メインコンテンツに
移動する

殺菌剤の作用性とローテーション散布の重要性

病気の原因は何ですか?

植物の病気は、空気中や土の中などに日常的に存在する病原体が原因で発生します。植物の生育環境が病原体の繁殖に適した条件だったり、近くにある他の植物が宿主となって媒介したりすると発生しやすくなります。害虫と異なり植物に病気を起こす病原体は肉眼では観察できないため、葉や茎にあらわれた被害症状を見て病名や病原体を判断することになります。また、一見すると病気のように見える症状でも病原体以外の要因(環境や気象、生理障害など)によって起きる場合もあります。

病原体の種類

1.カビ(糸状菌)が原因で起きる病気(うどんこ病、黒星病など)

植物の病気、特に家庭園芸で問題になる病気の大多数はカビによって起きます。土壌や空気中に胞子を拡散して広がり、植物体を通して増殖します。被害症状は葉枯れ、斑点、斑紋などの変色、肥大、こぶ、萎縮などの変形、腐敗するなど病原体の種類によって様々です。病名も灰色かび病、うどんこ病、黒星病、立枯病、菌核病、白絹病など多様です。以下、2~4が原因で起こる病気を含めて、病原体の判断がつきにくい場合は、発生頻度が高いカビが原因と考えて一時対応すると良いでしょう。

2.バクテリア(細菌)が原因で起きる病気

細菌によって起こる病気の被害症状は、斑点、こぶ、立枯れ、腐敗などがあり、初期のうちは上記のカビの病気と簡単に区別できないこともあります。軟腐病、根頭がんしゅ病、斑点細菌病、青枯病などの病気があります。

3.ウイルス(バイラス)が原因で起きる病気

ウイルス病、モザイク病などと呼ばれています。被害症状は、濃淡のモザイク状の葉色、斑点、さらに株全体が萎縮したりします。

4.微生物が原因で起きる病気

マイコプラズマ様微生物などによって起きる病気で、萎黄病などがありますが、種類は少ないです。

病気の発生する仕組み(カビ(糸状菌)の場合)

病気の発生する仕組み

殺菌剤にはどんな種類があるのですか?

病原体を退治する殺菌剤を作用性からみますと、次の2つのタイプに分けられます。

予防殺菌剤

多くの殺菌剤(ダコニール1000、オーソサイド水和剤80など)が該当します。
薬剤を散布することにより、植物体を覆って葉の表面に付着している、または飛んできた病原体を退治する薬剤で予防効果に優れます。植物体内に入った病原体に効果はありません。

治療殺菌剤

病気のために変色した部分を元通りにするという意味ではありません。浸透移行性殺虫剤のように強力な移行性はないですが、薬の成分が葉の中に浸透し、既に侵入した病原体まで退治する浸達性の薬剤(ベンレート水和剤、トップジンMゾル、サプロール乳剤など)です。

殺菌剤に耐性のある菌が現れるしくみ

病気の防除に同じ殺菌剤を使い続けると薬剤の効果が低下する場合があると言われますが、どうしてでしょうか。それはヒトの病気と薬の関係とよく似ています。即ち、動物と同じく、病原体の細胞ではしばしば変異が起きていて、たまたま起きた突然変異によって日頃散布している殺菌剤に効かない菌がごくわずか現れます。そこに引き続き同じ種類(作用性)の殺菌剤を散布するとその耐性菌はそのまま生き残ります。そして再び同じ殺菌剤をかけ続けると、耐性菌が徐々に増加していき、最終的にその殺菌剤では効かない菌(薬剤耐性菌)だけになってしまい、「耐性(抵抗性)がついて薬が効かない」ということになります。

殺菌剤に耐性のある菌が現れるしくみ

薬剤耐性菌の出現を回避するためのローテーション散布

薬剤に耐性をつけさせない対策として有効なのがローテーション散布です。輪番散布ともいい、予め作用系統の異なる数種類の殺菌剤を用意し、散布の度に違う系統の薬剤を散布することです。系統の違う殺菌剤を使うことで出現した耐性菌を違う作用で防除し、耐性菌を増やさない散布方法です。一般の農業生産場面では普通に行われている防除方法で、家庭園芸でも応用できます。殺菌剤のラベルには「効果・薬害の注意」の項目で、「連用使用(連続散布)によって薬剤耐性菌が出現し効果の劣る恐れがあるので過度の連用は避け、なるべく作用性の異なる他の薬剤と組み合わせて輪番で使用する」といった注意事項があります。例えばばら愛好家の悩みの種の黒星病は、症状が進むと葉が黄化してほとんどの葉が落ち、光合成が阻害されて樹勢が著しく衰え、その後の開花にも影響する厄介な病気です。黒星病対策には発生時期の5~7月、9~11月の予防に、複数の殺菌剤(できれば3種類以上)を取り揃えて症状の発生前から計画的に散布します。特に梅雨時や秋雨時の多発期は1週間~10日毎のローテーション散布をおすすめします。庭木や野菜、草花の病気対策にもローテーション散布は応用できます。庭木ではサルスベリやハナミズキ、アジサイなど、野菜ではキュウリやカボチャなどのうどんこ病、トマトやジャガイモでは疫病が毎年発生しやすい定番の病気です。これらにも発生前から複数の薬剤を利用して輪番散布して対応できます。

