2月-3. カラフルにそして機能的に(プリムラ)

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春をにぎわすカラーパレット

 園芸店の店頭で見かけると、あぁ春だなと気持ちを温かくさせてくれる花といえば、プリムラです。プリムラは、学名のラテン語(Primula)の読み方をそのままカタカナにしたものですが、語源は ラテン語の primos で、「最初の」という意味があります。待ちに待った新しい季節に、一番早く目に留まる可憐な花にふさわしい名前だなと思います。
 プリムラで最も身近な種類は、プリムラ・ジュリアンです。色数が多いのも魅力で、店頭で各色がずらっと並べられている様子は、まる でカラーパレットさながら。見ているだけでもワクワクします。
 プリムラ・ジュリアン(以下、ジュリアン)は、いくつかの原種をもとにつくられ、18世紀のイギリスで人気を博した園芸品種、プリム ラ・ポリアンタに、さらに小型で耐寒性に富んだ原種、プリムラ・ジュリアエを交配して、1970年代に日本で誕生した完全な園芸品種です。花茎がそれほど伸びずコンパクトに咲くこと、冬花壇の彩りに使 えることなどが評判となって、広く普及しました。誕生から50年近くが過ぎた現在でも人気は衰えず、ますます花色や花型のバリエーションが豊富になっています。ひと株でも見ごたえのある八重咲きや バラ咲き、グリーンや茶色などのシックで珍らしいな色合い、アンティークなストライプ柄など、選ぶのがもっとも楽しい品種のひとつとなっています。

見た目以外の育種も進む

 さて、プリムラといえば、ちょっと気になることがあります。それは、触れたときに皮膚がかぶれる人がいるということ。特にプリムラ・オブコニカ(以下、オブコニカ)による皮膚炎が有名ですが、こ の原因となる物質は、プリミンという物質です。プリミンは、プリムラの全草にある器官、毛じ(もうじ。毛茸とも)から分泌され、特に若葉や萼(がく)、花柄からの分泌量が多いという報告があります。 なお、プリミンは、量の多少はあれど、プリムラ・マラコイデスや、プリムラ・シネンシスなど、ほかの園芸用プリムラにも含まれているので、過敏な人は、オブコニカに限らず反応が出ることもあるようです。

 こうしたことから、プリムラは、手袋をしてお手入れをするよう、以前から栽培手引きには必ず書かれていました。また、そうしたことが煩わしいと感じる人も少なくなく、特にオブコニカなどはジュリアンに比べ、広く普及に至りませんでした。
 ところが、2000年代に入ってから、このプリミンを分泌しない品種が育成されました。現在では「タッチミー」シリーズほか、「プリ ミン・フリー」のラベルを目印とした幾つかの品種が流通するようになり、気軽にオブコニカを楽しむことができるようになりました。

 オブコニカはそもそも、ジュリアンなどに比べると耐寒性が強くなく、置き場所には、5℃以上の温度が必要です。必然的に軒下、玄関から室内に置くことになるでしょう。
 実は前出のプリミンを分泌しない品種のなかには、調査研究の結果、より低光量でもよく育つ室内向きのものがあることがわかりました。さらに空気浄化能力、乾燥緩和効果なども期待できるものがあるそうです。
 プリムラに限りませんが、園芸植物の育種は、花色や株姿、耐病性 だけにとどまらず、こうした取り扱いやすさや機能性をも目標にしているなんて、なんだか先々が楽しみになりませんか?

《参考文献》

プリムラ・オブコニカのプリミン保有品種とフリー品種における毛じの形態学的特性」(園学雑,1999,樋口ら)
「プリムラ・オブコニカ‘プリノーブルー’の生育および光強度による光合成・蒸散速度・気孔コンダクタンスの特徴」(2007,東京農総研研報,吉岡ら)

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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