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9月-6.衣替えの時季に

いろいろな麻

 8月も後半に差しかかったころ、繁華街のデパートへ行くと、ファッションフロアの半分には、すでに秋物がディスプレイされていました。そういえば朝晩は涼しい微風が吹くことがふえました。秋冬物への衣替えの季節がやってきたことに、目と体感で気づいたのです。

 夏に活躍する服といえば、最近でこそ吸湿性と速乾性に富んだ化繊のものが台頭していますが、古くから用いられていた代表は、麻の生地でした。
 この「麻」には、さまざまな種類があることをご存じでしょうか。それも、植物の分類を超えた種類だから、ちょっとややこしいのです。

 まず、私たちが夏の装いとしている「麻」。衣服や寝具などの布製品のタグには、麻、もしくはリネンと表示があるでしょう。このリネンとは、麻は麻でも「亜麻」(アマ、Linum usitatissimum)のこと。アマ科アマ属の植物です。最近ではアマのタネを搾った亜麻仁(アマニ)油が注目されたことがありました。また、ガーデニングの分野なら、英名のフラックス(flax)のほうが、よく知られているかもしれません。
 もうひとつ、「苧麻」(チョマ、Boehmeria nivea)というイラクサ科カラムシ属の植物もあり、日本にも自生があることから、古くから繊維として利用されてきました。こちらの大型種はラミーの英名でも知られています。
 以上の2種類が、現在日本で正式に「麻」の名前で流通している繊維になります。ほか、マニラ麻は、バナナと同じバショウ科バショウ属、サイザル麻は、多肉植物のアガベと同じキジカクシ科リュウゼツラン属、麻袋や敷物にみられるジュートは、アオイ科ツナソ(綱麻)属。近年、木材パルプの代替素材としてペーパーナプキンなどに利用されている洋麻(ケナフ)は、アオイ科フヨウ属といったように、「麻」の名前を背負った植物はじつにさまざまなのです。

 このことから私たちの暮らしは、綿以外にも植物を原料とした繊維に頼っているんだなと、改めて思い知らされます。また、日本でいう「麻」は、綿を除く、これら繊維の原料になる植物の総称として使われているとも考えられます。

正真正銘の麻とは?

 では、麻の呼び名そのままの「麻科麻属」の植物はないのかというと、あるのです。アサ科アサ属の植物、それが1属1種のアサ(Cannabis sativa)。

 アサは日本でも紀元前から栽培され、その繊維は生地のほか網や縄といった生活用品の原料でもあった、いたってポピュラーな素材でした。日本の伝統文様にも、幾何学的にデザインされた「麻の葉文様」があります。また、神道ではアサで織った布の装束が欠かせなく、宮中祭祀にも用いられます。

 しかし、ご存じのとおり、アサには麻薬成分が含まれるため、現在では大麻取締法によって一般的な栽培が禁止されています。この本来のアサは、アマ、チョマに比べて大型なことから「大麻(おおあさ、たいま)」と区別して呼ばれるようになったそうです。
 このアサから採取される繊維自体は「ヘンプ」という呼び名で流通しており、カジュアルなファッションアイテムや、アクセサリーなどで見かけることができます。

 なお、アサ以外のアサ科の植物には、どんなものが含まれているのだろうと調べると、オオムラサキなど様々なチョウ(蝶)の幼虫の餌となる樹木、エノキ(エノキ属)や、ビールの材料で知られるホップ(カラハナソウ属)など、結構身近な植物が含まれています。

 さて、休日が晴天に恵まれたら、夏の間お世話になったリネンのブラウスやワンピース、そしてシーツもいっせいに洗濯してクローゼットへ。そして、来る秋冬に備えましょうか。
 じつは、ちょうどこの時季は、リネンこと、フラックスのタネまきにあたります。繊維に使われるフラックスは一年草のタイプですが、多年草のタイプ(L.perenne)もあります。いずれもやや暑さとムレに弱いので、秋まき向き。乾かし気味に管理するのがおすすめです。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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