11月-1. 秋も、子どもみたいに

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晩秋の香り

 強烈な台風が、毎週のようにやってきたこの秋。天気予報をチェックしながら、「もう来ないよね?」と祈る気持ちの10月でした。台風の襲来はなかったものの傘の出番は多く、夕方から夜の間、驟雨(しゅうう:にわか雨)に見舞われることもありました。朝、窓を開けると目に飛び込んでくる秋晴れの景色は、塗りたての絵の具のようにキラキラと輝き、みるみると雨が乾いていきます。ひょっとしたらこの日ざしを楽しめるのは、あと数時間だけかも? と、急いで布団と洗濯物を干したら、お気に入りのあの道をみちくさしながら歩きましょうか。

 夏の間はずっと、その道を歩くのが好きでした。そのあたりでは珍しく道路の起伏に富んでおり景色の変化が多様で、足から受ける感触に加え、見る目にも楽しいからです。そして耳にはさまざまなセミの声が届いていました。
 季節はめぐっても道路の起伏に変わりはないけれど、もうセミの声はどこからも聞こえてきません。遠くに望む木々の葉色の変化から紅葉の始まりが感じられるなど、夏の日の彩りとはだいぶ変わっていました。
 住宅地では、垣根のチャノキの花が咲き始めていました。チャノキ(Camellia sinensis)はご存じのように、その葉を緑茶や紅茶などの原料にする植物です。学名からわかるようにツバキの仲間で、花をよく見ると雄蕊(おしべ)がハケのように揃ってよく似ています。植物としては葉が主役のチャノキですが、晩秋こそ花が観察できる時期。チャノキの花に出会え、もしも近寄ることができるなら、香りもぜひ楽しんでみてください。お茶に通ずる少しビターでさわやかなグリーン系の香りは、万人に好まれます。園芸的に花を観賞されるのは同じ仲間のツバキ、サザンカではあるけれど、街角に小さく佇む晩秋の香りを見つけるのも、みちくさの楽しみです。
 チャノキの垣根の足下のプランターでは、まだまだ元気なカリブラコア。霜が降りるまではこの調子でしょう。その隣の素敵なコンテナには、植えられたばかりのパンジーの苗。新しいピカピカのラベルがささったさまは、シーズンスタートの目印です。スッと香り立つナチュラルな草姿の小菊。そして丹精込めた自慢の大菊の仕立ても開花待ち。顔を上げれば、背が高いサザンカの木にもつぼみがたわわにつき、冬への準備は始まっていました。微妙に色づき始めた木々を背景に夏花と冬花が混在する、温暖地ならではの景色です。

冬、そして来年へ思いがつながる

 住宅地のなかに設けられた、小さな保存林に入ってみます。初秋のころの激しい台風で落ちた枝が要所要所に集められて、庭の構造物のよう。落葉樹はまだ葉をたたえているものの、足下の落ち葉はだいぶ厚みを増していました。前夜の雨をたっぷり含んで、カサカサと乾いた落ち葉とはまた違う、腐葉土への行方を彷彿させる感触です。クヌギやコナラなどのドングリを拾ったり、薄くなりつつある落葉樹の葉陰の向こうに、昨冬発見したヤドリギの姿がそろそろ見えやしないか目を凝らしてみたり。雑木林での遊びは、子どものころと変わりません。

 さて、この10月の1日の天気の流れ通り、この日も午後はだんだんと空の雲がふえてきました。ときおり日差しが遮られ、干してきた布団と洗濯物への心配へと気持ちが移ってしまいました。帰路へと向かう道すがらも、またみちくさ。そのお宅の庭木にさりげなく絡みついていたのは、オキナワスズメウリでした。今はまだしっかりグリーンだから、常緑樹の庭木を背景にしたのではあまり目立ちません。
 しかし、きっと11月にもなればこの果実は、蜂蜜色を経て橙色から紅色に染まっていくさまを楽しむことができ、やってくるクリスマスのオーナメントにもぴったり。そんな様子に気づいてしまったら、もはや来年の初夏にはオキナワスズメウリのタネをまいたり、苗を探したりしてしまうでしょう。晩秋が始まったばかりのみちくさで、来年のガーデニングプランを立てたりしたら、さぞかし鬼は大爆笑かもしれません。でもね、次の季節を思うのが、ガーデニングの愉しみ、ですからね。

冬、そして来年へ思いがつながる
コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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