4月-1.百万石の宝 加賀野菜(地域伝統野菜)

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守られてきた歴史と文化

 北陸地方最大の観光地といわれる金沢市。歴史的情緒あふれる街並みは、戦災や震災の被害を受けなかったことを物語ります。16世紀に仏教の拠点として開かれたのち、大名のなかでも最大石高を誇る前田家の城下町として栄え、三都に次ぐ人口を擁した大都市こそ、今の金沢市の背景なのです。
 金沢市で長らく守られてきた文化的資産は、建造物だけではありません。漆器や陶芸、加賀友禅といった加賀藩に手厚く保護されてきた伝統工芸、能楽、狂言などの伝統芸能。また、千利休に学んだ前田家が茶の湯を奨励したことにより、和菓子も発展。さらに山海の幸に恵まれる立地から、数々の郷土料理の伝統も生まれました。その今に伝わる「金沢の味」を支えてきたもののひとつが、伝統野菜の加賀野菜です。

地域の財産として保護

 ほかの伝統野菜と同様、加賀野菜も生産性や耐病性の面から、消滅の危機にさらされていました。しかし、そこは歴史と文化の町、金沢のこと。先人たちが培ってきた加賀野菜の血を絶やすまいと保護し、後世に伝えていくべきものとしてブランド化。金沢市農産物ブランド協会などの団体によって、昭和20年以前から現在もなお市内で栽培されている15品目(2013年3月現在)が、加賀野菜として認定され、今では京野菜とともに、広く知られるようになりました。加賀野菜は、金沢の台所と呼ばれる市内の近江市場にはもちろん、全国のデパートなどで、認定シールつきの青果をみつけることができます。また、一部は石川県の伝統野菜として、園芸店や通販で、種苗を入手することができます。

加賀野菜

 現在認定されている加賀野菜は、源助だいこん(打木源助/うつぎげんすけ)、加賀太きゅうり、打木赤皮栗かぼちゃ、加賀れんこん、金時草(きんじそう)などの15品目です。
 源助だいこんの通称名で知られるダイコン、打木源助は、愛知県の宮重系固定種と、打木地域の練馬系在来種の自然交雑種から、打木町の篤農家によって選抜固定されたもの。太く短くずんぐりした姿をしています。甘く、軟らかいのに煮崩れしにくいことから、おでんや煮物になくてはならない品種です。
 また、金時草は、古くから肥後(熊本県)で栽培されていた水前寺菜(すいぜんじな)が、江戸時代に盛んだった北前船によって持ち込まれ、加賀に根づいて金時草と呼ばれるようになったものです。主に金沢市の山間部で栽培が続けられており、近年はポリフェノールが豊富な健康野菜として、注目されています。
 このように、加賀野菜をはじめ伝統野菜には、古い時代の地域交流や参勤交代によって持ち込まれ、根づき、その地域ごとに選抜改良が重ねられてきたものがたくさんあります。また、身近な伝統野菜の背景には、必ず「人」が関わっていることを見逃すわけにはいきません。たとえその「人」が、歴史に名を残していなかったとしても、改めてここに彼らの功績を讃えたいと思います。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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