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6月-10.見慣れた植物、物珍しい植物

おなじみの植物も、ところ変われば「珍奇もの」

 アジサイはご存じのように、日本原産の植物です。基本種はガクアジサイで、房総半島、三浦半島、伊豆半島などに自生しています。ほか、ガクアジサイの変種とされるホンアジサイも含め、古くからアジサイの名所が各地につくられるほどに愛され、植えられてきました。
 現在ではこれらのほか、江戸時代にオランダへ持ち込まれた日本の自生種からヨーロッパで改良されたグループ、西洋アジサイも加わり、いっそう華やかな景色をつくってくれています。
 また、カシワのような葉と長い花穂が特徴的なカシワバアジサイ、ライムグリーンの花序が美しい‘アナベル’(アメリカノリノキの園芸品種)は、アジサイ属でも北アメリカ原産です。このようにアジサイ属の植物は、日本を含むアジアと北アメリカに分布しています。
 私たちにとって、6月といえばアジサイと思うほど身近な植物で、むしろ当たり前の景色だといえます。ところが江戸時代のドイツ人医師で博物学者のシーボルト、そしてその前任者であり、先にヨーロッパへアジサイをもたらしたとされるツンベルクともに、日本のアジサイを見てその美しさに見惚れ、珍しさに驚いたわけは、かつてのヨーロッパにアジサイは、存在しなかった植物だからです。
 しかし、自国になく見慣れない植物だからこそ、それに観賞価値を見出し、やがては華やかな西洋アジサイを生み出すに至るその気概。人間の持つ「初めて見た!」「珍しい!」「面白い!」という気持ちは、様々なものを生み出す原動力になるのだなと、改めて思いを馳せました。

人はいつも、「珍奇もの」に突き動かされてきた

 私たち日本人にとって見慣れたアジサイも、ところ変われば珍奇な植物だったように、私たちは熱帯地域の植物に驚嘆し、それはそれは大切に育ててきました。17世紀ごろより最初は有用植物を、のちには観賞価値の高い植物をも世界中から収集したヨーロッパなどのプラントハンターは、その主君であるイギリスやオランダへ、様々な植物をもたらしました。
 洋ランもそのひとつ。プラントハンターによって紹介された洋ランは、ヨーロッパの地で大切に育てられ、栽培の必要性から温室が誕生しています。さらに温室の設計から施工の技術をも、格段に進化させました。気候が全く違う場所原産の植物を育てたいという人間の欲望が、絶えず、不可能を可能に変えてきた歴史があります。
 さて、先日東京のサンシャインシティで開催された「第57回蘭友会らん展」に「みちくさ」してきました。これは、冬の「世界らん展」に次ぐ、人気の催しもの。ここでも洋ランに限らず、いくつもの「初めて見た!」「珍しい!」「面白い!」植物との出会いがありました。
 アジサイの季節が過ぎれば、まだまだ日本に住まう私たちにとっては、多様かつ、珍奇でやまない熱帯植物のシーズンがやってきます。この夏、あなたの好奇心をそそり、不可能を可能に変えてしまう、そんな刺激的な植物との出会いがありますように。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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