに対し、ウスギモクセイは雌株もあることから、果実をつけているのを見かけることができます。

 最近は、主に春と秋に咲く、四季咲きキンモクセイや、スイートオリーブの呼び名もある四季咲きギンモクセイも出回っています。あの甘い香りに会えるチャンスが年に数回もあるのかと思うと、ワクワク期待も膨らんでしまいます。でもその半面、秋の訪れの実感が薄れてしまうような気もして、これもまた、複雑な気持ちになるのです。

 一方、身近なところでは、ヒイラギモクセイやヒイラギも、キンモクセイと同じモクセイ属( Osmanthus )の仲間。これらの花もやはり、優雅な香りを漂わせてくれます。ヒイラギというと、節分のときにイワシの頭を刺して魔除けにする風習が知られていますが、あのヒイラギと愛らしいキンモクセイが近い仲間なのは、ちょっと意外かもしれません。
 ヒイラギの花はこれから晩秋にかけて開花期を迎えます。もし気づいたら、ぜひ花に顔を寄せてみてください。そしてその時期には散ってしまうであろう、香りのモクセイ属の主役、キンモクセイの芳香を思い出しながら、ヒイラギの香りとの接点を探ってみるのも楽しいものです。

 さて、風が強まってきたと思ったら、また雨の予報のよう。傘をさして歩けば、濡れたアスファルトが散ったキンモクセイの花で、星空のように彩られる日も近いことでしょう。そして、あと何回目かの雨の日が過ぎれば、秋バラの季節ももうすぐ。甘い香りが次々と訪れて、みちくさがますます豊かになる10月です。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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