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6月-1.アジサイ小径

むかしのアジサイ

 今回のみちくさは、季節の花、アジサイをめぐります。

 アジサイはご存じの通り、日本にも自生があるおなじみの落葉低木です。広義のアジサイとしては、日本以外にも中国、台湾、北アメリカにも原産地がありますが、現在、国内で主に流通している西洋アジサイの各品種は、日本原産のアジサイ科アジサイ属のアジサイ(Hydrangea macrophylla)を元に、品種改良が進められたものです。

 原産地の日本ですから、ふつうにあちこちに自生があります。私たちにとってとてもなじみのある植物で、古くは「万葉集」にも詠まれていました。
 その半面、ありきたりに思われたのでしょうか。園芸的に栽培されたり、改良が進んだりすることは、一部の趣味家界隈を除いて、あまりなかったようです。

 日本に自生するアジサイが、江戸時代にドイツ人医師で博物学者のシーボルトによってヨーロッパへ持ち込まれたのは有名な話。そしてヨーロッパで改良された品種は明治の開国以降、度々日本へ導入されていたようですが、西洋アジサイが国内に本格的に広まっていったのは、なんと1980年代に入ってからなのです。
 それまで私たちの身近にあったアジサイは、原種のガクアジサイ(Hydrangea macrophylla f. normalis)と、その変種であるテマリ咲きの本アジサイ(H. macrophylla f. macrophylla)がほとんどでした。これらは今も公園や街路樹などにも植えられ、また、量的に植栽された場所はアジサイの名所として各地で知られています。

 また、アジサイはさし木でふやすことが容易で、登録品種にないこれら古くから植えられてきたアジサイは、さし木の練習に恰好の素材にもなりました。冬の休眠枝ざし、初夏の緑枝ざし、また、さし木した容器をポリ袋で覆って湿度を保ちながら発根を待つ密閉ざしなど、さまざまな方法を試すことができます。アジサイは発根率が高く成功しやすいため、園芸の楽しみを広げてくれる植物だといえます。

今のアジサイ、未来のアジサイ

 90年代に入り、ガーデニングブームの追い風を味方に、国内でもアジサイの品種改良が進んでいきました。最初に手がけられたのは、もちろん西洋アジサイ。80年代後半に、群馬県の坂本正次氏が「清姫」「ミセスクミコ」「ブルーダイヤモンド」を農林水産省に品種登録し、話題を呼んだのです。これらの品種は今でも、銘花として知られています。
 その後、次々と新品種が登場。これまで庭の花木だったアジサイは、鉢物としての地位を確立していきます。近年では、ガクアジサイのなかから「隅田の花火」が見出されて人気品種となりました。続いて毎年、たくさんの品種が発表、登録されています。

 また、西洋アジサイのグループに限らず、最近ではアナベル(Hydrangea arborescens)とその園芸品種も人気です。密につく小ぶりな萼(ガク)が繊細な印象で、ナチュラルなガーデンにぴったり。基本はクリーム色ですが、ピンク色の品種も流通するようになりました。いずれも庭植えに向いています。
 さらに、国内の沢沿いなどに多く見られるヤマアジサイ(Hydrangea serrata)も、ここのところ愛好家がふえて注目されています。小型の品種は鉢植え栽培にも向き、よりコレクション要素が高いのも、コアな愛好家がふえる要因となっています。

 さて、アジサイの名所について前項でも触れましたが、最近ではアジサイだけを大量に植えて見せるというより、草花とうまく調和させて競演を楽しめる、上級スタイルの植栽もふえてきました。そういった場所では新しい品種も積極的に導入されていて、庭の植物から鉢物を経て、再び、そして新たにガーデン植物へと変貌を遂げていくアジサイの立ち位置を、客観的に確認できるのも、この季節の楽しみの一つなのです。

今のアジサイ、未来のアジサイ
コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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