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どこからともなく現れて、あっという間に数が増えているアブラムシ。気が付くと大繁殖してしまうため、対処に困っている人は多いのではないでしょうか。
アブラムシが繁殖すると、美観を損ねるうえに植物に悪影響を与えてしまうため、アブラムシを見つけたら早めに対策するのがおすすめです。
本記事では、アブラムシがどこからやって来るのか、アブラムシが植物についてしまった場合の対策、予防法を紹介します。
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アブラムシはカメムシ目アブラムシ上科に分類される昆虫の総称で、体長2~4mmほどです。
アブラムシには数多くの種類がありますが、大きく分けると羽のある「有翅型」と羽のない「無翅型」があり、有翅型の個体が飛んできて植物に寄生します。
しかし、アブラムシは非常に小さいため、飛来している個体を見つけて駆除するのは困難でしょう。
アブラムシは秋になると、植物の芽の付近などに卵を産み付けて越冬するのが一般的です。そして、春になって卵が孵化し、生まれた個体が成長して繁殖します。
春から秋にかけては雌のみで繁殖(胎生単為生殖)して世代交代を繰り返し、秋になると雄が生まれ、交尾して卵を産み、その卵の状態で越冬します。
雌だけで繁殖して世代交代を繰り返すなかで、数が増えすぎると植物の養分が足りなくなってしまいます。そのため、ほかの植物に移動できるよう、3世代目以降には有翅型の個体が生まれるようになっています。
アブラムシが一気に増える原因は、その繁殖力の高さにあります。
成虫は条件が良い場合には毎日数匹から十数匹の雌の子どもを産み(胎生)、それらが10日前後で成虫になり、雌だけで単為生殖することで子どもを産み続けます。胎生とは、雌の体内で卵を孵化させ、子どもがある程度成長してから体外に産み出す繁殖形態のことです。
体内で卵を育て幼虫として子どもを産むため、卵の状態で生まれるよりも生存率が高くなります。そして、10日前後で子どもを産める状態になることで、どんどん数が増えていきます。
ここでは、アブラムシの詳しい生態と、アブラムシが好む植物を紹介します。
アブラムシは日本だけで700種以上が存在し、体色は濃緑・淡緑・赤・黒・茶・黄色などさまざまです。特定の植物にしか寄生しない種類と、多くの植物に寄生する種類が存在し、植物の汁液を吸って成長します。
おもな活動時期は4~11月ですが、アブラムシは極端な暑さや寒さに弱く、特に活発に活動するのは一般的に4~6月と9~10月とされています。
アブラムシの排泄物は「甘露」と呼ばれる糖分を含んだベトベトした汁で、アリはこの甘露を餌として求めます。そのため、アブラムシが寄生している植物には、アリもたくさんついているケースが少なくありません。
アブラムシは、植物に含まれるアミノ酸成分を好む習性があります。詳しくは後述しますが、アミノ酸過多になっている植物にはアブラムシがつきやすいでしょう。
さらに、アブラムシは強い光を嫌い、日陰や風通しの悪い環境を好むため、そのような環境に生育している植物には寄ってくる傾向にあります。
アブラムシが特に発生しやすい植物の例は、下記のとおりです。
果樹(ウメ・クリ・ナシ・モモ・リンゴなど)
野菜(エダマメ・ダイコン・カブ・オクラ・トマト・ホウレンソウ・キャベツ・ピーマン・ブロッコリー・レタスなど)
草花(バラ・スイレン・チューリップ・ユリ・ペチュニアなど)
これらは、あくまでアブラムシが発生しやすい植物の一例です。このほかにも、アブラムシがつきやすい植物はたくさんあります。
アブラムシは「モザイク病」のウイルスを媒介し、植物を病気にしてしまったり、排泄物の甘露で「すす病」を発生させたりします。
モザイク病は葉や花弁に濃淡のまだら模様ができ、株の萎縮、葉の黄化などが起こる病気です。アブラムシのほか、アザミウマやコナジラミ、ハダニなどによってウイルスが媒介されます。感染すると治療する手立てはないため、株ごと処分しなければなりません。
すす病は、排泄物である甘露にかびが生えてしまい、葉・幹・実などが、黒色で粘着質のススでまとわれたようになる病気です。
また、アブラムシは新芽やつぼみに群がって植物の汁を吸い、その生育を妨げるうえに、排泄物の甘露がアリを引き寄せてしまいます。
アリは、テントウムシをはじめとするアブラムシの天敵を遠ざけてしまうため、ますますアブラムシとアリが増えることになります。
アブラムシの発生を予防するには、植物の育成環境を整えることと、事前の対策をすることが有効です。ここでは、アブラムシの発生を予防する方法を紹介します。
アブラムシの発生を予防するために、チッ素肥料は適量を与えることを意識しましょう。チッ素肥料を与えすぎて植物を育てると、アブラムシを引き寄せやすくなるためです。
チッ素は植物の発育に重要な物質であるものの、チッ素肥料を与えすぎると植物がアミノ酸過多になります。その結果、アミノ酸成分を好むアブラムシがつきやすくなってしまいます。
アブラムシは日当たりや風通しの悪い環境を好むため、植物に日光がまんべんなく当たるようにしつつ、密に植えることを避けて風通しを良くしましょう。そうすることで、アブラムシが発生しにくくなります。アルミシートなどで植物の根元を覆い、光を乱反射させる効果も期待できます。
植物が密生していて日当たりが悪く、風通しの悪い環境では発生しやすくなるため、注意しましょう。
