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庭の木や家の壁などに発生する毛虫には、多くの人が悩まされています。特に毛虫の集団を見つけたときなどには、その見た目に驚いたり不快感を覚えたりすることもあるかもしれません。また、毛虫による食害も深刻な問題です。
毛虫は春になると活動が活発になり、特に梅雨明けから繁殖が進みます。毛虫が来ないようにするには、毛虫の発生予防や駆除を適切に行なうことが大切です。
本記事では、毛虫が来ないようにする事前の対処方法や、よく見る毛虫の種類、発生してしまった毛虫の駆除方法などを紹介します。
毛虫とは、チョウやガの幼虫のうち、体に毛が目立つものを指します。日本でよく見られるのは、おもに9種類の毛虫です。毛虫の種類によって毒の有無などの特徴が異なるため、まずは以下で確認しましょう。
ドクガは、体が全体的に黒く、オレンジ色の縞模様があり、背中に短い毛束を持つ毛虫です。サクラやウメ、カキ、バラなど多くの植物(樹木や草花)に発生しやすい特徴があります。
ドクガには毒針毛(どくしんもう)と呼ばれる毒毛があります。この毒針毛は風に乗って飛ぶため、ドクガに直接触れていなくても、近くにいるだけで毒針毛が皮膚に刺さることがあります。
ドクガの毒毛針が皮膚に刺さると、あとからヒリヒリした痛みと痒みが出てきて2~3週間症状が続くため、注意が必要です。
【発生時期】6~7月(幼虫/毛虫)
チャドクガは、頭部が黄色、体が黒色、背中には黄色い縞模様があり、白色と黒色の長い毛を持つ毛虫です。ツバキ、チャ、サザンカなどツバキ科の植物に発生しやすい傾向にあります。
チャドクガにも毒針毛があり、風で飛びます。毒針毛が皮膚に刺さると、ドクガの場合と同様、あとからヒリヒリした痛みと痒みが出てきて2~3週間症状が続くため、注意しましょう。死んだ毛虫や抜け殻でもかぶれるので注意が必要です。
【発生時期】4~6月、8~9月(幼虫/毛虫)
イラガは、黄緑色の太い体に、短いトゲ状の突起がある毛虫です。サクラやウメ、カキ、ケヤキ、カエデ類など多くの樹木に発生しやすい特徴があります。
イラガは毒棘(どくきょく)があり、手が抜けて飛ぶことはないものの、触れると毒を注入されます。その際には電気が流れるような痛みが走りますが、症状は長引かないものの、翌日かゆみをともない腫れることがあります。
【発生時期】6~10月(幼虫/毛虫)
クロシタアオイラガは、体が黄緑色で、背中にオレンジ色や赤色の線があり、体の前後にトゲ状の突起があるのが特徴の毛虫です。サクラやウメ、カキ、ケヤキなど多くの樹木に発生しやすい傾向にあります。
イラガよりやや小型ですが、注射式のトゲのほかに毒針毛も持っているため、注意が必要です。刺されるとイラガのときと同様、電気が流れるような痛みが走ります。また、その症状がイラガのときより長引きます。
【発生時期】6~9月(幼虫/毛虫)
マツカレハ(有毒)
マツカレハは、背中が銀色で細長い見た目を持つ、大型の毛虫です。アカマツやクロマツ、ヒマラヤシーダー(ヒマラヤ杉)などのマツ類に発生しやすい傾向にあります。
マツカレハは背中に黒い毛束があり、触れると毒針毛が刺さります。刺された直後には激痛があり、腫れあがりますが、痛みや腫れは長引きません。ただし、痒みは1~2週間程度続きます。
【発生時期】 9~6月毛虫で冬を越し、7月頃蛹(さなぎ)、8~9月成虫
マイマイガは、頭がオレンジ色、体が茶色っぽい黒色で、体の側面に毛束がある毛虫です。サクラやニレ、クリ、クヌギなどに付きやすく、糸を出して枝葉にぶら下がる習性があり、ブランコケムシとも呼ばれています。
マイマイガはドクガ科で、チャドクガに似ていますが、成虫に毒性はないといわれています。ただし、生まれて間もない幼虫は有毒です。
マイマイガは刺さない毛虫ですが、触ると毛が刺さって痛い場合があるため、無理に触れないほうがよいでしょう。
約10年周期で大発生する。大発生後、2年は特に注意が必要です。
【発生時期】 4~6月
アメリカシロヒトリは、頭が黒色、体が黄色の毛虫です。成長するにつれて、体は灰色がかった黒色に変わっていきます。サクラやカキ、ヤナギ、プラタナスなど多くの樹木の葉に発生しやすい特徴があります。
