5月-3.花贈り
育てた花を大切な人に
サクラの季節は日本列島を駆けのぼり、あれよあれよという間にバラの季節。バラも2週間早足とのことで、大型連休のプランを、あちこちの花の見どころへと変更しました。みなさんのご自宅の庭やベランダの花たちの様子はいかがでしょうか。
今月の「みちくさ」は、そんなお家の花をクローズアップしてから出かけます。
一気に咲き始めた庭やベランダの花たち。毎朝窓を開けるのが楽しみな季節です。ところでこの花たちは、ご自分、そしてご家族だけで楽しみますか? 大切に大切に育ててきた花。なかにはあれこれ苦心の末に、やっと咲いてくれた花もあることでしょう。だったらなおさらのこと、独り占めしたくなりますよね。
でも、もしも丹精のおかげで予想以上にたくさん咲いてくれた花や、花友だちが憧れている花があったなら、カットして誰かに贈ってみませんか?
せっかく咲かせた花を切るのは、勇気がいることかもしれません。でも、よく知っている人が丹精込めて育てた花を、わざわざその手で切って束ねたブーケのプレゼントなんて、格別です。その想いは、決してお店で買うことはできません。特にバラやクレマチスをはじめとする四季咲き性のもの、次々と咲いてくる花なら、むしろ早めに切った方が次の花が咲きやすくなるものもあります。プレゼント用には、蕾が開きはじめたぐらいの花を選んで、できるだけ茎を長く切るようにします。
花贈りのヒント
切り花の場合、相手に渡すときに萎れてしまわないようにすることが大切です。そのためにも花を切ったら水揚げをしておきましょう。切り花のテキストには、水の中で茎を切り戻す水切りや、お湯に浸ける湯揚げなど、さまざまな水揚げ方法が書かれています。簡単なのは、いったん軽く束ねて新聞紙などの紙できつめに巻き包んで、茎の半分ぐらいの深さの水に2〜3時間浸けておく方法。花がくしゃくしゃになりそうで心配ですが、一気に巻けば意外と大丈夫。束ね直すときにはほとんど戻っているはずです。ただし、ブルースター(オキシペタラム)のように茎の切り口から液汁が出るものは、そのままにすると茎の中の道管が詰まって水が揚がらず、萎れの原因になります。液汁をしっかり洗い流してから水揚げしましょう。
そして、贈った花を少しでも長く楽しんでもらえるよう、切り花用、鉢苗用の活力剤などを添えてプレゼントするのもおすすめ。飾って欲しい、育てて欲しいという想いが、より伝わるのではないでしょうか。
なお、花贈りの際に、花言葉を添えたいという話もよく聞きます。ですが、花言葉には諸説あるものが多く、また、ひとつの花でもポジティブな意味と、説によっては真逆の意味をもつ場合もあり、誤解を生むケースも。
ロマンチックに思える花言葉ですが、ここは、もっと個人的なコメントを添えることで、いっそうプライベートな思いを届けてみませんか。たとえば、育てたハーブのブーケなら、そのハーブをつかうおすすめレシピのカードにしてみたり。また、贈る方と前回お会いしたとき、着ていた服がすてきだったから、そのイメージで束ねてみたなどと伝えてみたり。
水揚げにラッピングが済んだら、贈る花を手に、みちくさしながら出かけましょう。
今年ももうすぐ母の日(2018年は5/13)がやってきます。母の日に限らず、花があふれる時期こそ、花贈りのシーズン。ひと工夫を添えて、自分らしい花贈りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
*注意 苗や種子、枝について品種登録済(出願公表済・出願準備中含む)等の権利品種については、権利者の承諾なしに無断で苗木を増殖、販売をすることはできません。また、花贈りの際は、先様のアレルギーの有無なども考慮する必要があります。病院など、一部には生花の持ち込みを禁止している施設もあります。事前の確認をおすすめします。
- コラム|ウチダ トモコ
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園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。