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家庭菜園などで育てている野菜が夜のうちに食い荒らされている場合、それはナメクジによる被害かもしれません。ナメクジは年中発生する比較的身近な害虫ですが、昼間は姿を現さず見つけるのに苦労する方も多いでしょう。また、昆虫の害虫とも様子が違うので対処法に迷う方もいるかもしれません。
そこで本記事では、ナメクジの習性などを踏まえたうえで、適切な駆除方法や予防方法を解説します。ナメクジを放置すると、野菜の見た目が悪化するだけでなく人体にとって害になる可能性もあるため、十分な対策を講じましょう。
効果的なナメクジ対策を行うには、ナメクジの習性について知っておくことが重要です。まずは、ナメクジの特徴や好む環境を押さえておきましょう。
ナメクジはカタツムリに近い種で、陸に住む巻貝の一種です。一年中発生する可能性がありますが、多湿で気温20度前後の時期に発生しやすく、5月~6月、9月~10月特に多く見られます。
ナメクジのやっかいな特徴として挙げられるのが、繁殖力の強さです。ナメクジは1匹がオスとメスの両方の生殖器官を持つ雌雄同体で、交尾をすると両方の個体が産卵します。産卵回数は年間10回前後で、一度に数十個の卵を土に産み付けて増えていきます。
ナメクジに食害を受けた部分は穴が開くため、被害自体には気付きやすいでしょう。ただし、ナメクジは夜行性のため、実際に何かを食べている姿を目撃することはあまりないかもしれません。
また、乾燥に弱く体表から粘液を出していて、その粘液が乾いた跡が白っぽく光ったように見えることもナメクジの特徴です。そのため、食害を受けた植物の周りに何かが這ったような白い跡が見える場合、ナメクジの被害と推測できます。
ナメクジは夜行性なので、日中は日の当たらない地面の下や草の根もとなど暗い場所に潜んでいます。例えば、植木鉢や庭石などの下、落ち葉の下などが住処になっていることが多いでしょう。1日に4メートルほども移動するため、野菜に近い場所からやってくることも考えられます。
卵は半透明で2~3ミリほどの大きさで、石の下や浅い土の中にまとめて産み付けられます。卵は春先に孵化したあと、梅雨の時期には60mmほどまで成長し食害も目立つようになります。
ナメクジは雑食で、なかでもやわらかい植物を好んで食害します。そのため発芽したばかりの双葉や新芽、若葉、やわらかい実が被害に遭いがちです。
特に被害に遭いやすい野菜・果物の例としては、以下のようなものが挙げられます。
キャベツやレタスなどの結球野菜の場合、外側ではなく内部に潜り込んでいることも多いため注意しましょう。
ナメクジといえば「塩をかけると溶けてなくなる」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
ナメクジは体の80%以上が水分なので、塩や砂糖など水分を吸着するものをかけると水が体内から放出されて縮んでいきます。ただしこれは、水が出た分だけ体が小さくなるにすぎず、水を与えるともとに戻ってしまいます。
実際に塩をかけてナメクジの水分を完全に抜くには、かなりの量の塩が必要です。花壇や畑にいるナメクジを塩で退治しようとした場合、植物への塩害の可能性もあるため、塩を振りかける方法は現実的に有効な駆除方法とはいえません。
ナメクジは身近な害虫なので、そこまで危機感を感じない方もいるかもしれませんが、ナメクジが付いた野菜をそのまま食べるのは避けてください。
ナメクジやカタツムリは寄生虫(広東住血線虫など)を媒介していることがあり、ナメクジが這った跡にも線虫が潜んでいる可能性があります。ナメクジの粘液が付いた野菜を誤って生食すると、重篤な症状を発症する危険性もあるため注意が必要なのです。
ナメクジの被害が出たと思われる場合は、迅速に駆除などの対策をとりましょう。
また、野菜を食べる前にはよく洗うことが大事です。加熱処理をすることで広東住血線虫は死滅するため、炒め物や煮込み料理などにするのも安全な方法といえます。
ナメクジによる食害が疑われる場合、放置せずにすみやかに駆除しましょう。ここでは、育てている野菜に付いたナメクジの駆除方法を解説します。
駆除の際はナメクジに直接触れないように注意し、触れてしまった箇所はヌルヌルが取れるまで石鹸でよく洗い流すことが大切です。
最も簡単なのは、目視でナメクジを見つけ、1匹ずつ割ばしなどでつまんで取り除く方法です。ナメクジは夜行性なので、夜20時頃からナメクジの食害が疑われる場所を見回ってみてください。一度では駆除しきれないため、1週間ほどは見回りを続けます。葉の裏側などにいる場合もあるので、植物全体をよく見るのがポイントです。
取り除いたナメクジは、中性洗剤に浸す、熱湯をかけるなどして処理しましょう。
ただし、植物に熱湯がかからないよう、ある程度離れた場所で処理するようにしてください。また、熱湯で変色・変形しない場所でのみ行うようにしましょう。
深めの容器にビールやオレンジジュースを入れて野菜の根もとに設置しておくと、匂いにつられてナメクジが集まり、容器の中で溺死するというトラップです。容器が浅すぎると逃げられてしまうので、注意してください。ペットボトルを活用する場合は、3分の1くらいの高さにカットしてビールを入れておくとよいでしょう。
具体的な方法は下記のとおりです。
