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7月-8.スイカが食べたい!

スイカのタネが欲しい

 ずいぶん前のことですが、中東へ海外赴任した知人が日本へ一時帰国中、園芸店へ行きたいと連絡してきました。「何を買うの? 今から日本で育てても、赴任先へは持ち込めないんじゃない?」と尋ねると、彼女はスイカのタネが欲しいというのです。
 夏の代表的なくだもの、スイカ。大きくて丸いあの形状は、姿だけでもインパクト大。スイカがなくちゃ、夏のおやつは始まらないという方も少なくありません。
 これほどまでに日本でポピュラーなスイカですが、原産地は、赤道に近いアフリカの砂漠やサバンナ地帯といった、極端に乾燥した地域です。日本へは中央アジアを経由して室町時代にはすでに導入されていたそうで、いにしえの人々も夏の暑さをスイカのほとばしる果汁で癒していたのかもしれません。
 さて、スイカのタネを買いに行きたい知人。赴任先の中東は、まさにスイカの世界的産地です。道すがら、わざわざ日本で買わなくても、それこそ多彩なスイカがあるのでは? 逆に赴任地のスイカのタネをお土産に欲しいというと、「だって、おいしくないんだもの。日本のスイカが食べたい」と返ってきました。
 一部例外はありますが、植物の原産地とその周辺には、多様な遺伝子が存在しているというのが定説です。だからこそ、熱帯アフリカに近い中東はスイカの世界的産地であり、その多様性にも、目を見張るものがあります。
 ですが、そもそもスイカは乾燥地で育つにもかかわらず、自身の中に大量の水分を溜め込む能力を持つ植物。古くは原産地では、旅の水筒代わりに利用されていたそうです。そのためか原産地、およびその周辺の地域でスイカは、あくまでも水分補給のための作物であり、糖度や美味しさを求める育種は二の次だったように思われます。
 また、遠い赴任地で長らく日本で食べ慣れてきたスイカとは違う風味に出合って、知人は故郷を思い、どうしても日本のスイカが食べたくなったのかもしれません。
 その後、スイカのタネを思う存分に購入した知人は赴任地へ戻ると、自宅の小さな菜園で日本のスイカの栽培を、そして味を堪能したとのことでした。一般的に、日本国内で販売されているタネは日本の気候下で栽培しやすいように育種されていますが、彼女はそれなりに満足したそうなので、栽培上手なのだなぁと感心した次第です。

今こそ着果させよう

 ところでスイカの季語は「秋」。これはスイカの旬が立秋ごろという理由にちなみます。8月上旬から中旬であれば、流通上も大玉スイカの最盛期です。
 スイカは、受粉してから収穫できるまでおおよそ30~40日かかるので、今咲いている雌花が受粉できれば、ちょうど最盛期に収穫できます。咲きたての雄花の花粉をとったら、同じく咲きたての雌花の柱頭にていねいにこすりつけて、人工授粉させましょう。このとき、朝10時ぐらいまでに作業を終わらせるのがコツです。また、雌花の子房部分にはあまり触れないように注意しましょう。傷がつくと果実が大きくならないことがあります。
 梅雨明けを心待ちにし、大事に大事にめんどうをみつつ、収穫を待つスイカ。蒸し暑さのなかでじっくり栽培するのは、なかなか根気がいるのですが、あの日、「どうしても日本のスイカが食べたい」といった知人を思い出すと、つい作業に没頭してしまうのです。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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