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知っておきたい園芸情報 - 園芸コラム除草剤に危険性はあるの?安全に使う6つのポイントや製品の選び方

除草剤は、自宅の庭や芝生の手入れをする際に欠かせないものですが、「本当に安全なの?」と不安を抱く方もいるのではないでしょうか。

除草剤を安全に使用するためには、定められた方法を守ることが大切です。

この記事では、除草剤の仕組みや危険性を解説するとともに、製品の選び方や安全な使用法のポイントなどを紹介します。安心して除草剤を活用するために、ぜひ参考にしてください。

目次

除草剤とは?

除草剤は、農作物に影響をおよぼす雑草を取り除くために開発された農薬の一種です。殺虫剤や殺菌剤と同様に、農業や園芸、公共施設の緑地管理などで広く利用されています。

除草剤を使用するおもな目的は、作物の生育を妨げて収穫量や品質を低下させたり、人の生活環境を乱したりする雑草を効果的に防除することです。除草剤の使用により、作物の生育環境を整えることや景観を維持することが可能になります。

除草剤はおもに植物に対して効果を発揮し、動物や病原菌に対してはほぼ作用しません。不要な植物の成長を抑制または枯死させる働きがあるため、庭や農地の管理に欠かせないツールとなっています。

除草剤を適切に使用すると、労力と時間を節約しながら効果的に雑草を管理できるようになるため、農業の生産性向上や快適な生活環境の維持に役立ちます。

除草剤が雑草に作用する仕組み

除草剤は雑草を効果的に除去するために開発された農薬であり、光合成を妨げるなどさまざまな方法で植物の成長を妨げます。

除草剤が雑草に作用する仕組みには、おもに以下の3つのタイプがあります。

光合成を妨げるタイプ

光合成を妨げるタイプの除草剤は、植物の生命活動に不可欠なエネルギーを作り出すプロセスを阻害する仕組みにより、雑草の成長を妨げるものです。

通常、植物は太陽光、水、二酸化炭素を利用して光合成を行い、成長に必要なデンプンと酸素を生成しています。

そこで、このタイプの除草剤を使用すると光合成の過程が妨げられます。これによって、雑草に必要な栄養素を作り出せなくさせ、最終的に枯死させることができます。

植物の生存に直結する仕組みを狙い撃ちにする、効果的な除草方法といえるでしょう。

アミノ酸の合成を阻むタイプ

アミノ酸の合成を阻害するタイプの除草剤は、植物のタンパク質生成過程を狙ったものです。

植物は光合成でアミノ酸を合成して、タンパク質を作ります。そのメカニズムに着目し、除草剤によってアミノ酸合成に必要な酵素の働きを止めることで、タンパク質の生成を阻止します。

タンパク質は植物の細胞構造の形成や代謝に欠かせないため、供給が絶たれると正常に成長できません。そのため、雑草は徐々に弱っていき、最終的に枯れます。

植物ホルモンを乱すタイプ

植物ホルモンを乱すタイプの除草剤は、植物の内部調整システムを標的としたものです。

通常、植物は自身で生成する植物ホルモンによって、情報伝達や生理活動を制御しています。

このタイプの除草剤には植物ホルモンと類似の作用を持つ成分が含まれており、植物に吸収されるとホルモンバランスを崩します。その結果、植物の正常な成長が妨げられ、最終的に枯死に至ります。

そのほか、細胞分裂を阻害するタイプなどもあります。

除草剤の危険性

除草剤の危険性について理解するには、農薬登録制度を知ることが大切です。

除草剤には、農薬登録をされているものと、農薬登録をされていないものの2種類が存在します。

農薬登録のある除草剤は、樹木や芝、農作物、花き(鉢花や切花のような観賞用植物)などの栽培・管理に使用される点が特徴です。農薬登録のある除草剤の使用対象には、ガーデニング・家庭菜園も含まれます。

国は人の健康や環境におよぼす影響を厳密に評価し、問題がないと判断した除草剤だけを農薬登録しています。そのため、農薬登録されている除草剤のラベルに記載されている作物と使用方法を守れば、人や作物に対しても安全なものだといえるでしょう。

一方、農薬登録されていない除草剤は、人が植えた植物がない駐車場や道路、運動場などに使用されます。

法律では、農薬登録されていない除草剤を樹木・芝・農作物・花きなどの栽培や管理に使用することを禁止しています。そのため、畑や植物を植えた庭などに除草剤を散布する際には、農薬登録されているものを使用しなければなりません。

