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準備と植え付け|西洋芝(ケンタッキーブルーグラス)の育て方

監修:株式会社那須ナーセリー 武井和久

西洋芝(ケンタッキーブルーグラス)を育てるための準備と植えつけの方法をご紹介します。

西洋芝(ケンタッキーブルーグラス)写真

日本に自生する芝を日本芝、海外から導入された芝を西洋芝(洋芝)といいます。日本芝は全て暖地型ですが、西洋芝には寒地型のものと暖地型のものがあり、ケンタッキーブルーグラスは寒地型の西洋芝に属します。ちなみに、暖地型の西洋芝としてはバミューダグラスなどがあります。 ケンタッキーブルーグラスの学名はPoa pratensis L.、和名はナガハグサです。日本には明治期に導入され、芝草としてだけでなく牧

使用するもの

  • 床土用土(土、砂、土壌改良材など)
  • 床土を耕耘し、平らに均すための道具(スコップ、クワ、レーキ、トンボなど)
  • 肥料(元肥を入れる場合)
  • ケンタッキーブルーグラスの種子またはソッド
  • こうがい板(張り芝をするときの凹凸微調整用)
  • 目土(砂、芝生専用の用土など)
  • 目土(目砂)をまき、すり込むための道具(スコップ、トンボ、竹ぼうきなど)
  • 鎮圧(転圧)道具(踏み板、ローラーなど)
  • 水やり道具(スプリンクラー、散水ホースなど)

準備

 

 

植えつけ方

●種まきの時期

種まきの時期については、張り芝の時期よりも慎重に判断する必要があります。というのも、ケンタッキーブルーグラスは発芽や初期成長が遅く、芝生が仕上がるまでに多くの時間が必要だからです。

寒冷地ならば、単純に気温(厳密には地温)だけで判断できますし、暖地であれば、そもそも夏越しが不可能なので、単に「いつ播けば最も長く緑の芝生を楽しめるか」を考えるだけです。厄介なのは夏越しの成否が読めない温暖地です。温暖地では夏越しの可能性を高めることが優先されるので、「いつ頃種を播けば、よい状態で夏を迎えられるか」を第一に考えなくてはなりません。

ケンタッキーブルーグラスの発芽に適した気温は16~27℃とされています。したがって、寒冷地では「初夏から夏」が適期となりますが、冬の訪れの早さを考えるとできるだけ早く芝生を完成させたいので、日最低気温が16℃を超えた頃が一番の適期といえそうです。暖地は芝張り同様、秋以外に適期は考えられません。秋らしい陽気となって日最高気温が27℃を下回るようになれば大丈夫です。

難しいのはやはり温暖地で、温度条件だけを見れば春と秋の年2回、適期があるように思えますが、種まきでは芝生が完成するまでに長い時間がかかるので、春の施工については芝張り以上に慎重になる必要があります。やはり夏枯れのリスクを考えれば、温暖地では「秋」だけを適期と考えるべきでしょう。よって、温暖地においては、秋に入って気温が下がり、日最高気温が27℃を下回る頃が種まきの適期となります。

 

●種まき

種まきの前には必ず床土の整地を行います。これを怠ると、あとあとまで芝生の凸凹に悩まされます。

地域の気象条件(夏越しの難易度)や用途に合わせて床土を準備し、表面をレーキなどで平らに均しますが、このとき、わずかに傾斜をつけておくのがポイントです。大雨のときなどに浸透しきれない水を表面の傾斜によって芝生外へ排水(表面排水)するためです。

ケンタッキーブルーグラスの播種量は平米当たり15~20gが目安ですが、密度の高い芝生を望むならばもう少し多くてもよいでしょう。ただ、均一に播いたつもりでも発芽にはたいていバラツキが生じるものです。したがって、密度の揃った芝生に仕上げるならば、初めから多めに播くよりも、後で発芽の少ない箇所に追播することをおすすめします。

播種をした後は、薄く目土をまいてから種子と床土が密着するように鎮圧(平らな板などを敷いてその上から踏み固める)し、たっぷりと水やりを行います。このとき、種子が流れたり浮いたりしないよう水圧や水量に注意し、じっくりと時間をかけて水を浸透させます。その後、発芽するまではこまめに水やりを行い、種子が乾燥しないよう適度な土壌水分を保ちます。なお、ケンタッキーブルーグラスの発芽には適度な温度と水分だけでなく光も必要なので、目土はくれぐれもまき過ぎないようにしてください。もし発芽するまでこまめに散水ができるのであれば、目土入れは省略してもよいでしょう。

ケンタッキーブルーグラスは発芽が遅く、地温が低いうちは発芽まで2~3週間程度、地温が上がっても10日程度はかかります。また、発芽後の初期成長もゆっくりなので、ケンタッキーブルーグラスを播種する場合には気長に、根気強く付き合うことが大切です。発芽したあとも根がある程度伸びるまでは乾燥で枯れないよう注意します。床土が乾きはじめたらすぐに水やりを行いましょう。

 

