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風景と空気感~画面構成はシンプルに

夏本番になると、海に山にと、自然の中で花を撮影する機会も増えてきますが、風景=自然というわけではありません。庭先や街中でふと心動かされる花のある光景も、まさに「小さな風景」です。

花はそれだけ撮っても美しいのですが、他の隠し味同様、いろいろな風景の中で空気感もいっしょに写すことができれば、いっそう輝いて見えることもあります。でも、広い範囲を写すからといって、様々な要素を整理しないまま撮ってしまうと、何を写したのかわかりにくい煩雑な写真になってしまいます。風景写真の基本はシンプルなこと。心動かされたものを見極めて、それ以外の要素はなるべく少なくした方が、植物も際立ち、その場の空気感も的確に伝わります。

高原のニッコウキスゲ その1

夏の高原を代表する花、ニッコウキスゲの2つの写真で印象の違いを見てみます。一面に広がる花だけを撮るのもいいですが、ここではわき立つ夏雲を背景に入れました。花と雲が互いに引き立て合って、じりじりと静かな夏景色を作っています。たくさんの花の中からひとつ、メインになる花を選んで画面に配置すると全体がまとまります。

高原のニッコウキスゲ その2

高原の夏は短く、8月に入ると秋の気配が感じられるようになります。ここでは、名残りのニッコウキスゲを画面に入れましたが、背景は空高い初秋の雲です。

同じ花でも、こちらは高原を吹き抜けてゆく風の中で揺れる動的な印象です。写したいものは、爽やかな高原の空気感そのものなので、花も画面の中心ではなく風の方向に合わせて配します。

撮影のヒント

花と風景が互いに引き立て合う空気感のある写真を撮るには、写す要素を少なくしつつも、違う要素をあえて入れてみたり、動きを表現したりと、いろいろな手法がありますが、そのいくつかを夏の植物の撮影例で紹介します。

アクセントになる要素を入れる

ヒマワリや高山植物など、夏は花畑を撮る機会も多いですが、単一要素の被写体は、その中に何か違う要素をひとつアクセントとして入れることで花も際立ち、1枚の写真としても引き締まります。ここでは、ラベンダーの中にいたクジャクタテハを画面に入れましたが、海や空、そして林などを撮る際には、ニッコウキスゲのように花そのものが画面のアクセントになることもあります。

自然の動きを取り入れる

風や雲、そして渓流など、自然の中にはいろいろな動きがあります。それらを表現することで、花をそのまま静的に撮った場合とは違う空気感のある写真になります。写真は、風に揺れる田んぼのミソハギです。目に見えない風の動きを写真にするには、遅いシャッタースピードで被写体が揺れる様子を写し込むようにします。

周囲の様子を暗示させる

自然や庭の中では、周囲の様子をいっしょに写すことで、いっそう植物が引き立つこともありますが、必ずしも全ての状況をそのまま画面に入れる必要はありません。写真は、霧のブナ林に咲く名残りのレンゲショウマです。花だけにピントを合わせていますが、背景にブナの大木をボカしてその存在を暗示させることで、林の雰囲気を伝えることができます。

小さな風景を切り取る

植物たちが見せる美しい光景は、自然の中だけでなく日常生活にも溢れています。花が散った水面に映る夏雲や、ガラス越しに見るベランダの鉢植えなど、

身のまわりのなにげない感動の一瞬を一つ一つ写すことが写真本来の楽しみといえます。みなさんの毎日の生活風景こそ、植物をきれいに撮る最高の隠し味なのかもしれません。

花ギャラリー コスモスのプラスα撮影アドバイス

8月も中旬になると、とくに朝晩は秋の気配が感じられるようになり、コスモスの花も咲き始めます。コスモスは1本でも可憐ですが、群れて咲くことが多いので風景の中で絵になりやすい花です。また、花期が長いため晩秋まで様々なシチュエーションが背景になり、趣の違う写真をたくさん撮ることができます。

プロフィール 入江寿紀

写真家。自然の中の風景写真を様々な媒体に提供するほか、園芸雑誌でも撮影を担当している。

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住友化学園芸では、家庭園芸用殺虫剤・殺菌剤・除草剤・肥料のほか、くらしに関連するさまざまな商品を扱っています。

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