身近な公園の緑の効用〜公園の芝生とラベンダー畑のストレス緩和作用

監修 岩崎 寛

公園の樹木(クスノキ)からも揮発成分(フィトンチッド)が放出され、森林で行う森林浴と同様、ストレスを緩和する効果があることがわかり、公園が人の健康に寄与する場として認知されてきました。公園には樹木以外にもさまざまな植物が植栽されていますが、そうした植物にはストレスを緩和する効果はないのでしょうか。もしあれば、ますます可能性が広がります。公園ではふつうに見られる芝生と、そのアロマオイルに精神を落ち着ける作用があることで知られるハーブのラベンダー畑(群植花壇)で調べてみました。

実験方法

芝生(50㎡×60㎡)と開花中のラベンダー畑(50㎡×120㎡)の中央部に椅子を置き、そこに5分間座ってもらい、安静状態の血圧(最高血圧と最低血圧)、心拍数、唾液アミラーゼ濃度を測定しました。血圧の上昇は交感神経を刺激することから緊張や興奮につながり、降下は副交感神経を刺激することから落ち着いた状態につながります。また唾液アミラーゼは、ストレスホルモンである唾液コルチゾールと同様、濃度の減少がストレスの減少を示すとされています。 芝生とラベンダー畑は同じ公園内にあり、植えてある植物以外の環境条件は同じです。また、周囲は樹木で囲まれ、騒音のない静かな環境です。

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実験結果

・血圧と脈拍
高血圧、正常、低血圧の3グループ※に分けて血圧の結果を見ると、芝生、ラベンダー畑ともに、高血圧の人は正常、低血圧の人に比べ最高血圧が大きく下がりました(下表参照)。特にラベンダー畑では、最高血圧が30 mmHgも下がりました。最低血圧でも、高血圧の人はラベンダー畑においては低下が見られました。ところが、低血圧の人は芝生、ラベンダー畑ともに血圧が下がることはなく、逆にわずかに上がる傾向が見られました。
脈拍もまた、芝生、ラベンダー畑ともに、高血圧の人は正常、低血圧の人に比べ明らかに下がっています。
これらの結果から、芝生、ラベンダー畑ともに、高血圧の人に対しては血圧、脈拍ともに下げる効果があること、低血圧の人に対しては血圧、脈拍を維持、または上げる効果があることが示唆されました。この結果は非常に重要です。なぜなら、すべての人の血圧や脈拍を「下げる働きだけ」であるならば、公園の芝生やラベンダー畑は低血圧の人にとってはマイナスの効果をもたらす場所になってしまい、行かない方が良いことになりますし、家族揃って公園に行くこともできなくなります。しかし、今回の結果から、芝生やラベンダー畑での休憩は、どのような血圧の人にとっても、正常値に近づける働きがあることがわかりました。なので、家族みんなで利用しても健康効果が期待できるのです。
※実験地に隣接する屋内休憩場所において、安静時に測定した血圧により分類した。高血圧は最低血圧130以上、最低血圧90以上、正常は同100〜130、60〜90、低血圧は同100以下、60以下(単位はmmHg)

芝生地およびラベンダー畑における血圧と脈拍の変化

芝生地 ラベンダー畑
高血圧G 正常値G 低血圧G 高血圧G 正常値G 低血圧G
被験者数 4 6 4 4 6 4
最高血圧(mmHg)の変化 -15.0 ± 0 +4.0 -30.0 -3.0 +5.0
最低血圧(mmHg)の変化 -1.0 +0.5 +0.8 -11.0 -1.0 +1.5
脈拍(拍/分)の変化 -7.0 -2.0 +2.0 -10.0 +2.0 +6.0

・唾液アミラーゼ濃度
安静時の唾液アミラーゼの濃度により、以下の3つのグループに分けて分析をしました。
低濃度(0〜30kU/L)=ストレスがあまりない 。
中濃度(31〜45)=ストレスがややある。
高濃度(46〜60)=ストレスがある。
血圧や脈拍とは異なり、唾液アミラーゼ濃度の変化は芝生とラベンダー畑の間で差が見られました。芝生では、唾液アミラーゼ濃度が低下する傾向が見られ、高濃度、中濃度のグループの場合はその傾向が顕著でした。一方、ラベンダー畑では、高濃度のグループは芝生と同様に、濃度が低下する傾向が見られましたが、中濃度のグループではあまり変化が見られませんでした。低濃度のグループではやや増加する傾向が見られましたが、増加後の値が30 kU/Lを超えた人はおらず、ストレスが増したとは言い切れません。
こうしたことから、芝生やラベンダー畑は、高ストレス状態の人に対し、ストレスを軽減する効果があることが示唆されました。

唾液アミラーゼ濃度の変化

芝生地 ラベンダー畑
高濃度 中濃度 低濃度 高濃度 中濃度 低濃度
唾液アミラーゼ濃度(kU/L) -10 -10 -5 -11 -1 12

得られる効果によって公園の緑を使い分けよう

実験結果から、芝生やラベンダー畑には、交感神経や副交感神経に作用して落ち着いた状態にする効果があり、さらにその効果は血圧の高い人ほど効果があることがわかりました。また、内分泌系(ホルモンなど)に作用して、ストレスを緩和する効果があるといえることもわかりました。
この実験ではこのような生理的な効果だけでなく、心理的効果である印象評価についてもSD法という方法で調べました。その結果、芝生は「大人しい、落ち着いた」という印象を持ち、ラベンダー畑は「刺激的な、興味深い」という印象を持つことがわかりました。このように、生理的な効果では芝生もラベンダー畑も同じですが、心理的な効果では印象が異なることから、例えば芝生は休日にゆったり寛ぐ公園といった「休息」の場に、ラベンダー畑はオフィス街のポケットパークのような短時間での「気分転換」の場に向いているといえるでしょう。

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参考文献
岩崎 寛,山本 聡,石井麻有子,渡邊幹夫(2007)都市公園内の芝生地およびラベンダー畑が保有する生理・心理的効果に関する研究,日本緑化工学会誌 33 (1), 116-121.
岩崎 寛(2015)人の健康に寄与する場としての都市公園,都市公園210, 6-9.

監修 岩崎 寛(いわさき ゆたか)

京都市生まれ。京都府立大学農学部を卒業後、岡山大学大学院において博士号取得。
姫路工業大学、兵庫県立淡路景観園芸学校教員を経て2005年より千葉大学園芸学部に勤務。
現在、園芸学研究科環境健康学領域長。
2012年より千葉大学看護学研究科災害看護学GL養成PGの教員も兼務。専門は緑地福祉学、環境健康学。

園芸療法や公園セラピーなど「緑の療法的効果」に関する研究と、それらを実践する場である病院などの「医療福祉機関における緑のあり方」など、人と植物とのより良い関係について、緑地や植物からの視点だけでなく、医学、薬学、看護学など学際的な視点から研究を進めている。専門認定登録園芸療法士(日本園芸療法学会)、気候療法士(ドイツ)などの資格を持ち、日本ガーデンセラピー協会顧問、日本園芸療法学会理事、日本緑化工学会理事などをつとめている。

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