アメリカシロヒトリに毒性はなく刺さない毛虫ですが、日本では庭のガーデニングや菜園に現れることが多く、樹木の葉っぱを丸坊主にするため、駆除の対象となりやすい傾向です。
【発生時期】5~9月(幼虫/毛虫)
クスサンは全身が白い毛で覆われる大型の毛虫で、シラガタロウと呼ばれています。生まれたばかりの頃は黒色で、成長するにつれて体の側面が黄色になり、背中は青白色です。クリやクヌギ、コナラ、イチョウなどに発生しやすい傾向にあります。
クスサンは毒性がなく、刺しません。しかし毛が硬く、触れると痛い場合があるため、無理に触らないようにしましょう。
【発生時期】4~7月(幼虫/毛虫)
オビカレハは、黄色い体に黒い縞模様がある毛虫です。成長するにつれて頭部や体の側面に青みがでてきます。
サクラやウメ、モモ、リンゴ、バラなどのバラ科、ヤナギなどに付きやすく、テントのように糸を張って群がる姿がよく見られます。
オビカレハは似ている毛虫も多く判別が難しいが、毒性がなく、刺さない毛虫です。毛もやわらかいので安全ですが、群がっている見た目が悪いため、駆除対象になりやすい傾向にあります。
【発生時期】3~6月
家の庭などで毛虫が発生すると、樹木や草花、野菜などを食べられてしまう可能性があるため、速やかに駆除する必要があります。しかし、そもそも毛虫が発生しなければ、退治する手間もかかりません。
ここでは、家の庭などに毛虫が来ないようにする6つの方法を紹介します。毛虫の発生予防に採り入れてみてください。
毛虫が来ないようにするには、まず枝葉を剪定(せんてい)して、毛虫が好む環境をなくすようにしましょう。
枝葉が重なり合っていると、成虫であるチョウやガにとっては卵を産みやすく、毛虫にとっても天敵に見つかりにくい環境になります。あらかじめ重なり合っている枝葉を剪定しておけば、卵や毛虫を早い段階で発見でき、被害を減らせます。
なお、枝葉には毛虫の毒針毛が残っていることがあるため、自分で剪定する際は肌が隠れる服装をし、手袋や帽子を着用してください。
毛虫は幼虫になると毒針毛が飛ぶものもあり、駆除に苦労するため、卵のうちに退治するよう心がけましょう。
毛虫の卵は綿状の塊になって枝葉に付いていることが多いため、枝葉に綿状の塊を見つけたら、枝や葉っぱごと切り落としたり、熱湯をかけたりするなどして処理してください。
毛虫は春になると活動が活発になり、特に梅雨明けから繁殖が進みます。この時期には葉っぱの裏や枝を週1回程度、定期的に確認し、毛虫や卵が付着していたら駆除するようにしましょう。
葉っぱの裏や枝を確認する際には、毛虫の糞や、食べられた跡がある葉っぱを注意して見ると、効率良く退治できます。
予防薬剤を使用するのも、毛虫除けに効果があります。
予防薬剤は、効果が長期間持続する薬剤をあらかじめ散布しておくことで、薬剤が付いている葉っぱや枝を食べる毛虫に対して予防的効果を得られえます。
木に穴をあけて薬剤を注入する「樹幹注入(じゅかんちゅうにゅう)」は、薬剤が飛び散る心配がなく、毛虫除けの効果が1年から数年持続します。
樹幹注入を行なうには専門業者に依頼する必要がありますが、定期的に依頼すれば毛虫が来ないようにするための手間や作業回数を大幅に減らせます。
家の近辺にある植物が原因の場合は役所などに相談する
毛虫は、家の周りからやってくることもあります。街路樹や公共施設の植え込みなどから毛虫が来ていることがわかったら、自治体に連絡して対応してもらってください。
近所の庭や畑から毛虫が来ているようなら、相手に一度その旨を伝えてみるとよいでしょう。その際には毛虫の対策方法なども併せて伝えるのがおすすめです。直接伝えるのが難しければ、自治体に連絡して協力を求めるのも一手です。
庭の木や家の壁に毛虫が発生したら、早めに駆除することが大切です。ここでは、毛虫を駆除する方法を6つ紹介します。すでに毛虫が発生している方は参考にしてください。
毛虫が葉っぱや枝に密集している生まれたばかりの時期や、毛虫が木ではなく壁やコンクリートにいる場合、無毒の毛虫は、駆除スプレーを散布して退治するのがおすすめです。
