園芸療法とは

監修 岩崎 寛

園芸療法という言葉を聞いたことはありますか?
園芸療法とは『草花や野菜などの園芸植物や、身の回りにある自然との関わりを通して、心の健康、体の健康、社会生活における健康の回復をはかる療法』です。
現代社会は、ストレス社会であり、私たちの身の回りは心身に影響を与えるストレスの原因に満ちています。園芸療法というのは、森林浴やアロマセラピーなどと同じく、植物の療法的効果-いわゆる「癒やし」効果によって、ストレスを緩和し、人の心身の健康を図ろうとするものです。植物や、植物を用いてつくり出す空間である緑地に、そうした効果があることは、昔から経験的には知られていました。しかし、近年は医学的、科学的な観点から検証されるようになったことから、「癒やし」だけでなく、代替医療や予防医療といった医学の分野でも注目されるようになりました。
ここでは、様々な実験により、これまでに明らかになった園芸療法の効果や、その効果を上手く家庭生活に取り入れる具体的な方法などについて紹介していきます。

体を調子よく保つ調整システム

私たちの体は、環境の変化に常にさらされています。こうした変化に対抗して体の状態を一定に保って生命を維持する性質を「恒常性」といいます。
この恒常性を維持するのに重要な働きをしているのが、「神経系」「内分泌系」「免疫系」の3つの調整システム(下図参照)です。
この3つのシステムが相互にバランスよく働いているとき、私たちは“体調がいい”と感じます。ところが、生活環境の変化や、仕事、人間関係などでストレスを感じたとき、3つのシステムは途端にバランスをくずしてしまいます。その状態が長く続くと体調不良を感じ、ときには病気になってしまうこともあります。

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植物が心と体のバランスを整える仕組み

3つの調整システムがバランスをくずし、体調不良や病気になったときは、医療機関で治療を受ける必要がありますが、このバランスをくずさないように整える効果を発揮するのが植物です。植物を五感で感じることにより、調整システム(恒常性)にかかるストレスを緩和するのです(下図参照)。
植物は眺めるだけでも癒しを与えてくれますが、風にそよぐ様子やこすれる葉音を見たり聞いたりすることでも心地よさを感じます(視覚と聴覚)。人間の脳はこの“ゆらぎ”を見聞きすると、幸福感を感じるドーパミンというホルモンや、リラックスしたときに発生するα波を発することが知られています。
植物が発する香りは、本能や感情にダイレクトに働きかけて、体に影響を与えます(嗅覚)。また、例えば栽培しているハーブなどをお茶や調味料として味わえば、甘みや苦み、酸味が脳を刺激します(味覚)。さらに、花や新芽に手で触れると、皮膚にある無数のセンサーでそのやわらかさやみずみずしさを感じ取り、脳を刺激します(触覚)。
このように、植物と関わり、ストレスを緩和することで、恒常性のバランスを取り戻し、体調を元の正常な状態に戻すことができるのです。「園芸」は正に植物を五感で感じる活動であることから、「園芸療法」が人の心身に良いことが理解できるかと思います。

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監修 岩崎 寛(いわさき ゆたか)

京都市生まれ。京都府立大学農学部を卒業後、岡山大学大学院において博士号取得。
姫路工業大学、兵庫県立淡路景観園芸学校教員を経て2005年より千葉大学園芸学部に勤務。
現在、園芸学研究科環境健康学領域長。
2012年より千葉大学看護学研究科災害看護学GL養成PGの教員も兼務。専門は緑地福祉学、環境健康学。

園芸療法や公園セラピーなど「緑の療法的効果」に関する研究と、それらを実践する場である病院などの「医療福祉機関における緑のあり方」など、人と植物とのより良い関係について、緑地や植物からの視点だけでなく、医学、薬学、看護学など学際的な視点から研究を進めている。専門認定登録園芸療法士(日本園芸療法学会)、気候療法士(ドイツ)などの資格を持ち、日本ガーデンセラピー協会顧問、日本園芸療法学会理事、日本緑化工学会理事などをつとめている。

園芸療法とはについてご紹介しています。
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