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8月-7.夏休みの1日

ムクゲとフヨウ

 街角をあっちへこっちへと行き過ぎる子どもたちの足元にふと目をやると、塀脇に白く小さな葉巻状のものがたくさん落ちていました。それをそそくさとほうきで集める、そのお宅のかた。次に塀の上方へ目線を移せば、ありました、ありました、ムクゲの白い花。今や満開です。道路に落ちていた白い葉巻状のものは、ムクゲの咲きがらだったのです。
 梅雨ごろから咲き出し、暑さを味方にのびながら次々と開花して、花の少ない夏庭を清楚かつ華やかに彩って、秋のガーデニングシーズンのころに、潔く秋の花へバトンタッチするムクゲ。なんて健気なんだろうと感じます。
 健気で強健な印象とは裏腹に、ムクゲの花は朝開いて夕方には閉じてしまうはかなげな一面を持ち合わせます。咲いている日中にうまく受粉できなければ、閉じた花は落ちてしまいます。

 ムクゲによく似ているのが、フヨウです。ムクゲとフヨウの見分け方は、まず花と葉の大きさのバランス。葉が花に比べて小さく、大きく3つに分かれつつ、全体的に尖った形なのがムクゲ。フヨウの葉は大きく、手のひらのような形をしています。また、ムクゲの雌しべはまとまっているので、先端が5つに裂けているフヨウと区別することができます。また、ムクゲのほうが立ち性でまとまりやすく、フヨウは横に広がりがちな樹形をしています。

 フヨウのなかで、もっとも楽しいのは、やっぱりスイフヨウ(酔芙蓉)でしょうか。朝、白い花をふわっと咲かせるようすは、むしろ清楚すぎるほど。これが時間が経つにつれて、昼ごろにはほんのりピンク色に染まっていきます。やがて夕方ごろには、ほぼ紅色に変わり、朝の白花とは全く違う花容を見せてくれます。
 この素面顔から真っ赤に移り変わるさまを、酒に酔ったことにたとえた昔の人は、なんてウィットに富んでいるんだろうと感心してなりません。
 そういえばスイフヨウの花が、半分白い色を残して赤く染まっていることがあります。周囲の樹木などの陰になって、日が当たらなかった部分は赤くならないからだそうです。つまりこの赤は、太陽の紫外線の力によるもの。曇りや雨の日に開いたスイフヨウの花を見つけたら、ぜひ観察してみてください。

菜園でも出合えるアオイ科の花

 さあ、住宅地から菜園へ移動してみましょう。
 朝の菜園ならば、見ておかなくてはならない仲間がいます。それはオクラの花!「植物栽培ナビ」のオクラのページでも「野菜の中で最も美しい」と述べているこの花は、前出のムクゲやフヨウと同じアオイ科で、よく似た形の花を咲かせます。花色は、すっきりとしたレモンイエローで、涼しげ。これを見たいがためにオクラを栽培する人も少なくないといいます。
 野菜ではない作物ではワタの花が同じアオイ科で、オクラに似た薄いクリーム色の花を咲かせます。こちらもスイフヨウと同様に、夕方しぼむころにはピンク色に変化しますので、1日、それを観察するのも楽しいものです。

 これら夏に楽しいムクゲやフヨウと同じアオイ科の花たちは、どれも1日花です。1日しか咲かないのは残念な気もしますが、朝に開花したひと花が時間とともに変化していくさまを、日がな一日楽しむ日があっても夏休みらしくてよいかもしれません。
 そうそう、アオイ科で夏らしい花といえば、ハイビスカスがポピュラーですが、ハイビスカスは短日性なので、真夏は少し花数が減っているはずです。株自体が元気であれば、涼しい風が吹くころ、またあでやかな花を咲かせることでしょう。しっかり追肥を施し、くれぐれも街灯や門灯の明かりの当たらない場所に置いて、秋のお楽しみを心待ちにしたいものです。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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