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知っておきたい園芸情報 - 園芸コラムキャベツのカビは菌核病かも?対処法やその他のカビが生える病気まで解説

家庭菜園などでキャベツを育てていると、葉や茎にカビのようなものが発生してしまうことがあります。

もし、ふわふわした白い綿毛のようなカビが発生しているのであれば、菌核病かもしれません。菌核病はキャベツによく見られる病気で、対応が遅くなるほど対処が難しくなってしまうので注意が必要です。

本記事では、菌核病の特徴や対処法、菌核病以外のキャベツにカビが生える病気について解説します。「病気かも?」と不安な方はもちろん、キャベツに発生しやすい病気の予防方法を知っておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

キャベツの白いカビは「菌核病」の疑い

栽培中のキャベツに白いカビのようなものが発生している場合は、「菌核病(きんかくびょう)」かもしれません。菌核病はさまざまな植物で発症する可能性がありますが、特にキャベツに発生しやすい病気です。

以下では、菌核病の特徴と感染源などについて解説します。

菌核病の特徴

菌核病を発症すると、下葉や結球部の外側に淡い褐色水浸状の病斑ができ、徐々にキャベツ全体に広がって腐っていきます。

さらに進行すると、白い綿毛状のカビが広がりキャベツ全体が腐敗しますが、腐敗臭はありません。

その後、ネズミの糞のような黒い塊が多数発生します。「菌核」と呼ばれるこの黒い塊が現れるのは菌核病特有の症状で、ほかの病気と見分けるポイントにもなります。

菌核病の感染時期と発生条件

菌核病は、キャベツが結球し始める頃から発生することが多い病気です。特に気温15~20度程度の春と秋、くもりや雨が続く時期は、菌核病が広がりやすい時期なので注意しましょう。

菌核病の病原菌は、気温や降雨などの条件がそろうと「子のう盤」と呼ばれる黄褐色の小さなきのこを地表に形成してその頂部に子のう胞子を形成します。子のう胞子は風や雨滴で飛散します。そして、キャベツに付着することで感染します。

菌核病を発症したキャベツがあると、そのキャベツで形成された菌核が土壌内で生存します。菌核は土壌内で2~3年は生き残るため、一度発生した場所では再発への注意が必要です。

菌核病の感染源

菌核病の感染源は、土壌に潜んでいる糸状菌(カビ)です。

子のう盤から子のう胞子が飛散して伝染するほか、土壌に潜んでいる菌核が菌糸を伸ばし、地表付近の植物の葉や茎の傷口から侵入するケースもあります。

感染した株は新たな感染源となり、その近くの株へと菌糸が浸入することで感染が拡大していきます。

菌核病への対応方法

菌核病は伝染性が高いため、早期の発見と対策が重要です。ネズミの糞のような菌核が大量に発生してしまうと処理が困難になるため、できるだけ発生前、又は発生初期に徹底防除しましょう。

菌核病の症状を発見したらすぐに感染した株を取り除き、周辺の土や周囲に落ちた葉なども含めて袋に入れるなどして密封し、畑から持ち出して処分します。処分する際は、地中深くに埋めるか焼却して、胞子が飛散しない方法をとりましょう。

先述したように、感染した株が植えられていた土壌には菌が潜み、菌が数年生存することから、そのままにしておくと再び菌核病が伝染してしまいます。この場合は、地表近くの土と地下の土を入れ替える「天地返し」によって、病原菌を土壌深くに埋めましょう。

菌核病の病原菌は、地表から5cm以上の深さだと子のう盤を作れないとされているため、余裕を持って10 cm程度を目安に天地返しを行うのがおすすめです。

菌核病の予防方法

菌核病は、湿度の高いじめじめとした環境を好みます。そのため、菌核病の予防には土壌の水はけや通気性を良い状態で保つことが重要です。窒素が多すぎる場合も菌核病の発生リスクを高めるため、堆肥や肥料の与え方には注意しましょう。

また、菌核病は土壌で数年間生き残るため、菌核病が発生した場所で連作すると、新たに育てるキャベツも菌核病を発症する確率が高まってしまいます。

菌核病を予防するうえでは、適切な時期と状況を見て薬剤を使用することも重要です。薬剤の使用は発生前の予防散布が効果的で、遅くとも発病初期までの防除を目指しましょう。