作用性の異なる殺菌剤をローテーションさせて使う

ばらの病害虫対策にシリーズ化されたマイローズシリーズの薬剤は、パッケージに殺菌剤の系統マークがついているので、系統が一目でわかります。ベンレート水和剤にはベンゾイミダゾール系の緑のマーク、サプロール乳剤やマイローズ殺菌スプレーにはEBI剤の赤、そしてベニカXファインスプレー、ベニカXファインエアゾールにはアニリノピリミジン系の青のマークが表示されているので、難しい種類名を覚えなくてもマークの違いで薬剤選択ができ、ローテーション散布の実施に役立ちます。

ばらの専門薬 マイローズシリーズ

作用性の異なる殺菌剤をローテーションさせて使う

殺菌剤の系統と作用性

ローテーション散布は系統の異なる殺菌剤の種類選択から始めます。家庭園芸用に販売されている殺菌剤にはさまざまな商品がありますが、下表はそれぞれの殺菌剤の系統と作用性を表したものです。これらの情報をもとに病気の発生時期前に予め薬剤を選んでおきましょう。その際、散布したい作物にその薬剤が使用できるか(適用があるか)の確認を忘れずに行ってください。なお、ばらは農薬登録上は「花き類・観葉植物」に含まれるので、薬剤に「ばら」での登録がない場合でも「花き類・観葉植物」のグループ登録があれば使用できます。

商品名 成分 殺菌剤の系統 作用性 予防
効果
治療
効果
ばらの
適用
ベニカⅩファインスプレー メパニピリム アニリノピリミジン系 病原体のアミノ酸やタンパク質の合成を阻害
ベニカⅩファインエアゾール メパニピリム アニリノピリミジン系 病原体のアミノ酸やタンパク質の合成を阻害
STサプロール乳剤 トリホリン   EBI剤   病原体の細胞膜成分の合成を阻害する
マイローズ殺菌スプレー ミクロブタニル   EBI剤   病原体の細胞膜成分の合成を阻害する
ベニカⅩスプレー ミクロブタニル   EBI剤   病原体の細胞膜成分の合成を阻害する
パンチョTF顆粒水和剤 トリフルミゾール   EBI剤   病原体の細胞膜成分の合成を阻害する
シフルフェナミド 酸アミド系 病原体細胞のミトコンドリア内の呼吸を阻害する
GFベンレート水和剤   ベノミル ベンゾイミダゾール系 病原体の細胞分裂を阻害する
トップジンM
(ゾル、スプレー)
チオファネートメチル ベンゾイミダゾール系 病原体の細胞分裂を阻害する
モスピラン・トップジンM
スプレー
チオファネートメチル ベンゾイミダゾール系 病原体の細胞分裂を阻害する
GFモストップジンRスプレー チオファネートメチル ベンゾイミダゾール系 病原体の細胞分裂を阻害する
サンケイオーソサイド
水和剤80
キャプタン 有機塩素系 病原体の酵素に作用する
STダコニール1000 TPN 有機塩素系 病原体の酵素に作用する
サンケイエムダイファー
水和剤
マンネブ ジチオカーバメート系 病原体の酵素に作用する
家庭園芸用カリグリーン 炭酸水素カリウム 炭酸水素塩
(天然系成分)
細胞のイオンバランスを崩し、細胞の機能障害を起こす
サンボルドー 塩基性塩化銅 銅殺菌剤(天然成分) 病原体の酵素に作用する
GFワイドヒッター顆粒水和剤  ベンチアバリカルブイソプロピル アミノ酸アミドカーバメート系 病原体の細胞壁の合成を阻害する
TPN 有機塩素系 病原体の酵素に作用する

殺菌剤の作用性とローテーション散布の重要性のページです。
住友化学園芸では、家庭園芸用殺虫剤・殺菌剤・除草剤・肥料のほか、くらしに関連するさまざまな商品を扱っています。

商品の使用に際しては必ず商品の説明をよく読んで、記載内容に従ってお使いください。

その他のコンテンツ