効果のある範囲は狭く、畑などの広い場所には向きませんが、小規模の家庭菜園などでは試してみてもよいでしょう。即効性がある方法とはいえないため、仕掛けて数日は様子を見るのがおすすめです。
ナメクジを専用の殺虫剤を使えば、高い駆除効果が見込めます。市販の殺虫剤にはさまざまな種類がありますが、クモやゴキブリなどの昆虫を駆除する殺虫剤では効果がありません。
ナメクジ専用の殺虫剤には、直接吹き付けるスプレータイプのほか、植物周辺に設置してナメクジに毒エサを食べさせる置き型タイプもあります。置き型タイプを使う場合は、ペットや小さなお子さんが誤って触れることがないように、設置場所に注意を払ってください。
ナメクジ対策は、見つけ次第駆除することはもちろん、野菜に寄り付かないようにする対策も必要です。以下で紹介するナメクジ予防を行い、ナメクジの食害を防ぎましょう。
ナメクジは暗くてじめじめした場所を好み、住処や産卵場所にしています。植物周辺にそのような場所がないか確認し、もしあればできる限り改善しましょう。
例えば、湿った土は掘り起こして乾かす、水分がたまりそうな落ち葉は掃除する、石や敷きワラを置きっぱなしにしない、などの対策が有効です。雑草が茂りすぎた場所も湿度が高くなるため、除草して風通しを良くしましょう。
また、プランターの裏もナメクジの隠れ場所になりがちです。鉢植えやプランターは地面に直接置かず、レンガや台に乗せて通気性を確保するとよいでしょう。プランター同士を密着させないように配置するのも有効です。
野菜への被害を防ぐために、周辺でナメクジの好むものをおとり作物として育て、野菜への食害を防止する方法もあります。
ナメクジはやわらかい植物を好むので、野菜を栽培している場所の近くに若い雑草が生えていれば、おとりとしてあえて生やしたままにしておくのもよいでしょう。雑草でなくても、キク科の植物(マリーゴールドなど)はナメクジが好むので、おとり作物として育てるのもおすすめです。
ナメクジが嫌うものを野菜周辺にまいておくと、ナメクジが寄り付くのを防止できます。身の回りにあるものでは、ツバキやコーヒーはナメクジが嫌うものとして知られています。ツバキは、椿油かすや実、葉を刻んで植物周辺にまくとよいでしょう。コーヒーは冷めた液体をプランターなどの周りに散布するほか、乾いたコーヒーかすを周辺の土にまいておくと、カフェインの成分を嫌って近寄ってこないといわれています。
ナメクジを忌避するタイプの粉末や液体も市販されているので、それらを周囲に散布するのも手軽かつ効果的でおすすめです。野菜や果樹にかかっても問題ない成分のスプレー剤など、安心感を重視したい方が使いやすいものもあります。
ナメクジ対策は、その場で確実に駆除できる専用殺虫剤の使用や、スプレー散布などによる予防が効果的です。以下では、ナメクジ対策に使えるおすすめのアイテムを紹介します。
ナメトックスシリーズは、ナメクジやカタツムリに効果がある農薬登録品です。シリーズのなかの一つであるスプレータイプの「ナメトックススプレー」は、ナメクジに直接かけて退治、植物やその周辺に散布して殺虫と、2つの使い方ができる防除薬・退治薬です。
花や観葉植物、キャベツ、レタス、かんきつ類には直接散布・土壌表面への散布のいずれも可能。イチゴ、白菜などは、土壌表面に散布しておくことでナメクジを誘引し、薬剤に触れる・なめることにより殺虫します。
ナメトックススプレーは持続性があるのも特長です。一度散布すると、誘引・まちぶせの効果が1~2週間続くので、手間がかかりません。
スプレーしたときの匂いが少なく、散布跡も目立たないため、負担なくお使いいただけます。ナメクジを見つけたときにすぐ使えるだけでなく、あとから出てくるナメクジにも効果があるので、なかなか食害の現場を見つけられないという方もお試しください。
【適用害虫】ナメクジ類、カタツムリ類
「ピュアベニカ」は食酢100%でつくられた、虫・病気から植物を守るスプレータイプの特定防除資材です。食品成分100%の安心感と、あらゆる植物にいつでも何度でも使える気軽さが特長です。
ピュアベニカを、葉や株もとなどに散布することでナメクジを寄せ付けず、食害を防ぎます。野菜や果樹も収穫直前まで使用可能で、2~3日おきに1回散布するとより効果的です。ナメクジの発生時期は、被害が出る前から予防としてお使いください。
また、ピュアベニカはナメクジ以外の害虫予防・退治や、うどんこ病・黒星病の予防効果が見込めるのも特長です。アブラムシやハダニなど、家庭菜園でおなじみの害虫も対象なので、害虫・病気発生前から継続的に使用するのをおすすめします。
【適用害虫】ナメクジ、アブラムシ、ハダニ、コナジラミなど
ナメクジは身近な害虫なので、出てきてもそこまで危機感を持たない方もいるかもしれません。しかし実際は、線虫など注意すべき点もあり、粘液を経由して寄生虫が人の口に入ると重篤な症状を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。繁殖力も強いので、見つけたらすみやかに駆除しましょう。
対策にはいくつか方法がありますが、ナメクジ専用の殺虫剤・駆除アイテムを使用するのが確実でおすすめの方法です。野菜や果物をより安心して育てるためにナメクジ対策は必須なので、使いやすいアイテムを手もとに置いておき、駆除・予防に努めましょう。