予防薬剤の利用も手軽で効果的な方法です。具体的には、植物を植え付ける際に薬剤を土に混ぜたり株元にばらまいたりするほか、葉や株に散布したりします。
予防薬剤を使用すれば、手軽にアブラムシを予防できます。そのうえ、肥料の量や育成環境が適切だったにもかかわらず、アブラムシが発生してしまった場合にも効果的です。
強い光を嫌うアブラムシの習性を利用し、銀色のポリマルチや防虫ネットで植物を覆うのも、アブラムシの飛来を防止する効果があります。
光を反射するポリマルチや防虫ネットを張る場合は、アブラムシがついていないか確認してから行いましょう。アブラムシが発生してからポリマルチや防虫ネットを張ってしまうと、ビニールやネット内でアブラムシを飼っているような状態になってしまいます。
上記以外にも、アブラムシが嫌う植物や、アブラムシの天敵をおびき寄せる植物を一緒に植える方法もあります。しかし、初心者が行うには難しい要素もあり、失敗してしまうことも考えられるので気を付けてください。
例えば、アブラムシが嫌う植物には、ミントやヨモギ、セージ、チャイブ(ネギ類)、バジルなどがありますが繁殖力の高い植物が多く、必要以上に増えてしまい育てている植物を枯らしてしまう可能性があります。
このような植物を適度に生育させるための管理や調整は、初心者には困難です。必要以上に繁殖してしまうと、除草に多大な労力を要してしまうでしょう。
また、アブラムシの天敵をおびき寄せる、デントコーンや白クローバーを一緒に植える方法もあります。この方法も、アブラムシの天敵がやってきてとどまってくれるかは周辺環境に左右されるため、確実とはいえません。
前章で解説したように、アブラムシは植物につくとあっという間に数が増えてしまいます。ここでは、アブラムシが植物についてしまった場合の対策を紹介します。
大量にアブラムシがついてしまった場合は、殺虫剤を用いて対処するのが簡単でおすすめです。
殺虫剤の種類は豊富で、天然系由来成分で安全性が高いものや、収穫時期直前まで散布できるものもあります。形態もスプレータイプだけでなく、粒剤タイプ、希釈して使用するタイプなどがあり、多種多様です。
スプレータイプの場合は、アブラムシに直接散布して駆除でき、粒剤タイプは、殺虫成分を根から吸収させて植物自体に成分を浸透移行させ、アブラムシに植物の汁を吸汁させて退治する仕組みです。
発生初期であれば、下記の方法で物理的に取り除くことも可能です。
強い水流のシャワーを当てる
歯ブラシで擦り落とす
粘着力の弱いテープに貼り付けて取る
ただし、力加減を間違えると植物を傷付けてしまうため、注意が必要です。また、あまりにもアブラムシの数が多い場合には、この方法で駆除しきれないことがあります。
上記以外には、ナミテントウをはじめとするアブラムシの天敵となる虫を入手して、アブラムシのいる植物に放つ方法があります。うまくいけばアブラムシを食べてくれるので、植物に負担を与えることなく駆除できるでしょう。
これらの虫を入手するには捕獲するという方法もありますが、多くの場合なかなか難しいため、インターネットで購入するのがおすすめです。例えば、ナミテントウの幼虫はインターネットで購入できます。
ただし、温度管理や水やりのタイミングと方法、天敵となる虫の移動を妨げない環境づくりなどをしっかりしないと駆除効果が下がってしまうため、注意しましょう。
また、益虫とはいえ虫を取り扱うので、虫が苦手な人にはおすすめできません。
雑草が多い場所では、アブラムシの隠れ家となる可能性があり、周辺の雑草の除去を行いましょう。枝が混み合った部分も同様に剪定し、風通しや太陽光が入りやすい環境にすることもアブラムシ予防につながります。
アブラムシへの対処は予防や発生初期の駆除が肝心です。ここでは、アブラムシの予防や駆除におすすめの薬剤を紹介します。
スプレータイプの特定防除資材です。食品成分(酢酸)を100%使用しているため、食用の作物に対しても、食べる直前まで何度でも使用して問題ありません。2~3日おきに1回散布するだけで、アブラムシの退治と予防を同時にできます。
ピュアベニカはアブラムシだけでなく、ハダニやコナジラミにも効果的です。株元への散布により根を刺激して植物の抵抗力を高めることで、青枯病やうどんこ病も予防します。
【適用害虫】アブラムシ、ハダニ、コナジラミなど
粒タイプの殺虫殺菌剤です。植付け時に土に混ぜ込む、または植付け後に株元へばらまくだけで効果が表れます。
殺虫成分が根から吸収されて葉の隅々まで植物全体に広がり、アブラムシの被害から守ります。
また、微生物(B.t.菌)の作用により植物自身の抵抗力を強化することで、うどんこ病や灰色かび病、黒星病の予防が可能です。
【適用害虫】アブラムシ類、コナジラミ類、アオムシ、ハモグリバエ類など
花や野菜の害虫対策の決定版、「家庭園芸用GFオルトラン粒剤」もおすすめです。こちらもばらまくだけで簡単に使用でき、広い範囲の害虫に対して効果を発揮します。
【適用害虫】アブラムシ類、アオムシ類、ヨトウムシ類など
アブラムシは、羽のある有翅型の個体が飛んできて植物に寄生します。繁殖力が高いため、あっという間に数が増え、寄生した植物にさまざまな被害をもたらす厄介な害虫です。
このようなアブラムシの寄生を防ぐには、簡単に寄ってこないような環境づくりと、予防薬剤を使用しての事前対策が有効だといえるでしょう。予防薬剤を使用すれば、手軽にアブラムシを予防できます。
また、アブラムシが大量発生した場合には、物理的に取り除く方法でも対処できますが、殺虫剤の使用で簡単に駆除することが可能です。
薬剤を上手に利用すれば、知らぬ間に植物についてしまうアブラムシに対して、効果的に対策できるでしょう。