8月-1.夏の楽しみ、マクワウリ

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夏の果物

 「水菓子」ということばをご存知ですか。最近ではあまり使われないかもしれませんが、間食、おやつを意味する「菓子」のなかで、果物のことを分けて「水菓子」と言います。
 古くから夏に楽しまれてきた水菓子といえば、スイカ、ナシ、モモ、メロンなどが挙げられますが、このなかのメロンを今回は取り上げてみます。
 メロンというと、表皮にネット模様が入ったマスクメロンがまず思い浮かびますが、イギリス生まれのこの高級果物が昔から日本で?と疑問に感じる方も多いことでしょう。日本で古くから食べられていたメロンは、実はその仲間のウリ。マクワウリの名前で知られる系統で、軽やかな甘さとみずみずしさが身上です。明治時代からは、「メロン」の呼び名で流通するようになりました。マクワウリは一年草の草本なので、イチゴや同じウリ科のスイカと同様に分類上は野菜に含まれますが、甘いものが乏しかった昔には、甘味を得られる恰好の水菓子だったのでしょう。

各地にあったマクワウリ

 マクワウリの系統の原産地はインドなどの中央アジアやアフリカとされ、すでに縄文時代には日本へ渡来し、各地で栽培されていたそうです。このグループの代名詞にもされているマクワウリ(真桑瓜)は、岐阜県本巣郡(現在は本巣市)にあった真桑村でつくられていた在来種で、果皮の色から「金マクワ」と呼ばれることもあります。織田信長が朝廷に献上したエピソードや、松尾芭蕉が初物の真桑瓜を詠んだ句が知られ、一躍有名になったとされています。
 古に渡来した作物だけに、全国にさまざまな在来種があり、果皮の色もマクワウリと同じ黄色のほか、「甘露」などの名で知られる緑色、石川県でつくられる「梨瓜」などの白色などがあり、果皮に白や黄色の筋が入るものもあります。いずれもお盆の供物には欠かせず、今ではお盆の時期にしか市場に並ばないという地域もあるようです。
 しかし、そのほかの在来野菜と同じく、岐阜県のマクワウリもまた、純粋な系統は消滅の危機にさらされていましたが、近年では農業試験場がその復活と保持に尽力されているそうです。
 また、かつて東京の葛飾区には、「金マクワ」に対して「銀マクワ」と呼ばれた「本田瓜(ほんでんうり)」が、新宿区の成子地域には三代将軍家光が好んだと伝わる「鳴子瓜(なるこうり)」がありました。現在では、それぞれの地域のマクワウリ復活に挑戦している生産者や小学校などがあります。

マクワウリがメロンの消費を後押しした

 さて、マクワウリはメロンの仲間であると書きましたが、「ニューメロン」と呼ばれるマクワウリの一種と、高級なマスクメロンの一種を両親に、1961(昭和36)年に誕生したのが、庶民の食卓にものぼることが多いプリンスメロンです。マスクメロンの特徴である果皮のネット模様はないものの、しっかりと甘いうえに食味がよく、さらにメロンの二大病害(うどんこ病、つる割れ病)に強いという特徴がありました。多彩な変種を生み、さらにメロン類のなかでは栽培しやすいマクワウリの血は、代表的な果物に引き継がれ、庶民の食卓に華やかさと豊かさを添えることになりました。
 おやつや夕食後のデザートでメロンをいただくとき、半世紀前まではマクワウリが、その役割を担っていたことを、ちょっと思い出してみてください。また、伝統野菜として息づく各地のマクワウリに出会えたら、ぜひ一度、味わってみることをおすすめします。水菓子は、今も昔も変わらず、暑い夏を元気に過ごすための大切な楽しみのひとつなのですから。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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