さらに、台風が多い時期には強い風雨によってキャベツが傷付き、傷口から菌が侵入する可能性があるため、この時期の散布なども効果的です。

キャベツにカビが発生するその他の病気

菌核病は特にキャベツに発生しやすい病気ですが、このほかにもカビのようなものが発生する病気はあります。ここでは、キャベツにカビのようなものが生えたときに疑われる病気として、代表的なものを紹介します。

べと病(白いカビ)

べと病を発症すると、最初は境界がはっきりとしない淡い黄色の小さな斑点が葉に現れ、次第に拡大して淡い褐色に変わっていきます。その後、ステンドグラスの模様のように、葉脈に囲まれた部分が四角く黄褐色になり、葉の裏側にはカビが発生します。

症状はおもに下葉から生じて、上の葉に広がっていく傾向です。幼苗に発生した場合、葉の裏側にカビがびっしり生えて枯死することもあります。

症状のある葉は、晴天が続くとパリパリに乾きますが、雨などで湿度が高い状況下ではべとべとするのが特徴です。

・感染源と発症条件

病原菌は糸状菌(カビ)です。気温3~25度の環境で雨が降ると、空気中に飛散して周囲の植物に伝染します。

特に気温10~15度の多湿環境で、発病しやすい病気です。植物が9時間以上濡れていると発病しやすくなるので、梅雨など降雨の多い時期は特に注意しましょう。

・対策

べと病は感染してしまうと数時間で発病するため、予防が特に大切です。比較的涼しく湿度が高い環境だと被害が拡大しやすいため、株同士を離すなどして通気性を保ちましょう。結球後は予防効果が出ないため、早期の段階から対策を行います。

べと病の病原菌はアブラナ科の植物に寄生するため、アブラナ科の植物の連作は避けることも有効です。

窒素過多を避けることも有効です。

黒すす病(黒いカビ)

黒すす病では、最初は葉に灰~黒色の病斑が発生し、のちに病斑全体に黒いすす状のカビが広がります。キャベツの場合、結球し始める頃から結球期に、高温かつ多湿の環境で発生しやすいため注意しましょう。

・感染源と発症条件

黒すす病の病原菌は、種子や前作の被害作物に生存して感染源となります。気温25~30度の高温かつ多湿になると、発生リスクが高まります。

・対策

対策としては、種子伝染を防ぐため、消毒した種子を使うことが有効です。また、前作の植物が黒すす病にかかっていた場合は、周囲の植物も含めて確実に撤去しておきましょう。

うどんこ病(白いカビ)

うどんこ病は、葉や茎の表面に白いうどん粉をまぶしたようなカビが生える病気です。最初は白い斑点のようにカビが生じますが、症状が進むと葉全体が白くなっていきます。

うどんこ病には多くの種類がありますが、植物によって原因菌が異なることから、多くはそれぞれ異なる植物に寄生します。例えば、バラが発病するうどんこ病は、ほかの植物だと発病しません。

葉にうどんこ病の白カビが広がると栄養吸収や光合成を阻害されるため、植物の生育に悪影響をおよぼします。

・感染源と発症条件

うどんこ病の病原菌は、土壌や以前うどんこ病にかかった植物などに生存し、胞子が風にのって飛散します。

カビの一種でありながら、比較的涼しく湿度が低いときに繁殖しやすい病気で、春から秋にかけて発生し、梅雨や真夏には少なくなります。特に、風通しの悪い場所や日当たりの悪い場所で発生しやすいのも特徴です。

・対策

うどんこ病は風に乗って飛散するため、発病した葉などは早めに取り除いて処分しましょう。

また、病原菌は土壌内に潜んでいたり、周囲の雑草などに寄生したりして越冬することがあります。そのため、感染した植物は放置せず、しっかり除去・処分することも大切です。

併せて、キャベツのうどんこ病に効く薬剤を散布して予防や治療を行いましょう。

株腐病(褐色のカビ)

株腐病は結球期に、結球の側面から下側に灰色~黒褐色の病斑が広がって腐敗する病気です。さらに、外葉の裏側に粉状で淡い褐色のカビが発生します。腐敗は外側のみで、結球の内部にまではおよびません。

・感染源と発症条件

株腐病は、土壌内や前作の被害作物に生存する菌核・菌糸が感染源になり、土壌から菌糸が伸びて伝染します。また、葉にできたカビから出る胞子が飛散することにより、空気伝染も起こります。

