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12月-3. エバーグリーンのくす玉

今、生花店で探すもの

 秋のガーデニングシーズンは、スプリンターなこの季節と競うような速さで、今年も駆け抜けて行ってしまいました。パンジー&ビオラやガーデンシクラメンなどの花苗が落ち着いたかなと思ったら、次の週にはもう鉢花たちが華やかな彩りに変わっていて、園芸店の装飾は静かにクリスマスへと向かっていたのでした。
 11月中旬、「三連休はどうしてるの?」と友達に尋ねたら「クリスマス三昧」とのリプライ。そう、ディスプレイを仕事とするその友達は、今がまさに稼ぎどき。つまり街角の景色がきっとガラッと変わっているだろうと期待に胸を膨らませながら、みちくさに出かけます。

 キラキラ華やかな生花店のクリスマス装飾は、その年のトレンドを知る窓口としてもとても便利。駅やデパートの生花店は、通りすがりや待ち合わせの合間といった、たとえ短い時間でも必ず目を配るようにしています。何せそうした小さなショップほど、動きがとても早いから。めくるめくディスプレイの変容は、風景そのものがクリスマス向けのアドベントカレンダーのよう。そこにポインセチアが加わり始めたら、いよいよクリスマスシーズンも本番です。斑入りや豪華な八重咲きに加え、近年は「プリンセチア」シリーズなど、花つきがよくこぢんまりとまとまる品種が登場し、やっぱり今年もポインセチアは見逃せないなと改めて思うのでした。
 同時に私が心待ちにしているのは、この時期に切り花で出回るヤドリギ(宿り木)です。「宿り木」の名前の通り彼らは半寄生植物で、変わった生活環を持っています。もしも切り花で入手できたら、その透明でプルプルの果実を潰してみましょう。中からタネが出てきますが、ベタベタの粘液に包まれています。自然界でこの果実は野鳥に食べられ、糞として排出されて広まるのですが、うまく樹上に落ちることができればラッキー。粘液に助けられて見ごと枝に貼りつくことができたヤドリギのタネだけが、そこで発芽して樹皮を突き破り根を下ろすことができるのです。必ず枝が二股に分かれて伸びていくその姿は幾何学的で、見れば見るほど不思議な魅力があります。これを人工的、つまり園芸的に栽培しようと思っても、ほぼ無理といわれています。私も出来心で幾度かチャレンジしましたが、発芽させることができませんでした。
 こんな変わった生活環を持つヤドリギがなぜクリスマスの時期に店頭に並ぶのかというと、ケルト神話に基づくものだそう。冬に樹木が落葉すると梢に姿を現すヤドリギの姿はなんとなく神がかっているし、エバーグリーンの姿はツリーやリースと同じ永遠の命を彷彿させるため、クリスマス装飾に利用されてきました。シンプルに束ねてスワッグ(壁飾り)に仕立て、魔除けを兼ねたドア飾りにするのが、最もヤドリギらしさを発揮できるスタイルでしょう。

街中ではなかなか出会えない梢のくす玉

 ケルトの世界で扱われているのは西洋ヤドリギですが、日本にもその亜種が自生しています。ケヤキやエノキの枝に寄生することが多いのですが、街中の樹木は管理されて枝をこまめに切られることが多いせいか、はたまた野鳥が少ないからか、なかなかヤドリギを見つけることができません。古い屋敷森や稜線が続く里山などに出かけた折にはできるだけ探すようにしています。みなさんのお近くには、ヤドリギの棲む樹木はありますか?
 前回の「今日もみちくさ」でもちらっと触れた、お気に入りの散歩道にあるヤドリギがどうなったか気になったので、拙文を書き進める途中、またてくてくと出かけてみました。落ち葉を踏みしめながら上ばかり見ながら行ってみると、ありました! はるか高いケヤキの梢で暮らす、まぁるい幸せなそのカタチ。間近で観察することは叶いませんが、なんだか昨冬より大きくなっているように見えました。気のせいかな? でも元気なエバーグリーンのくす玉の生存確認ができたから、私は大満足。この冬も度々、ここを訪れてみようと思います。そうだ、雪の日の姿もぜひ見てみたい。そんなみちくさの欲望にかられる冬のはじまりです。

街中ではなかなか出会えない梢のくす玉
コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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