●植え付け(芝張り)の時期

芝を張る時期は、基本的にケンタッキーブルーグラスが成長している時期になります。ただし、ケンタッキーブルーグラスの場合には夏の暑さに弱いことや、冬の寒さで成長が止まることから、夏と冬の施工はおすすめできません。気象条件を考えれば、寒冷地では夏でも可能でしょうし、暖地であれば冬でも可能だと思いますが、おすすめはやはり、気温が生育適温となる春と秋です。とくに夏越しが課題となる温暖地においては、秋の施工をおすすめします。春の施工では根づいた頃に梅雨を迎えることになり、夏越しに向けての十分な準備ができません。秋の施工であれば万全の状態で夏越しに挑戦できるので、温暖地においては秋こそが芝張りの適期だといえるでしょう。

夏越しが困難な暖地でも適期はやはり秋です。暖地では春に張っても半年もせずに夏枯れしてしまうことになり、短期間しか芝生を楽しむことができません。暖地で寒地型西洋芝を育てることの魅力は冬でも美しい緑の芝生を楽しめることにあるので、涼しくなる初秋に芝を張り、秋、冬、春と濃緑色の美しい芝生を楽しみましょう。また、夏越しを考えなければとくに床土にこだわる必要もなく、管理もさほど難しくもありません。毎年、秋に張り替えるのでそのぶん費用は嵩みますが、一年生の草花のように芝生を楽しむ、そんな新しい芝生とのつきあい方があってもよいのではないでしょうか。

一方、寒冷地の場合は秋が短いこともあり、春の方が適期だといえます。秋の施工では、十分に根づかないまま冬を迎えることにもなりかねず、寒さに強いケンタッキーブルーグラスであってもうまく冬を越せるかどうかわかりません。また、夏が涼しいとはいっても夏日もあれば、真夏日もあるはずです。寒冷地だからと油断せずに、春の生育期を待って施工することを心がけましょう。

 

植え付け(芝張り)

種まきと同様、地域の気象条件(夏越しの難易度)や用途に合わせて慎重に床土の仕様を決め、準備します。床土の表面をレーキなどで平らに均しますが、このとき、地面の高さよりもソッドの厚み分だけ低くしておきます。また、表面排水のことも考えて、一定方向にわずかな傾斜をつけておきます。

整地が終わったら、ケンタッキーブルーグラスのソッド(切り芝)を広げ、端から順に張って行きます。張っていく方向は傾斜に対して直角となる方向で、ソッドの向きも長辺が傾斜に対して直角となる向きとします。目地を開けない「べた張り」が基本なので、ソッドの短辺どうしがぴったりと合うように並べます。

いざ張ってみると床土の小さな凹凸に気づくものです。そのときは一旦ソッドをはがして「こうがい板」などで凸部の土を削り、凹部には土を足して均します。

端まで行ったら1列目の完成です。外周とに多少のすき間ができても構いません。すき間をソッドで埋めるのは最後の仕上げ作業とします。

2列目のソッドは1列目ソッドと互い違いになるよう長辺の半分の幅だけずらして張るようにします。そうすることでソッドが安定してずれにくくなります。あとは1列目とおなじ要領で張って行きます。最後の列まで張り終えたら、仕上げとして、ソッドを包丁などで成形しながら、外周との全てのすき間にはめ込んで行きます。

ソッドを張り終えたら、次は床土とソッドが密着するよう鎮圧(転圧)します。播種と同様、平らな板などを敷き、その上から踏むか、ローラーがあればそれを使って転圧します。もしその際に少し低い部分を見つけたら、ソッドを剥がして床土を補充し、高さを合わせます。

鎮圧(転圧)が済んだら次は目土入れです。床土が余っていればそれを使いますが、雑草のタネが混入しているとすぐに雑草だらけになってしまいます。雑草が心配される場合には、川砂や焼き砂などの雑草のタネを含まない砂を使用してください。

スコップなどで目土を芝生上にできるだけ均一に散布し、竹ぼうきなどでやさしく丁寧にすり込みます。その後、たっぷりと水やりを行って目土を落ち着かせるとともに、水をソッドの下の床土深くまで浸透させます。最後にソッドの端をめくり、床土まで十分に水が浸透したかを確認します。もし湿っているのが表層だけならば、もう一度、水やりを行います。

張った芝が根付くまでには適期でも1週間~10日ほどはかかります。それまではこまめに芝生を観察し、適宜、水やりを行います。また、ときおりソッドの端を持ち上げてみて、根づき具合を確認します。ソッドの端が持ち上がらなくなれば、無事、芝生の完成です。

 
監修:芝生研究家  武井和久

1963年栃木県生まれ。千葉大学大学院園芸学研究科修士課程修了。 1989年より千葉大学園芸学部助手。園芸別科(造園・樹木専攻)担当の傍ら芝草研究に従事。 1993年より株式会社那須ナーセリーに入社。寒地型芝草研究所研究員、後に主任研究員。2000年よりウェブサイトの制作・運営に携わり、芝生関連情報の公開およびサポートに努める。2006年より情報管理課長。現在、社内のIT全般を担当しつつ、芝生調査や教育研修に当たる。 2016年3月、家の光協会より「一年中美しい 家庭で楽しむ芝生づくり12か月」を上梓。

西洋芝(ケンタッキーブルーグラス)の育て方のページです。
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