土壌の水はけが悪いなど、多湿の環境になると発生しやすい病気です。キャベツの場合は結球期~収穫時期に雨が続くと、株腐病が発生しやすくなるとされています。

・対策

土壌からの伝染を防ぐためには、連作を避けることが大切です。さらに、予防として薬剤を散布するとよいでしょう。

病原菌は被害を受けた植物にも残るので、発症した株は早めに取り除いて処分することも重要です。

キャベツの病気対策に関する3つのポイント

キャベツの病気対策や予防の基本的な考え方を、3つのポイントに分けて解説します。

①感染株は早期に取り除く

病気になったキャベツは病原菌の温床となり、土壌感染や空気感染によって周囲に被害を拡大させてしまいます。そのため、発病した株や部位はできるだけ早く取り除いて焼却処分しましょう。

病原菌によっては、生きている株だけでなく、周囲の土や落ちた葉などにも寄生するため併せて処分することも重要です。

②薬剤を適切に使用する

薬剤は発病後に進行を遅らせるものもありますが、予防の段階で使うのが効果的です。キャベツの病気に有効な薬剤を適切なタイミングで散布しましょう。キャベツの他に土壌にも散布すると効果的です。

薬剤にはさまざまな種類があり、対象となる病気や作物が異なります。薬剤を使う際は、効果と使用できる作物を事前に確認して使用してください。

③栽培環境を整える

カビが発生する病気の多くは多湿な環境で広がりやすくなるため、湿気が溜まらないように栽培環境を整えて感染拡大を防ぐことが大切です。例えば、植え付けの際は株を密集させず、葉や茎が混み合う部分は適宜剪定するなどして通気性を保つとよいでしょう。

また、土壌に病原菌が潜んでいる場合は、泥はねで感染拡大することも考えられます。わらやマルチング剤をはじめとする資材で土を覆って、跳ね返りを防ぐのも、病気予防の有効な手段となるでしょう。

土壌に残った病原菌のなかには数年間生存するものもあるため、連作を避けることも対策につながります。

もともとキャベツは、同じ場所で連続して栽培することで、土壌の成分バランスが偏って生育不良や病気などにつながる「連作障害」が起こりやすい作物です。そのため、病気が出なくても2年以上の栽培間隔を空けるのがおすすめです。

キャベツのカビ・菌核病の予防や対策におすすめの「ベニカVフレッシュスプレー」

キャベツの菌核病予防や発生後の対策には、病気対策用スプレーなどを用意しておくと役立ちます。ここでは、おすすめの虫・病気対策用スプレーとして、「ベニカVフレッシュスプレー」を紹介します。

ベニカVフレッシュスプレーは、病原菌の感染を防ぐ予防効果と、感染後の症状拡大を防ぐ治療効果の両方を持つため、手もとに1本あると心強いでしょう。多くの病気に効果があり、キャベツの菌核病にも効果を発揮します。希釈の必要がないスプレータイプで、使いたいときにすぐ使えるのも便利なポイントです。

また、病気予防だけでなく害虫対策にも役立ちます。発生している害虫を即効退治したいときはもちろん、殺虫効果の持続による予防的効果も見込め、キャベツではアオムシ対策に使用することが可能です。

キャベツ以外にも、きゅうり・なす・小松菜などの野菜や、ぶどう・りんご・なしなどの果樹、草花、庭木に幅広く使えるので、育てている植物が複数ある方にもおすすめです。

【適用害虫】アブラムシ類、コナジラミ類、アオムシなど

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まとめ

キャベツにカビのようなものが発生した場合、さまざまな病気が疑われます。特に菌核病はキャベツによく見られる病気なので、白い綿毛のようなカビが発生している場合は注意しましょう。

処理が遅れると周囲に感染拡大してしまうため、病気になった株は見つけ次第、迅速に処分する必要があります。病原菌は土壌内で数年間生き残ることもあるため、天地返しや薬剤使用によって対策することも大切です。

病気を発症してしまうと対処が困難になるため、日頃から予防対策も行って、できる限り病気を寄せ付けないようにしましょう。病気予防と対策の両方に使える薬剤などもあるので、使い勝手の良いものを備えておくのがおすすめです。

監修 矢澤 秀成(やざわ・ひでなる)
園芸研究家、花菜ガーデンヘッドガーデナー。愛称「ほそめ先生」。種苗会社にて野菜と花の研究をしたのち独立。植物園や肥料会社、造園会社などの顧問を歴任。またNHKテレビ「趣味の園芸」、「あさイチ(グリーンスタイル)」などの講師を務め、家庭園芸の普及に幅広く活躍する。「趣味の園芸」(NHK出版)、「園芸入門」(同)、「プリムラの育て方」(同)、園芸の基本帖」(KADOKAWA)など、執筆多数。

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