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野菜を育てるうえで欠かせないのが病害虫対策です。特にねぎには多くの害虫が付きやすく、これらが品質を低下させたり、食べられなくしたりすることがあります。
害虫の発生時期や症状を把握し、駆除に適した農薬や病害虫の情報をチェックして、早めに対策を講じることが大切です。
この記事では、ねぎに多く見られる害虫の種類と、その発生を防ぐ方法や駆除方法、さらにおすすめのアイテムを紹介します。害虫予防をしっかりして、元気なねぎの収穫を目指しましょう。
ねぎに付く害虫には、ねぎ特有のものと広くさまざまな野菜に付く虫とがあります。それぞれの害虫の特徴を把握し、発生した際にすぐに対処できるようにしましょう。ねぎに付きやすい代表的な害虫と発生しやすい時期、症状を紹介します。
ネギアザミウマは、黄色と褐色が混ざった体色で、長さ約1mmの細長い虫です。幼虫は透明です。高温と乾燥を好み、特に6月から10月にかけて被害が目立ちます。
成虫と幼虫は葉の汁を吸い、被害箇所は葉の色が抜けて白いかすり状になるのが症状の特徴です。また、ネギえそ条斑病などの病気のウイルスを媒介することがあります。ネギえそ条斑病とは、アイリス黄斑ウイルス(IYSV)による新しい病害です。見つけたら農薬散布などで速やかに防除しましょう。
アブラムシ類は緑色が多いようですが、ネギアブラムシは光沢のある黒色をしており、体長は約1~3mmです。特に5月頃から6月頃、10月頃から11月頃に多く見られます。
増殖が速く、大量発生すると株全体が黒く見えることがあります。葉の汁を吸うことで葉が黄色くなり萎縮し、最終的には枯れるのが特徴です。
また、ネギアブラムシはネギ萎縮病ウイルスを媒介するため、早期の予防が重要です。酢を含む薬剤などで予防散布し、水はけの良い土と風通しの良い環境を整えましょう。
なお、ネギ萎縮病ウイルス(OYDV)は、ネギに発生するウイルスです。症状としては株全体が萎縮し、葉がねじれたりいじけたり、花茎が細く貧弱になったり、花が小さく色彩を欠いたりします。
ネギコガはアトヒゲコガ類(蛾の仲間)の幼虫で、体長約1cmで淡い緑色に近い透明な体をしています。6月頃から10月頃に発生し、特に6月頃から8月頃の高温な時期に多くなるのが特徴です。
幼虫は葉に潜って食害し、成長すると葉に穴を開け、表面に荒い網目状の繭を作ります。ねぎの葉肉に潜り込んで内部から食べるため、葉に2~5㎜白い筋が残ります。
食害が確認された場合は、残効性の高い粒剤や液剤を使用するのが効果的です。防虫ネットの設置も有効です。
エカキムシは、透明に近い淡い黄色の体を持つ、長さ約4mmのハエの老熟幼虫です。葉に潜って食害し、葉に絵のような食害を与えるため、この名前で呼ばれています。ネギコガと似た白い筋を残しますが、不規則な線状の跡が特徴です。歯肉の内側に0.2mmほどの半透明のゼリー状の卵を産み付けます。
大量に発生すると、葉全体が食べられてしまうこともあり、生育不良や葉の変形、枯れ、早期落葉を招くでしょう。4月頃から10月頃にかけて発生し、特に6月頃や9月頃に多く見られ、成虫は蛹(さなぎ)で越冬します。
ねぎにはヨトウガ、シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウなど、蛾の幼虫が発生します。これらの幼虫は夜間に活動し、葉を食害する虫で、一般に「ヨトウムシ」と呼ばれます。ヨトウガは4月頃から6月頃と9月頃から10月頃、ハスモンヨトウとシロイチモジヨトウはおもに8月頃から10月頃と、発生時期が異なるのが厄介な点です。
成虫は一度に大量の卵を産むため、幼虫が孵化(ふか)すると畑の一部に集中し、成長すると広範囲に散らばりながら猛烈に食害します。食害されると葉脈だけが残りボロボロになります。被覆資材やネットを使用してトンネル栽培するのが、防虫に効果的です。
ネキリムシ類は夜蛾の幼虫で、西日本ではカブラヤガ、東日本ではタマナヤガがよく見られます。これらの幼虫は4月頃から6月頃、また9月頃から11月頃にかけて多く発生します。幼虫は土中で越冬し、暖かい地域では早春から活動し、年に3~4回ほど発生するでしょう。
昼間は土の中に潜み、夜になると茎を食害して葉茎を切るのが特徴です。そのため、茎が切られたようになるのでネキリムシ(根切虫)と呼ばれています。数センチほど掘るだけで簡単に見つけられるため、被害が目立つ前に見つけて取り除くことが重要です。
ハダニ類の一種であるナミハダニがねぎに付く例が報告されています。ナミハダニは黄緑色で0.5mmほどと非常に小さく、発生時期は5月頃から10月頃です。特に梅雨明けから9月頃にかけて活発に繁殖し、一匹の雌でも短期間で増殖します。
おもに葉の裏に潜んで汁を吸い、糸を出しながら葉に小さな白い斑点を作るのが特徴です。数が増えると、葉が白くかすれたように見えます。
葉裏に白い紙を置き、息を吹きかけると小さな虫が動くのが見える場合、ハダニです。予防として、「酢」を使った特定防除資材の散布がおすすめです。また、水で流すことで駆除できます。
