9月-3.穂になる植物

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河川敷の穂の大群

 東京都心部から在来線の電車に乗って西へ向かうとき必ず渡る大きな川、多摩川。混みあった景色が突然開け、大きな空が車窓いっぱいに広がるのは、とても気分のよいものです。
 秋の声が聞こえると、車窓を眺めるのが一層楽しみになります。なぜなら河川敷に、白く輝く穂の群落が見えるから。白く輝く穂になる植物といえば、ススキでしょうか? はて。
 たとえば関東地方でいえば、ススキの名所として挙げられるのは、神奈川県箱根町の仙石原などですが、ここは山の斜面の一部で、河川敷のような湿地ではありません。ススキは野山や道端の斜面など、日当たりのよい乾燥した場所を中心に生える植物です。
 それでは河川敷などの湿地に生えている穂はなんでしょうか。それは、オギです。ススキと同じミスカンサス(ススキ)属の植物で、見かけもとても似ていますが、ススキが主に、比較的乾燥ぎみな場所にも生えるのに対し、オギは湿地の植物。河川敷でよく見られるのは、オギのことが多いのです。ススキよりも穂が密で、遠目でも白っぽく見えるので区別できます。
 東京の杉並区に「荻窪」という地名があります。開発が進んだ駅周辺から15分ほど歩けば閑静な住宅地になる、どこにでもある「町」です。町の名の起こりは、駅近くにある「荻寺」と呼ばれる古刹に因るとのこと。寺の縁起によれば、このあたりは奈良時代以前にはオギが生い茂る窪地だったそうです。今の町の景色には、暗渠などの河川跡がわずかに見つかるものの、オギ野原の名残はありません。

名月に飾る花

 ところでススキは、なぜ十五夜、中秋の名月に飾られるようになったのでしょうか。その季節に開花期を迎えたり、美しく見える植物を飾るのは、お盆の「ミソハギ」も同じです。ススキの場合は、豊穣の時季を迎え、そのシンボルともいえる稲穂に似ていることから、飾られるようになったとか。しかし、なぜ稲穂を用いなかったのか、ちょっと不思議に思います。昔は中秋の日よりも後に、実際のコメが実る季節がやってきたのかもしれません。イネの品種に早生の系統は、まだ存在していなかったのでしょう。
 いずれにしても、穂になる植物は、穂をもたげているので、たわわに実るイメージがあります。ススキやオギ以外にもイネ科の植物には、こうした草姿のものが少なくありません。
 また、前出のススキには、矢羽のような斑が入っているタカノハススキ、縦斑のシマススキ、葉が細い糸ススキなど、園芸的に観賞されるものもあります。ススキ属以外では、銅葉とピンク色の穂が美しいペニセツム、巨大な穂をつくるパンパスグラス、小判のような小穂が愛らしいコバンソウなど、さまざまな穂が楽しめます。挙げて書いているうちに私は、さまざまな穂の植物だけを合わせて、お月見の飾り花としてアレンジしてみたくなりました。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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