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5月-8.紅葉狩り、町のスタイル

モミジの見ごろはいつなのか

 タイトルの「紅葉狩り(もみじがり)」は、秋の季語にも使われるとおり、モミジをはじめとする秋の紅葉(こうよう)を観賞する行楽のこと。色づく木々を、園芸的に身近にて栽培することがまだなかった時代、人々は装う山へ足を運んで、それを観賞したそうです。
 今でも秋になれば私たちは、見ごろや名所を調べて、小旅行に出かけていきます。山や名所の紅葉はそれは素晴らしく、目に焼きつくものです。しかし、たとえば同じモミジなのに、なぜ庭や公園、街路樹にある身近な株では、同じように美しく染まらないのでしょうか。身近にあれば、秋を2倍楽しめそうなのに。
 あるとき、紅葉の名所に暮らす方とも、その話題になりました。「やっぱり町中だと、夏の暑さと夜温の下がらなさ、土中と空中の水分不足、湿度不足でしょうかね。町中は木の種類はけっこう多いのに、残念ですよね」。美しく紅葉するためには、やはり様々な自然の条件が欠かせないからです。
 しかし同時に、「でも町中でも、春の芽吹きから初夏のモミジの美しさは、むしろ間近で楽しめるじゃないですか」と教えていただきました。
 なるほど、春から初夏のモミジの美しさは庭や街路樹で、秋の紅葉は各地の名所へ足を運んでと、紅葉だけ観賞するに止まらない、モミジの楽しみ方に改めて気づくことになりました。

手のひら葉っぱを探して

 そういうわけで、サクラの開花が気になりはじめると同時に、散歩の際には街角のモミジチェックが楽しみに加わりました。住宅地を歩けば、見られる樹種は意外なほど豊富なことにも気づかされます。また、モミジの特徴的な葉形は、樹木に詳しくなくても目に留まりやすく、庭木として古くから愛されてきた理由がわかる気がしてくるのです。町中や家庭に植栽されているものは、圧倒的にイロハモミジが多いのですが、それでも芽吹き、葉の大きさ、花のつき方など、個体差があってなかなか楽しめます。
 ある夏の日の散歩途中、一軒のお宅の玄関先に木陰をつくるモミジに気づきました。近寄ってみると、青い葉の葉脈が浮き立つような斑が入り、繊細な美しさに心奪われます。しげしげと葉っぱを眺めていたら、お住まいの方が出ていらして、このモミジは元はいただきものの盆栽だったこと、もっと伸び伸びさせてやりたいと、ご主人が庭に下ろしたことなどを語ってくださいました。あまりに個性的な葉だったので品種名をお尋ねしたところ、「天国の主人に聞かないとわからないわ」と、眩しそうに笑顔で木を見上げていた奥さまのようすが今でも忘れられません。
 帰宅後、記憶に残る葉の形容から品種名を調べたところ「鴫立沢(しぎたつさわ)」という名品種だったことがわかりました。以来、町中のどこかに、誰かの手で植えられたであろう鴫立沢を、私の目は探してしまっています。たった一度の交流で、鴫立沢は私にとって特別なモミジになりました。

 春になると、私はあちこちみちくさしながら、モミジ狩りを楽しんでいます。とはいえ、これからの季節の主役は、まずはバラ。そしてクレマチスやさまざまな宿根草たち。でも、バラたちの饗宴の合間に、ちょっと気持ちをクールダウンさせたいとき、春から初夏ならではの町中のモミジ狩り、いかがですか?

*文中の「モミジ」はムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属の仲間で、特に紅葉が美しいものは、慣習的にモミジという総称で呼ばれています。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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