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5月-6.たくさんの人々が支えてきたバラの歴史

四季咲き性と赤い花色

 関東地方ではヤエザクラも散って、タネまきをはじめとするガーデニング作業に忙しい時季が到来しました。庭やベランダでついつい気になるのが、これからの季節の主役、バラやクレマチスの成長具合です。バラならモッコウバラは盛りを過ぎ、そろそろノバラの仲間や早咲きの‘カナリー・バード’ などが咲き始めます。クレマチスもフォステリー系は終盤、モンタナ系は真っ盛り。ガーデニングファンのブログやホームページの更新が、ますます忙しくなることでしょう。
 ごく小さなスペースしかないわが家では、さっそく、コウシンバラが咲き始めました。60日ごとにめぐってくるのが暦でいう「庚申の日」ですが、2か月に1回に例えられるほど、早いペースで繰り返し開花するため、この名で呼ばれるようになったのがコウシンバラです。中国・四川省などが原産の代表的なチャイナ・ローズで、現代のバラに四季咲き性をもたらしたのは、このコウシンバラがもっていた性質だそうです。また、バラの花の赤い色は、コウシンバラに由来するものともいわれています。今ではバラといえば赤!という人も少なくないというのに、ちょっと不思議ですね。

中国のバラから辿るバラの歴史

 「コウシンバラ」は和名で、学名はロサ・シネンシス(Rosa chinensis)といいます。同じく中国の野生バラであるロサ・ギガンティア(Rosagigantea)とロサ・シネンシスが交雑して生まれたのが、ロサ・オドラータ(Rosa odrata)というバラでした。オドラータには茶の葉に似た芳香があり、これを祖先に生まれた品種たちは、オドラータ由来の芳香をもちます。その香りの特徴から「ティー(茶)」というグループにまとめられました。バラの系統の説明に「ティー系」とあるのは、これらの系統名です。淡いアンズ色の‘レディ・ヒリンドン’、桜貝のような花色の‘デュシュス・ド・ブラバン’ など、オールドローズのなかでも人気のある品種がたくさん含まれています。
 また、さまざまな系統のオールドローズを交配させてできた品種群は「ハイブリッド・パーペチュアル」というグループにまとめられました。オールドローズの一系統とするのが一般的ですが、比較的新しい時代に誕生した品種で構成されています。赤い花弁に白い縁取りが入る‘バロン・ジロー・ドゥ・ラン’、オールドローズらしい花容の‘ヨランド・ダラゴン’などが含まれます。
 さて、前出の「ティー」とこの「ハイブリッド・パーペチュアル」のふたつのグループに属する品種が、さらに人為的に交配されることによって、その後、さらに新しいグループの祖となる品種が誕生します。その品種の名前は‘ラ・フランス’。1867年のことです。四季咲き性と大輪の花という、それまでの育種家の夢が‘ラ・フランス’によって現実のものとなりました。そして‘ラ・フランス’以降、同様の形質をもつ品種がいくつも作出されるようになり、やがてそのグループは「ハイブリッド・ティー」と命名されるに至ります。現代バラを代表するグループとなったそれは、生花店に並ぶ切り花の中心でもある、尖った花弁が気高く重なるおなじみの花形です。この「ハイブリッド・ティー」のポピュラー化が進むと、逆に20世紀後半からは、丸い花形で一季咲きのオールドローズを顧みる流れが趣味家の間から興りました。また、そうした嗜好の多様化に応じるように、オールドローズの花容と香りをもつ、イングリッシュローズなどのアンティークタッチの新品種がこぞって発表され、バラファンの幅をぐっと広げたのです。

バラの育て方
バラの育て方"
コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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