10月-1.魅惑のタネ(ヒガンバナ・キンモクセイ)

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タネができない植物

 今や秋の花が真っ盛りの時季。春に次ぐ艶やかな季節を、楽しんでいらっしゃいますか?
 さて、先月後半には秋の彼岸がありました。その時期に咲いていたのが、名前の通り、おなじみヒガンバナです。今は名残の花が咲いていたり、色褪せ、萎れた花弁がまとわりついている状態です。そんな状態のヒガンバナを見かけたら、ふと「タネはできているかな?」と観察したくなります。萎れた花弁に触れてみると、くしゃっと頼りない感触。いずれの花もそんな調子で、子房が膨らんでいるものには出合えません。ヒガンバナは、身近にあるタネができない植物のひとつです。その理由は三倍体という遺伝上の特徴で、ヒガンバナのほか、シャガ、オニユリなどが知られています。三倍体の植物は、タネができない代わりに丈夫で繁殖しやすいという長所があります。郊外でヒガンバナやシャガ、オニユリなどの群落を見かけるのは、先天的にもった強健な性質のお陰なのです。
 では、タネができないこれらは、どのようにしてふえていくのでしょうか。答えは球根です。太った自らを分裂させてコピーをふやしていくという繁殖方法は、そのまま自分のコピーをふやせる、タネよりもむしろ効率的な繁殖方法なのです。ただし、ヒガンバナでいうと、原産地の中国にはタネがつくタイプが存在しています。こうした別の性質をもったタイプを利用して園芸的な交配が行われ、新しい品種が誕生しているのです。
 ヒガンバナなどの三倍体植物のほか、タネができない、できにくい植物としては、身近なところではキンモクセイ、ジンチョウゲが知られています。キンモクセイは、まさに今が開花期。江戸時代に原産地の中国から導入されたとき、雄株のみだったため、日本で見られるキンモクセイには、タネがつきません。ジンチョウゲもまた、日本にある株はほとんどが雄株でタネがつかないそうです。

タネに何を期待する?

 ヒガンバナやキンモクセイのタネは期待できないとしても、野山や庭の植物がタネをつけている様子を目にするのもまた、秋の楽しみのひとつです。サヤになるもの、綿毛になるもの、通りすがりの人や動物にくっつくもの。タネの形状にはビジュアルとして面白みがあるだけではなく、その植物が獲得してきた子孫を繋ぐ知恵が見え隠れしているのです。
 野山なら可能なところで、自宅の庭なら自由に、タネを採取してまいてみるのも楽しいものです。樹木のタネのなかには、採取したらすぐにまかないと発芽しないものや、発芽までに半年以上の時間を要するものもあります。また、果肉に包まれているものは、タネまきをするまえに果肉を洗い落とさないと、発芽しないものもあります。多くは採取した状態でジッパー袋や密閉容器などに入れて持ち帰りましょう。その後はそのタネに見合った方法でまけばOK。保存しても発芽率が落ちない種類であれば、紙袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保管できます。
 野山の植物にはありませんが、自宅の庭の植物のなかには、できたタネをまいても、親株と同じような花が咲かないものもあります。F1品種という交雑種の株がつけるタネは、性質がばらけてしまうため、親株と同じものを得ることはできません。親株をまいたときのタネ袋や、苗についていたラベルをチェックして、F1品種かどうか確認しておきましょう。ただし、逆に親株とは違う形質を期待するのも、ちょっとマニアックな楽しみかたといえるでしょう。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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