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3月-2. 庭の灯火マグノリアたち(マグノリア)

大きなマグノリア(モクレンの仲間を総称する学名として使われます)たち

 早春の息吹がやっと感じられるぐらいになった、つい先日、関東地方の低山へ続く花木園を訪れたときのこと。積み重なる落ち葉の上に、黒い穂先のような形のものが落ちていました。ちょっとトー チ(松明/たいまつ)の燃えかすのようにも見えます。

「これはなんですか?」

花木園の方に質問してみると、「あぁ、それはホオノキの花芯です。秋にタネが散ると、役目を終えた花芯が落ちるんです」。
 あぁ、なるほど。タネのゆりかごはこうして落ち葉とともに土に還っていくんだなと思いました。
 ホオノキ(Magnolia obovata)は、高さ20~30mにもなるマグノリアの仲間で、北海道から九州、そしてお隣は中国の山などに自生しています。大きくカシワに似た葉は食べ物を包むのに利用されたり、朴葉焼きや朴葉味噌に使われることで知られ、また、樹皮は厚朴(こうぼく)という生薬になるそうです。しかし、都会ではホオノキやその葉の実物をなかなか見られません。公園や植物園で見つけたとしても高木のため、花をじっくり見る機会がなかなかないのが残念です。写真で見てみると、白く大きな花の中心にはっきりと雌しべが座り、それこそトーチのよう。雌しべを取り囲む雄しべは、付け根が紅色に染まっていて、なかなか見ごたえのある姿をしています。花期は5月ごろで、同じくマグノリアの仲間のオオヤマレンゲ(M. sieboldii)にも似ています。
 それに続いて6月ごろに咲くマグノリアが、タイサンボク(M. grandiflora)です。同じく白く大きな花を咲かせる高木で、やはり花の顔を見ることがなかなかかないません。白く厚い花弁がポトっと音を立てて落ちてきて初めて、あぁタイサンボクが咲いていたんだと気づくほどでしょう。しかし、タイサンボクには矮性の‘リトル・ジェム’という品種があります。こちらは3~5mの樹高で、下の方にも花をつけるので、家庭の庭に植える場合は、こちらを選ぶとよいでしょう。

コブシの花を目印に

マグノリアのなかでも、私たちにもっと身近な花木は、モクレン(M. liliiflora)やコブシ(M. kobus)でしょう。これらなら、庭先や街角でもよく見ることができます。関東地方以西では例年、モ クレンは3月中旬から、コブシはそれに続いて咲き始めます。細身でしなやかな枝先に、ポッポッと灯った灯(あかり)のように見える、春のマグノリア。ホオノキやタイサンボク、オオヤマレンゲのよう な、初夏から夏の仲間のような艶やかさはありませんが、清楚な姿で進みゆく春を教えてくれます。
 モクレンとコブシの見分け方で、わかりやすいのは花の形でしょう。モクレンはぽってり厚めの花弁(うち外側の3枚は萼)を上向きに咲かせ、コブシは細い花弁を開いて斜め上から横向きに咲かせます。そして葉が出てきたら、見比べてみましょう。いずれも先端に凸部がありますが、モクレンの葉の方が大きく、卵型です。
 コブシには別名や地方名がいくつもあり、「田打ち桜」「田植え 桜」「タネまき桜」などの農作業に関連するものが見られます。コブシが咲くと田植えを始める地域があるからだそうで、コブシが人里に植えられ、暮らしと身近にあった証でしょう。
 さぁ、町や公園や野山へ出かけましょう。そろそろモクレンが、そしてコブシが咲き始める時期です。楽しいみちくさを楽しんだあとは、「田植え桜」に促されて、春のガーデニングに本腰を入れませんか。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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