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虫が多い夏が終わり、冬になったのにバラや柑橘類、観葉植物にカイガラムシが付いていて、お困りの方もいるのではないでしょうか。
「冬は害虫が少ないはず」と思っていたのに被害が出ると、不安になるものです。しかし、冬のうちに正しい対策を行なえば、春以降の成長期に植物を健やかに育てることが可能です。
本記事では「冬のカイガラムシ対策」をテーマに、発生原因から駆除方法、予防のポイントまで詳しく解説します。バラや観葉植物を長く楽しみたい方や、柑橘類や果樹の被害を防ぎたい方は、ぜひ参考にしてください。

まずは、カイガラムシの特徴や種類、発生時期について詳しく解説します。
カイガラムシは、セミやアブラムシと同じカメムシ目に属する昆虫で、体長は2~10mmほどです。多くの種類では雌の成虫が植物の枝や茎、葉に寄生し、細長い口吻(こうふん)を突き刺して養分を吸収することで栄養を得ます。
成虫は一生涯同じ場所に固着するタイプもあれば、足があり自由に動きまわるタイプもあるなどさまざまですが、いずれも体の表面が殻状やロウ状の物質に覆われています。これらの物質がバリアとなるため、一般的な殺虫剤が効きにくいのが特徴です。
さらに、カイガラムシの排泄物にはカビが繁殖しやすく、そのカビが枝や茎、葉の表面を黒く覆う「すす病」を引き起こすことも少なくありません。すす病が広がると光合成が妨げられ、植物は十分な栄養を作れなくなり、次第に弱ってしまいます。
こうした直接的な吸汁被害と二次的な病害の両面から、カイガラムシは園芸植物や果樹にとって非常に厄介な害虫です。
カイガラムシは、日本国内だけでも400種類以上いる非常に多様な昆虫です。ここでは、身近に見られるおもな種類と特徴をご紹介します。
| 種類 | 特徴 | 被害の出やすい植物 |
| ルビーロウムシ | ・厚いロウで覆われているタイプで、成虫の蝋質物は長さ4~5mm ・排泄物によるすす病が発生しやすい |
カキ、カンキツ類、ゲッケイジュなど |
| ヤノネカイガラムシ | ・堅い介殻で覆われており、介殻と虫体が分かれているタイプ ・成虫の介殻は長さ約3mm ・特にミカン類で被害が出やすい |
カラタチ・カンキツ類のみ |
| クワシロカイガラムシ | ・堅い介殻で覆われており、介殻と虫体が分かれているタイプ ・成虫の介殻は長さ約2mm強 ・多食性で多くの樹木や植物に寄生 |
カキ、ケヤキ、ヤナギ類など |
| コナカイガラムシ類 | ・白いコナを被っているタイプ ・「ミカンコナカイガラムシ」「クワコナカイガラムシ」「フジコナカイガラムシ」などの種類があり、成虫は体長約3~4mm |
カンキツ類、イチョウ、サクラなど |
カイガラムシが産卵・孵化するのは5月~7月頃が一般的で、9月頃には成虫になることが多いです。ただし、種類によって発生サイクルが異なり、なかには年に複数回発生するものも存在します。
例えば、ヤノネカイガラムシの発生回数は年に2~3回で、1回目が5月~6月、2回目が7月~9月、3回目は9~11月です。このように種類ごとに発生時期が異なるため、駆除や予防を行なう際には対象となるカイガラムシの種類を把握し、適切なタイミングで対策を講じる必要があります。
カイガラムシの詳細については以下のページも参考にしてください。
カイガラムシは環境や条件によって冬でも発生することがあります。ここでは、そのおもな原因について見ていきましょう。
カイガラムシの幼虫や小さな成虫は非常に目立ちにくく、気付かないうちに衣服や持ち物に付着し、自宅に持ち込んでしまうケースがあります。また、新しい植物を迎え入れる際や、屋外から植物を室内に移動させる際などに室内へ侵入することもあるため、葉の裏や枝の付け根などをチェックし、付着がないか確認したうえで室内へ持ち込むことがポイントです。
カイガラムシのなかには羽を持つ種類があるほか、体が小さく軽いため、換気で窓を開けた際に風に乗って室内へ侵入し、植物に付着することがあります。室内で植物を育てている場合は、定期的に観察してカイガラムシを早期に発見し、被害を防ぐことが大切です。
カイガラムシのなかには、雌だけで単為生殖を行ない、卵を産むことができる種類も存在します。そのため、少数が侵入しただけでも短期間で数が増え、植物全体に広がってしまう可能性がある点に注意が必要です。
また、冬の屋外では多くのカイガラムシが冬眠や活動低下を示しますが、暖かい室内環境では冬でも活動を続け、繁殖することがあります。この場合も、葉の裏や枝の付け根を定期的に観察し、早期に発見して駆除することが被害を防ぐための重要なポイントです。
