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3月-1. 伝統野菜ってなんだろう
大量消費を支えたF1品種
私たちがふだん目にし、食している野菜の多くは、F1(エフワン) 品種という交雑種です。1種類、あるいはその近縁に当たる野菜から、 丈夫なもの、おいしいもの、収量が多いといった長所をもつ品種を選 んで掛け合わせ、「いいとこ取り」ができるようにつくられた一代限りの雑種。それがF1品種と呼ばれるものです。
高度成長期を迎えた昭和40年頃、日本人の消費がふえるとともに、より丈夫でたくさん収穫できる、安くておいしい野菜への需要が高まりました。また、生育具合や品物の形が均一であれば、生産や流通現場での手間はぐっと軽減されます。こうして野菜に関わるさまざま
な場面で、生育具合も形の揃いもよいF1品種はとても重宝がられ、いつしか私たちを取りまく野菜のほとんどが、このF1品種ばかりになっていきました。
見直される在来種、固定種
F1品種が席巻する以前、野菜といえば、その土地ごとに古くから栽培されてきた在来種や、さらに長い時間をかけて形質を固定化させた固定種が中心でした。固定種の生育具合や形の揃いは、F1品種のそれには及ばない代わりに、そのタネを代々採取して受け継いできた、栽培農家の志向と思いが詰まっていました。だから「練馬大根」などといった同じ名前をもちながらも、育ち具合や形状は、栽培農家ごとに微妙な差があるのです。その差異は、現代の食や流通の場面では短所として扱われてしまったのですが、近年では逆に「個性」とみなされるようになりました。やがて個性をもった野菜はその土地ごとに息づく伝統野菜として、見直されるケースがふえてきたのです。
各地で興る伝統野菜ブーム
その先陣を切ったのが京都府が誇る京野菜で、すでに40年ほど前から土地に伝わる伝統野菜を保護し、ブランド化する活動が続けられており、「京の野菜」のラベルが貼られた青果が全国に流通し、また京都の固定種として、種苗が販売されています。
それに続くこと現在では、その立地からも独特の個性をもつ沖縄の 琉球野菜、城下町として栄えた石川県金沢市の加賀野菜、また昨年ドキュメンタリー映画で一躍話題となった山形野菜、首都東京に息づく江戸東京野菜など、各地の伝統野菜が話題に上る機会がふえつつあります。
さて、みなさんのお住まいの地域に伝わる野菜はありますか?その野菜が栽培されるようになった経緯や、ほかにはない栽培法など、興味深い逸話が埋もれてはいませんか?それらを調べて知ることで、より自分が住まう地域のことが、好きになれるかもしれません。
- コラム|ウチダ トモコ
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園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。
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