農薬登録されている除草剤は、使用方法を守って適切に利用すれば人や作物に対する安全は確保されるため、除草剤の危険性に過度な不安を抱く必要はないでしょう。

参考:農林水産省「除草剤の販売・使用について」

農薬登録されている除草剤の見分け方

先述のとおり、家庭菜園や自宅の庭、花壇などの雑草対策には、農薬登録のある除草剤を選ばなければなりません。

農薬登録された除草剤は、厳しい検査に合格し、国によって安全性が確認されたものです。農薬登録されている除草剤のパッケージには「農林水産省登録第号」と表記されています。農薬登録の有無を確認すれば、信頼性の高い製品を選ぶことが可能です。

安全性と法令遵守の観点から、必ず農薬登録のある除草剤を選択しましょう。

危険性も考慮した適切な除草剤の選び方

除草剤を選ぶ際には、効果的な雑草対策と安全性の両立が大切です。庭や菜園の管理を効率的に行うには適切な除草剤を選び、商品に記載している使用方法や注意事項などをよく確認し正しく使用しましょう。

ここでは、適切な除草剤の選び方を2つ紹介します。

雑草の種類に合わせて選ぶ

除草剤には大きく分けて、「選択性除草剤」と「非選択性除草剤」の2種類があります。

選択性除草剤は、特定の植物を枯らすことを目的として開発されたものです。例えば、芝生用の除草剤には、芝生を傷付けずに雑草だけを枯らす効果があります。

一方の非選択性除草剤は散布した場所の植物をすべて枯らすため、特定の植物のみを枯らしたい場合は、選択性除草剤を選ぶとよいでしょう。

具体的には、花壇や庭の手入れをする際に、大切な植物を守りながら雑草だけを除去したい場合は選択性除草剤が適しています。反対に、空き地や駐車場など、すべての植物を除去したい場所に使用する場合は、非選択性除草剤が効果的です。

使用する場所や目的に応じて適切な種類を選ぶと、効果的な雑草対策ができるだけでなく、不要な植物の枯死を防ぐことができます。

効果や特徴で選ぶ

除草剤の効果や特徴によっても選び方は変わってきます。

除草剤は以下の3つのタイプに大別できます。

  • 茎葉処理型

  • 土壌処理型

  • ハイブリッド型

茎葉処理型は、植物の葉や茎から薬剤を吸収させて雑草を枯らすタイプです。現在生えている雑草に対して効果的で、速効性があります。そのため、庭や畑に生えてしまった雑草を短期間で除去したい場合に適しているでしょう。液体除草剤が多い。

土壌処理型では、土壌に移行した成分を根から吸収させて、雑草の生成を阻害します。散布後は、成分が数ヵ月土壌に残って効果を発揮するため、まだ雑草が生えていない場所や、今後雑草を生やしたくない場所に有効です。駐車場や庭の砂利など、長期的に雑草の生育を抑制したい場所に適しています。粒剤除草剤が多い。

ハイブリッド型は、薬剤を茎や根などから吸収させ、散布後も地表に薬剤が残るタイプです。現在生えている雑草に効果があるうえに、持続性もあるため、一度の処理で長期的な効果が期待できます。手間をかけずに、広範囲の雑草対策をしたい場合に適しているでしょう。

除草剤を安全に使用するための6つのポイント

除草剤は雑草対策として効果的な手段ですが、適切な使用方法を守ることが大切です。

ここでは、除草剤の使用に際して安全性を確保し、リスクを最小限に抑えるための6つのポイントを紹介します。

ラベルの指示にしたがう

除草剤の安全な使用において非常に重要なポイントの一つは、ラベルに記載された指示にしたがうことです。

製品のラベルには、適切な使用方法や注意事項などが詳細に記載されています。希釈倍数や使用量、使用時期、回数などの情報を必ず確認し、指示どおりに使用しましょう。

ラベルの内容を無視したり、過剰に使用したりすると、人や環境に影響することになりかねません。

急斜面での使用は避ける

除草剤は、急斜面での使用を避けることが大切です。

雨が降ると、斜面を伝って除草剤が流れ、下にある土地に予期せぬ影響を与えてしまう可能性があります。また、それまで斜面を支えていた雑草の根が枯れることで、土壌流出のリスクも高まります。

このような問題が発生するおそれがあるため、急斜面では除草剤の使用を控え、別の方法で雑草対策を行うことが必要です。

周りの環境に配慮する

除草剤を散布するときには、周囲の環境への配慮が欠かせません。風向きや天候を考慮し、近隣の植物や生態系に影響が出ないように注意深く作業を行いましょう。

また、近隣住民が除草剤の使用に不安を感じる場合もあるため、使用前に効果や安全性について説明し、理解を得ることが大切です。場合によっては、近隣住民に使用許可を取ることも検討しましょう。

このような配慮が、使用後のトラブル回避にも役立ちます。

防護具を着用する

除草剤の散布時は、適切な防護具の着用が不可欠です。皮膚や粘膜が露出しないよう、以下の防護具を着用しましょう。

  • 長袖・長ズボン

  • 手袋

  • マスク(農薬用)

