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12月-6. ネギは庶民的な名脇役(ネギ)

東西で違う「ネギ」の姿と用途

 通年店頭に並ぶネギはとても身近な野菜のひとつですが、原産地は中国西部などの中央アジアやシベリアと推定されています。5世紀までには日本へ渡来したと伝わっており、『日本書紀』(720年)に も「葱」の名前を見ることができます。
 ほかの渡来ものと同様、ネギはまず関西へ伝わり、緑色の葉の部分が長く、たくさん枝分かれ(分げつ)する葉ネギ(青ネギ)として発達しました。そのため関西では現在でも葉ネギが中心で、ネギといえば、細く緑色のものを指しています。その代表は「九条太(くじょうふと)」「九条細(くじょうほそ)」。前者は京野菜のひとつ、後者は「万能ねぎ」の商品名で流通する、福岡県の特産品など が知られています。

 ところで、冬の食卓に欠かせないネギは、葉ネギではなく、白い 部分が長い長ネギ(根深ネギ)。関西では「白ネギ」「関東ネギ」などとも呼ばれます。
 長ネギは、時代を経て関西から関東へ伝わる際土地に合うように改良され、また、新たな栽培法も見出されました。関西に比べて耕土が深い関東では、畑に溝を掘って苗を植えつけ、茎(正式には葉鞘)が伸びたら株元へ土をかける作業(土寄せ)を繰り返す栽培法が確立。これによって柔らかく白い部分をグンと伸ばすことができました。

 白い部分が長い長ネギは、鍋もの、焼きもの、汁もの、薬味と、あらゆる料理に利用できると広く好まれるようになりました。
 なお、長ネギには「千寿葱(せんじゅねぎ)」の商品名を代表とする「千住ネギ群」という大きなグループがあり、そこには大産地の名前を冠した深谷ネギ、越津ネギなども含まれます。
 長ネギ(根深ネギ)は、葉の部分を含めたネギそのものの味わいが利用され、対する葉ネギ(青ネギ)は、緑色の葉の部分を薬味として利用する傾向にあります。つまり、ネギという野菜に対する扱い方とその用途が、東西では大きく違うことがわかります。

地域の気候に応じた生育サイクルに

 長ネギには、もうひとつ「加賀ネギ群」というグループがあります。関東の太平洋側は冬は晴天が多いのですが、内陸部や日本海側には寒さが厳しく、また積雪地方も含まれています。こうした地方 で発展したネギは、冬になると地上部を枯らしていったん休眠し、寒さをやり過ごすという生育サイクルを身につけました。それらをひとまとめにしたのが「加賀ネギ群」です。ご当地、加賀野菜にも 含まれる「金沢太(かなざわふと)」ほか「岩槻(いわつき)」や、短く太い独特の姿で、煮るとトロトロと柔らかく、甘みが出る群馬県甘楽郡下仁田町の特産品、「下仁田ネギ」も、この「加賀ネギ群」のひとつです。この「下仁田ネギ」、鍋ものや煮込みのほか乳製品との相性もよく、グラタンでもおいしくいただけます。タネも市販されているので、家庭菜園で栽培することもできます。一般的な長ネギ、葉ネギともに春から秋までまけますが、「下仁田ネギ」は主に秋まきで栽培されます。

ややこしいネギの仲間

 前述の「万能ねぎ」にそっくりなものに「ワケギ」があります。「万能ねぎ」が「九条細」の選抜品種であるのに対し、「ワケギ」はネギとタマネギから生まれた雑種で、主に関西以西で栽培されて います。タネができず、球根でふえていくのが特徴です。
 ところが関東では、それとは違う葉ネギのことを「わけぎ」と呼んでいます。それは「分け葱(わけねぎ)」の転訛で、株元からたくさん枝分かれする葉ネギの形状を表したものです。
 地域ごとに呼び名が変わるのは魚が顕著ですが、野菜、とくにネギのようなポピュラーな野菜でも、こうした事例は少なくありません。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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