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10月-6.キクを愛でる、味わう(キク)

今に伝わる古きよきキク

 日本の国花や皇室の象徴でもあることから、キクは日本を代表する馴染み深い植物のひとつですが、その原産地は中国。奈良時代、あるいは平安時代に渡来したとされます。やがて時代とともに広まり、現在国内では、20種ほどの野生ギクの自生も見られます。
 しかし、私たちがふだん「キク」と呼んだり、生花店や園芸店で見ているのは、「イエギク(家菊)」という園芸的に改良された品種群がほとんどです。栽培の歴史が長いだけあって、非常に多くの品種が世界中でつくられてきました。
 日本の植物と思えてしまうのは、古くから伝わる古典菊があるからでしょう。古典菊とは、室町時代から江戸時代にかけて、各地で人気を博したイエギクの品種の総称です。京都には嵯峨菊、熊本には肥後菊、中京には伊勢菊、そして江戸には江戸菊という、独自の系統が生まれ、その栽培法と仕立て方、観賞法が確立されて今に伝わっています。キクの季節に開催される各地の菊花展は、これら古典菊の趣味家が栽培の腕を競う場でもあります。伝統的な菊花壇や菊人形の展示を楽しみながら、先人たちを虜にして止まなかったキクの魅力を探ってみてください。たとえキクを栽培したことがない人でも、またポピュラーな海外で作出されたポットマムを栽培したことがある人ならなおさらのこと、古典菊の世界観から、日本らしい美意識を見いだすことができると思います。

菊の節句を祝ってみよう

 「節句」というと3月3日の桃の節句、5月5日の菖蒲の節句(こどもの日)がポピュラーですが、いずれも日本の暦のひとつで、季節の節目として行事が行われてきました。ほか7月7日の七夕、1月7日の七草の日も節句のひとつです。いずれも植物と関わり合いがあるのが、園芸ファンにとっては興味をそそられるところです。
 これらの節句が新暦を主体に催されるのに対し、年内最後の節句となる9月9日の菊の節句は、旧暦で行事が執り行われるケースが多くみられます。旧暦の9月9日のほうが、キクの季節と実感できるでしょう。
 菊の節句では、キクの花を飾るのはもちろんのこと、菊酒を楽しみ、健康と長寿を願います。菊酒とは、キクの花弁を浸した水でつくる酒、あるいは花弁を浮かべた酒のことで、現在では後者が一般的です。青果店で手に入る食用菊で、かんたんに試すことができます。
 食用菊は、観賞用のものに比べて苦みやえぐみを抑え、食べやすいように品種改良が進められた品種群。主な産地は愛知県のほか、山形県、青森県などがあります。「もってのほか」「かきのもと」(ともに延命楽という品種)などの流通名で市販されています。
 古くは薬用にされていたというキクの花。ビタミン類を多く含みコレステロールの低下などの効果があるという研究発表も聞かれています。刺身や寿司などの添えもの以外にも、酢のものやお浸し、和えものなどで、食卓をにぎわせてみませんか。近ごろは、まるでポットマムのようなカラフルさと花姿を備えた、目でも十分に楽しめるサラダマムという新しい食用菊のシリーズが出回るようになりました。食卓にちょっと加えるだけでとても華やかにみせることができます。今年の秋はちょっとだけ手をかけて、食べるキクも楽しんでみてはいかがでしょうか。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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