また、毒針毛を持つ有毒な毛虫にも、毒針毛が飛ばないよう先に毒針毛固着剤を散布することで、駆除スプレーを使えます。毒針毛を持つ毛虫を退治する際は、肌を覆う服、手袋、長靴、防護メガネ、マスク、帽子などを着用して肌の露出を抑えましょう。
毛虫の殺虫効果が高い駆除スプレーを選ぶのも大切なポイントです。毛虫の種類を見分けられない場合は、毒針毛がある毛虫のときと同じように準備をしてから駆除しましょう。
駆除スプレーの散布後は、駆除した部分の枝葉を切り落としてビニール袋にまとめ、地面に落ちた毛虫の死骸を割りばしなどで拾って処理してください。
毛虫の毒の多くは、50度以上のお湯をかけることで無毒化できます。その際は、植物に直接熱湯をかけると枯れてしまう恐れがあるため、毛虫を割りばしなどで捕まえ、熱湯をためておいたバケツに入れて駆除するとよいでしょう。
ただし、毒性のある毛虫に近づくと刺される恐れがあります。そのため、この方法は、無毒の毛虫を少しだけ処理する場合におすすめです。
洗剤を薄めた液に毛虫を浸すと、窒息死させることができます。ただし、この方法も熱湯を使う場合と同様、毛虫に近づいて捕まえる必要があるため、基本的には無毒の毛虫を少しだけ駆除したい場合におすすめです。
毒針毛を持つ毛虫に刺されると、毛虫皮膚炎を起こすことがあるため、気を付けましょう。
毛虫皮膚炎は、ドクガやチャドクガ、イラガなどの毛虫の毒針毛が皮膚に触れることで、赤みやかゆみ、ブツブツ、ピリピリした痛みが1~2週間ほど続きます。
毛虫を直接触っていなくても、風で飛んできた毒針毛が皮膚に触れることで毛虫皮膚炎を発症する場合があります。
もし毛虫皮膚炎になったら、以下の手順で応急処置をしてください。
患部にガムテープを当てて毒針毛を取り除く
シャワーで洗い流す
患部を冷やす
着ていた衣服を洗濯する(ほかの洗濯物とは別に洗う)
痛みや痒みがひどい場合は、応急処置後、皮膚科を受診しましょう。
毛虫を駆除する際には、毛虫を含む害虫を効果的に取り除ける駆除スプレーの使用がおすすめです。ここでは、2種類の駆除スプレーを紹介します。
ベニカXネクストスプレーは、化学防除成分と物理防除成分を組み合わせた殺虫殺菌スプレーで、庭木や野菜、草花など幅広い植物に使えます。
以下の5つの成分を配合しており、退治の難しいチョウ目老齢幼虫のハスモンヨトウやオオタバコガを含むさまざまな害虫に効果があります。
ピリダリル:ハスモンヨトウなどの大型幼虫に効果あり
還元澱粉糖化物:薬剤抵抗性が発達したハダニやアブラムシに効果あり
クロチアニジン:雨に強い浸透移行性で殺虫効果が持続
ペルメトリン:ノックダウン効果で害虫を素早く退治
マンデストロビン:雨に強い浸透移行性で病気の予防や治療に効果あり
【適用害虫】ハスモンヨトウ、オオタバコガ、アブラムシ類など
ベニカJスプレーは、庭木や草花などに発生した毛虫を退治する際に使用できる殺虫剤です。直噴散布で、高いところにいる害虫や、毒針毛を持つ近寄りたくない毛虫などを、遠くから退治できます。
毛虫に対しては、散布後の速効性と1週間近い持続性を誇り、散布後に発生した害虫も退治することが可能です。また、浸透移行性により、散布液がかかりにくい場所にいる毛虫にも効果があります。
【適用害虫】ケムシ類、イラガ類、アブラムシ類など
日本でよく見られる毛虫は、毒針毛や毒棘を持つドクガやチャドクガ、イラガなどと、無毒なアメリカシロヒトリやクスサン、オビカレハなどが挙げられます。
毛虫が来ないようにするには、まず枝葉を適切に剪定して毛虫が好む環境をなくし、毛虫が卵のうちに退治するよう心がけましょう。また、木酢液や予防薬剤の使用も効果的です。
すでに発生している毛虫を退治する場合は、駆除スプレーを散布したり、50度以上のお湯をかけたり、洗剤を薄めた液に浸したりして毛虫を取り除きます。
駆除スプレーを使用する際には、毛虫の種類を確認し、毒針毛を持つ毛虫には先に毒針毛固着剤を散布してから駆除スプレーを使用します。それ以外の毛虫には、そのまま駆除スプレーを使用して問題ありません。毛虫の種類を見分けられない場合は念のため、毒針毛を持つ毛虫のときと同じように、毒針毛固着剤を散布してから駆除スプレーを使用してください。