続いて、冬にカイガラムシを発見した場合の駆除方法を卵・幼虫・成虫に分けて解説します。
カイガラムシの卵を見つけた場合は、卵が付着している葉や枝を切り取るのが最も確実な方法です。手でこそぎ落とすことも可能ですが、卵はべとべとして不快なうえ、アレルギーを引き起こす恐れもあるため、軍手や手袋を着用して作業するとよいでしょう。
効率的に取り除くには、ヘラや使い古した歯ブラシを利用するのがおすすめです。なお、卵は非常に小さいため、幼虫になってから駆除する方法も有効とされています。
カイガラムシの幼虫は、まだ殻やロウ物質に覆われていないため、薬剤が効きやすい時期です。駆除のタイミングは卵から孵化した直後が最適で、散布する際は葉の裏表両面に薬剤がしっかり付着するよう注意しましょう。
月に2〜3回程度繰り返し散布することで、より高い効果が期待できます。
カイガラムシの成虫は硬い殻やロウ物質に覆われているため、薬剤が効きにくい傾向があります。そのため、手で取り除くか、数が多い場合は葉や枝ごと剪定して駆除する方法が効果的です。
また、KINCHO園芸の「マシン油乳剤(キング95マシン)」を使用する方法もおすすめです。この薬剤は果樹に付くカイガラムシやハダニをマシン油の膜で物理的に覆い、窒息させて退治するタイプの殺虫剤です。冬期に散布することで、カイガラムシの越冬成虫やハダニの越冬卵にも効果を発揮します。

カイガラムシによる被害を防ぐためには、春の発生を待つのではなく、冬のうちから予防を徹底する必要があります。特に、以下でご紹介する「剪定」「薬剤散布」「日常の観察」の3つを柱とした対策が効果的です。
剪定は、枝葉が混み合って害虫が隠れやすい環境を改善するために欠かせません。混み合った枝や葉を定期的に剪定して風通しを良くし、光を取り入れることでカイガラムシの発生を抑える効果が期待できます。
カイガラムシの休眠期に薬剤散布を行なうことで、成虫や卵をまとめて防除でき、春の大量発生を大幅に抑えることができます。おすすめの薬剤は以下のとおりです。
・カイガラムシエアゾール
庭木やバラ、観葉植物に付着したカイガラムシを効果的に退治できる薬剤です。2種類の成分が配合されており、散布すると枝に浸透して約1ヵ月間持続的に殺虫効果を発揮します。
さらに、夏期の発生時期だけでなく、冬期の越冬成虫にも有効である点が大きな特徴です。ジェット噴射タイプであることから高い場所にある枝葉にも薬剤がしっかりと届き、広範囲の植物を効率的に守ることができます。また薬剤が浸透しにくくなった成虫にも効果を発揮(特許処方)
・ベニカXネクストスプレー
カイガラムシの防除だけでなく、複数の害虫や病気を同時に抑えたい場面で重宝するスプレータイプの薬剤です。害虫に素早く効く速効性を持ち、例えばアブラムシに対しては約1ヵ月持続する効果があります。
薬剤抵抗性を持つ害虫にも効果を発揮するよう設計されており、チョウ目の成虫や老齢幼虫といった駆除が難しい害虫も対応可能です。
・ベニカXガード粒剤
地中からカイガラムシやその他の害虫を抑えることができる、土壌処理型の薬剤です。種まきや植付けの際に土に混ぜ込む、あるいは株もとにばらまくだけで効果を発揮する点が特徴で、手間をかけずに長期間の予防効果を得られます。
・ベニカVフレッシュスプレー
幅広い植物を1つの薬剤でまとめて管理したい人に適した汎用性の高いスプレーです。野菜、果樹、花、庭木などの多様な植物に使用でき、カイガラムシも対象害虫の一つとなっています。
害虫に素早く効く速効性を持ち、例えばアブラムシに対しては約1ヵ月間効果が持続します。
カイガラムシの予防には、定期的な観察も欠かせません。葉の裏や枝の付け根を定期的にチェックし、カイガラムシの発生を早期に発見することで、大きな被害に発展する前に駆除することができます。少数のうちに対応すれば、植物へのダメージを最小限に抑えられます。
冬の時期でも、カイガラムシは衣服や風で持ち込まれたり、室内で繁殖したりして発生します。卵・幼虫・成虫それぞれに適した駆除方法があり、特に幼虫期は薬剤が効きやすい重要なタイミングです。
カイガラムシによる被害を防ぐためには、春の発生を待つのではなく、冬のうちから予防を始めることが大切です。剪定による環境改善、休眠期の薬剤散布、そして定期的な観察を徹底することで被害を大幅に抑えられ、春以降の美しい花や果実を安心して楽しめるでしょう。
冬のカイガラムシ対策|発生原因から駆除・予防法まで徹底解説園芸知っトク情報のページです。
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