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8月-5.禊(みそぎ)の花

風習に基づいた花の名前

「お~、ボンバナだ、ボンバナ」。
 以前、人家近くの里山を散策していたとき、案内人のおじさんが 突然声を上げました。
 ボンバナ? 日本語じゃないよね、何語だろう? アフリカ語?そもそも何のことだろう? おじさんが指差すほうに目をやると、用水路に沿って華奢なマゼンタ色の穂が揺れていました。
 ボンバナ、それは盆花でした。そう、ミソハギのことです。水路端に咲いていたのは、ミソハギが湿地で生育する水生植物だから。日本各地の湿地や流れの縁などで、見ることができます。新暦お盆の7月ごろに始まって、旧暦の8月のお盆にもまだ咲き続ける、日本原産の夏の花。盆花とは、よくもまあ、そのままの呼び名がついたものだなぁと思いました。

 ところでこの花、なぜミソハギというのでしょうか。ちなみにミソハギは、この植物の標準和名です。
 お盆のときにつくる飾り棚(精霊棚)の供物を、ミソハギの花にかけた水で清める風習は全国にあります。つまり「禊花(みそぎはな)」、それが転じてミソハギと呼ばれるようになったのだそう。日本が誇る植物学者、牧野富太郎博士は、この花の和名を「禊萩(ミソギハギ)」としています。季節の祭事に寄り添う、役割を持った植物なのだから、「禊萩」の和名こそぴったりだなと思いますが、いかがでしょうか。

 また、ミソハギの名前の由来には、前出のように用水路や溝の端に咲いていることから「溝萩(みぞはぎ)」となったという説もあります。これはこれで、植物の植生を表している、わかりやすい由来だと思います。

盆花にもわが家らしさを加えて

 正月の松竹梅、桃の節句のハナモモ、七夕のササ、月見のススキなど、祭事に用いられ、祭壇に飾られる花に基本形はありますが、地方それぞれの特色もあります。それは南北に長く、変化に富んだ地形によって多種多様な植物に恵まれた、日本らしさの表れともいえます。
 たとえばお盆の飾り花に用いられる植物は、今回のミソハギのほか、同じく季節の花のホオズキ、キキョウ、ガマの穂、アワの穂などもあります。飾り方も、棚の上部に吊るしたり、花瓶に活けたりとさまざまで、地域ごとの特色がよく表れているのです。

 先祖代々の地に住まう方ほど、その土地に伝わってきた飾り方で、盛大に執り行われることでしょう。昔から伝わってきた飾り花はもちろんのこと、そこに、庭やベランダで育てている花や、故人が愛して止まなかった花も加えてみてもよいかもしれません。時代は進んでも次世代へと伝えたい祭事に、わが家スタイルをチラッと組み込むのは、素敵なことだと思います。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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