  • ゴーグル

  • 帽子

これらの防護具は、除草剤が直接肌に触れたり、目や口に入ったりするのを防ぎます。

特に顔や手は露出しやすい部位なので、十分な注意が必要です。適切な防護具の着用は、作業者の安全を守る基本的で重要な対策となります。

使用後の手洗い・うがいを徹底する

除草剤を使用したあとは、手洗いとうがいを徹底することが重要です。

手や顔を丁寧に洗い、口内も十分にすすぎましょう。作業用の衣服は必ず着替え、状況に応じて、シャワーを浴びることも検討してください。

このような対策は、除草剤が皮膚や粘膜に付着したまま長時間放置されることを防ぎ、健康被害のリスクをできるだけ抑えるための大切なポイントです。

子どもやペットを近づけないようにする

除草剤を使用する際は、子どもやペットの安全に特に注意を払う必要があります。子どもやペットは、除草剤が付着した雑草を誤って目や口に入れる可能性があるためです。

したがって、子どもやペットが日常的に遊ぶ場所への除草剤の散布は控えることをおすすめします。散布後は、薬剤散布を表示するとともにロープなどを張り、一定期間は立ち入りを制限することが望ましいでしょう。

また、除草剤の保管場所にも十分な注意が必要です。必ず、子どもやペットの手が届かないような場所への保管を徹底しましょう。

雑草対策におすすめの除草剤4選

庭の雑草対策に効果的な、農薬登録されているおすすめの除草剤を4つ紹介します。

作物まわりに使える除草剤「グリーンスキットシャワー」

「グリーンスキットシャワー」は野菜、果樹、庭木、草花などの52作物(適用作物名数)のまわりで使えます。

散布液がかかった雑草だけが枯れ、雑草を枯らした後に種まき(だいこん、ほうれんそう等、使用時期に「は種前」が含まれる作物)、苗の植え付け(トマト、ミニトマト、きゅうり、なす等、使用時期に「定植前」が含まれる作物)ができます。

散布後25日(気温など環境により異なります)で枯れはじめ、714日で退治します。

土に落ちると自然物に分解します。

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雑草の葉や茎だけでなく根までスッキリ枯らす「草退治E粒剤」

「草退治E粒剤」は、しつこいスギナなどの各種雑草に対して、強力な効果を発揮する除草剤です。

葉や茎だけでなく根までも枯らす能力を持っているため、雑草をスッキリ除去できます。また、低温環境下でも効果を発揮する特長があります。

春先や秋口など雑草が生え始める時期から使用可能で、年間を通じて雑草防除に活用できる製品です。

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かつてない速効性&持続性の「草退治メガロングシャワーGT

「草退治メガロングシャワーGT」は、速効性と持続性を併せ持つ除草剤です。

散布後、最短で翌日から雑草が枯れ始めるという速効性があり、除草効果は約330日間持続します。ササやドクダミ、スギナ、セイタカアワダチソウなど、一般的には防除が難しいとされる雑草にも効果的に作用する点が大きな特長です。

雑草の発生を、長期間抑えたい場所への利用に適しています。

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1回の散布で約8ヵ月効果が持続する「草退治メガロングFL

「草退治メガロングFL」は、エコでお得な濃縮タイプの除草剤です。庭木の下にも使用できるなど、さまざまな場所での雑草対策に適しています。

1回の散布で約8ヵ月効果が持続するため、頻繁に使用する必要がなく経済的です。

また、濃縮タイプでコンパクトなため保管に場所を取らず、使用時に適切な濃度に希釈して使用できる点も魅力です。

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まとめ

除草剤の使用には一定の危険性がありますが、定められた方法を守れば安全に利用できます。

除草剤を選ぶ際には農薬登録されているかを確認し、ラベルの指示にしたがって使用することが大切です。また、急斜面での使用は避け、周囲の環境に配慮しながら作業を行いましょう。

防護具の着用や使用後の手洗い・うがいを徹底し、健康被害のリスクを最小限に抑えることも重要です。使用時には子どもやペットを近づけないよう注意し、除草剤の保管場所にも気を配る必要があります。

除草剤の正しい使用法を守り、安全かつ効果的に利用しましょう。

監修 矢澤 秀成
園芸研究家、花菜ガーデンヘッドガーデナー。愛称「ほそめ先生」。種苗会社にて野菜と花の研究をしたのち独立。植物園や肥料会社、造園会社などの顧問を歴任。またNHKテレビ「趣味の園芸」、「あさイチ(グリーンスタイル)」などの講師を務め、家庭園芸の普及に幅広く活躍する。「趣味の園芸」(NHK出版)、「園芸入門」(同)、「プリムラの育て方」(同)、園芸の基本帖」(KADOKAWA)など、執筆多数。

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