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11月-6. 街角フルーツ狩り(リンゴ・カキ)

リンゴの木の存在感

 私の住まいから一番近い繁華街へは、大通りを行けば自転車で20分ちょっと。大通りをすいすい走るのは速いけれど、みちくさ的に魅力が乏しくなります。そこで、繁華街までは静かな住宅地の合間を抜けて、のんびり行くのがいつものお決まりです。
 この季節のお気に入りコースは、緑道沿い。紅葉にはまだ少し早いけれど、沿道の花壇や個人宅に植えられた秋の花が堪能できるからです。特に気になって、自転車を停めてながめるのを楽しみにしているのは、庭はなく、緑道と家屋の壁のすき間に棚をしつらえ、いくつかの鉢植えを並べているお宅です。そのなかに、鉢植えのリンゴがあるのです。
 8号程度の鉢に、丹精されているリンゴは‘フジ’でしょうか。姫リンゴのような小果種ではないのです。木の大きさに見合うように決して欲張らず、絞りに絞ったひとつかふたつのリンゴ。日増しに赤く色づいていくさまは、ただの通りすがりのよそ者にとっても、道を行く楽しみのひとつとなりました。数多く実らなくても、その1果、2果を大切に見守り育てている栽培者の方のお気持ちを思うと、これこそ家庭園芸の醍醐味だなと感じずにいられません。すると、樹高にしたら、たった1メートルにも満たないそのリンゴの木が、とてつもなく大きく見えてくるのです。

柿の里を探して

 ずいぶん前のこと。ある秋の日、色づく果実をつけたカキノキが塀からのぞいている道端で、ご近所の方と世間話をしていたら、突然「中央線柿って知ってる?」と尋ねられました。
 東京の東西を結ぶJR中央線沿線に長く住んでいる私ですが、中央線柿という名前は初めて聞きました。その方のお話では、中央線沿線のどこかに、かつて、そうした名称の柿があったそうなのです。その後しばらく、郷土史を読んだり、古くから沿線に住まう人に会うたびに尋ねてみたりしましたが、今のところ詳細は不明のままです。
 神奈川県川崎市には、禅寺丸柿(ぜんじまるがき)というカキがあります。これは日本で初めて見つかった甘柿(不完全甘柿)です。昭和の初めごろまでは美味しいカキとして生産されていましたが、その後、より甘く果肉が多い品種がつくられて、市場から姿を消してしまいました。しかし、平成に入ってからは保存会が発足し、現存する7本が文化庁指定の登録記念物になっています。
 カキノキは東アジアを原産地とする、おなじみの果樹です。日本でも古くから栽培されてきただけあって、前出の禅寺丸柿を筆頭に、各地にその土地ならではのカキノキがあるようで、地域によっては、自慢の逸品になっていることも少なくありません。
 また、カキノキは、その落ち葉もよい堆肥になるため、よい野菜をつくる農家には、決まってカキノキ畑もあると聞きます。
 みなさんのお近くに、その地域特有のカキノキがあったら、ぜひ教えてください。伝統野菜と同じように、今後、伝統柿が発掘されるかもしれませんね。

さて、果実を摘み取るわけではなく、ひたすら目で楽しむ「フルーツ狩り」はいかがだったでしょうか。そろそろフワフワの産毛に包まれて暖かそうなビワの花が見られるようになるでしょう。住宅地のなかでも、あちこちにユズ、キンカン、夏ミカンなどがたわわに実るようすも目につくようになります。
 ウメやアンズ、サクランボ(桜桃)、ベリー類など、落葉性の果樹は、これから春までが植えつけ期です。自宅の庭やベランダでも、小さな果樹園をこしらえてみたいものです。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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