ねぎの害虫による被害を防ぐためには、早めに対策を打つことが大切です。ここでは、発生防止や害虫駆除のための方法を紹介します。
害虫やその幼虫による被害を防ぐには、防虫ネットを使うのが効果的です。ネギアザミウマ、ネギアブラムシ、ネギハモグリバエ、ヨウトムシ類など、さまざまな害虫を防ぐことができます。ネットを選ぶ際は、害虫の侵入を防ぐために目のサイズに注意しましょう。
ネギアブラムシは反射光を避けるため、畑のうねにシルバーのマルチやテープを貼ると近づきにくくなります。また、羽を持つアブラムシは光に引き寄せられますが、反射光によって方向感覚を失うため、作物に近づきづらくなります。マルチを使用すると植物の生育に応じて必要な養分を追加で与える追肥作業が難しくなることがあるので、緩効性の肥料を使うなどの工夫をするとよいでしょう。
葉に潜んでいる幼虫や成長した幼虫は、農薬だけでは駆除できないことがあります。そのため、葉や土中で幼虫を見つけたらすぐに取り除くことが大切です。また、さなぎも放置すると翌年に害をおよぼす可能性があるため、丁寧に観察して適切に取り除きましょう。
ネキリムシなどの被害はわかりやすいので、各害虫の被害を発見した場合は、周囲にほかの虫が潜んでいないかもよく確認することが重要です。
害虫には、農薬や殺虫剤を使って早めの対策と予防が必要です。特に、葉に潜る幼虫には浸透性の高い農薬が効果的でしょう。
害虫が葉や茎に侵入してからや、幼虫が成長し過ぎてからでは効果が薄くなるため、卵が孵化する前や直後に対処してください。すでに食害が発生している場合は、一度の散布で長く効くものを選ぶのがポイントです。
虫の飛来を防ぐためには防虫ネットの使用も有効ですが、アブラムシなどは体が小さいため、ネットだけで完全に防ぐのは困難です。
ネギアブラムシやハダニ類が広がると取り除くのが難しくなります。食害を確認したら、被害を受けた葉や株を取り除き、周囲に害が広がらないようにしましょう。
また、アブラムシの場合は共存するアリを駆除することも有効であり、農薬を効果的に利用するとよいでしょう。
ハウス内での栽培において、栽培後に実施すると防虫に効果的な方法が蒸し込み処理です。この方法では、ハウス内の温度を病害虫が死滅する温度以上に上げることで、病害虫の一掃が期待できます。
例えば、アザミウマやハモグリバエは45度以上で1時間ほどすると死滅するとされています。ほかの病害の多くについても、60度以上で30分から40分以上置くことで、病害虫対策の効果を発揮するでしょう。蒸し込み処理によって、病害の原因を次期に持ち越さないことが重要です。
「ピュアべニカ」は、お酢から作られた100%食品成分の特定防除資材で、あらゆる植物に対して、食べる直前まで何度でも使用できます。
アブラムシやハダニの予防・駆除のほか、ハスモンヨトウの食害を抑え、ハモグリバエの産卵も防ぎます。害虫の発生前や初期、病気の発生前に、2~3日に1回の頻度で散布すると効果的です。また、うどんこ病や黒星病の予防にも役立ちます。
虫の予防と退治には葉にスプレーし、病気予防には土にスプレーします。スプレータイプなので取り扱いやすく、株もとに散布することで根を刺激し植物の抵抗力を高めてくれる特定防除資材です。
【適用害虫】アブラムシ、ハダニ、コナジラミなど
害虫と併せて注意したいのが、ねぎに発生しやすい病気です。ねぎに多い病気とその対策を紹介します。
ねぎに発生する病気には次のようなものがあります。
萎凋病:葉が部分的にしおれたようになる
うどんこ病:葉や茎にうどん粉をまぶしたように白いかびができる
黒星病:葉に黒い円形の斑紋ができ株が衰弱する
黒斑病:葉が同心円状に薄茶色に変色し、やがて黒いシミ状に変色し枯れる
さび病:葉に小さなイボのようなものができ、やがて薄皮が破れて中からさびに似た粉が飛散する
白絹病:地際部や周辺の地面が白い糸で覆われたようになり、やがて立ち枯れる
苗立枯病:茎の地際からくびれて倒れる
灰色かび病:花弁やつぼみ、葉、茎にかびができる
べと病:葉に汚れのような不規則な紋ができ、少しずつ大きくなる
病気の感染を防ぐためには、風通しを良くし、適切な間隔を空けて作物を育てることが重要です。もし発症が確認された場合は、すぐにその株を取り除きましょう。取り除いた株は農産物を育てる場所である圃場(ほじょう)外に運び、焼却処分します。また、手袋や長靴、農機具なども消毒することが大切です。
多湿の環境では病気が発生しやすいため、湿気や乾燥に注意しましょう。一度病気が発生すると完全に取り除くのは難しいので、予防として農薬を散布することが重要です。病気によって細かい対策は異なるため、しっかりと確認しながら進めましょう。
ねぎを健康的に栽培するためには、害虫と病気の対策が不可欠です。
まず、ねぎに特有の害虫や広く見られる害虫の特徴を把握し、発生しやすい時期と症状を理解しましょう。地域の害虫発生状況を定期的に確認し、害虫の好む環境を作らないように心がけることが重要です。
病害を防ぐには、堆肥や肥料による窒素過多を防ぐことも大切です。
発生が確認された場合は、害虫を素早く特定し、適切な防除策を講じることで被害を最小限に抑えましょう。また、食べる直前まで使える防除商品も利用すると効果的です。