7月-2.道端菜園
雨の季節の終盤らしく、洗濯物を外干しするのが悩ましい毎日です。そして同じように悩ましいのが、植物への水やり。とくにベランダは屋根があるため半屋外のような状態ですから、斜めに降り込むぐらい強い雨ではないと、ベランダの植物の鉢土がしっかり湿るに至りません。つまり、雨の日は水やりが省けるから楽チン、なんてことはないのです。雨の当たり具合によっては一箇所だけ土が湿っているなんてこともあるので、ひと鉢ずつ、株元の土の湿り具合をチェックしてみましょう。
そんな具合で、晴れ間が続く期間より、水やりの作業に気配りが求められることがあります。時間はかかるけれど、ひと鉢ずつ丁寧に植物のご機嫌伺いができる利点もあるというわけです。
では、あちこちの植物たちのご機嫌はどうだろう。自宅を飛び出して、今日も「みちくさ」へ。
小さなプランターで育つ野菜
私が暮らす街は住宅密集地で、庭があるお宅はそう多くはありません。ですから道路からたった一歩の玄関先にコンテナを置いたり、軒先からこれまた一歩だけの細長い土の部分に何かを植えたりして、みなさんそれぞれがミニマムにガーデニングを楽しんでいます。
玄関先に並べたプランターに、すくすく伸びる植物を見つけました。近寄ってみるとそれはおなじみミニトマトで、すでに果実が色づき始めていました。植えられている容器は、なんと標準サイズよりも小さなプランター。家の敷地と道路との境界をくっきり際立たせるその植物体の緑色は、イキイキとしていて、世話をしている方が日々丹精されているのがよくわかりました。
道端菜園のコツあれこれ
たとえば前述の水やり。容器が小さく土の量が少なければ、トマトが育てば育つほど、土の乾きはスピードアップします。乾き気味を好むトマトであっても、葉がだらりと垂れるほど乾けば、その後の生育に影響を及ぼしますから、過度に水切れさせるわけにはいきません。置き場所や雨の降り方を考慮した、土の乾き具合チェックをお忘れなく。さらに、土が少ないと肥料分をたっぷり蓄えておくこともできませんから、肥料切れさせないように様子を見ながら、菜園よりもいっそうこまめな追肥が欠かせません。液体肥料を併用するのもよいでしょう。
また、小さな容器では根が張れる範囲も限られていて、地上部は、無限に根を張れる菜園のようには大きく育たないでしょう。それでも土のない都会の住宅地にあれば、ミニトマトのプランター栽培は街中菜園の風情です。
果実が早々に、都会のいたずら者にイタダキマスされないように願うばかり。都会のいたずら者?もちろん、ムクドリやカラスなどの野鳥やネズミなど。近年はこの界隈にはハクビシンも出没していて、トマトや果物類が大好物の彼らにとって、街中菜園は恰好のレストランというわけです。そのおかげでときおり、ネットで覆われたプランターも見かけます。見ばえはイマイチですが、こうしたトラブルや工夫は都市部でも農村部でも変わらないのですね。
出先への足を進めながらよく見てみると、三畳ほどの庭にしっかりと支柱を組んで育つキュウリ、保育園の窓を覆うゴーヤーの緑のカーテン、菊栽培に用いられる大きな菊鉢を利用して、大きな葉を広げていたナス。夏野菜たちはすでに収穫もされていて、ナスならそろそろ切り戻しの時期を迎えます。
今日もみちくさすればするほど、街中にひっそりと、もしくは小さくも堂々とした体裁で、街中菜園が見つかります。月末には夏休み。そろそろ梅雨も明けるかな。終了式を終えた子どもたちが、ミニトマトの鉢を抱えて帰宅する日も、そう遠くないですね。
- コラム|ウチダ トモコ
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園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。