風景には山や木々、雲などいろいろな要素があり、それぞれに形があります。
それらの形をうまく組み合わせることで写真が視点の定まったものになります。
なかには花畑や田んぼなど単一の要素だけでできている風景もありますが、そんな場合も花や葉の形をパターン化することで新しい景色が生まれます。
梅雨の時期には、アジサイやハナショウブなどたくさんの株が植えられている花をよく目にしますが、
それらの光景も花や葉の形を観察して上手にパターン化することで写真もメリハリのあるものになります。
パターン化のコツは観察すること
ベニバナは、山や空を背景にきれいな花風景が撮れますが、花畑だけを狙うと、同じような花が並び、どこをどう切り取って絵にすればよいか迷うのではないでしょうか。
どれかひとつをピックアップ
たくさんの花の中から、たとえば形の良いもの、背の高いもの、蝶がとまっているものなど、どれか一つを選んで主役にします。背景に他の花をボカすことでたくさん花がある花畑であることもわかり、それらのパターンの中で、メリハリのある画面になります。
視点を変えて葉の形を生かす
ベニバナを真上から見ると葉が星形に広がっているのがわかります。花の円形と葉の星形で面白い模様ができあがりました。花だけではなく葉や茎など特徴的な形を絵の要素に加えてパターン化してみました。
風景の中では、ひとつの花によるパターンだけでなく、他の植物とともに面
白い模様を作っていたり、背景の景色が花を生かすパターンになっていたり
と、いろいろなケースがあります。パターン化で草花を生かす方法をいくつか
ご紹介します。
異質な要素でパターンを強調
このハナショウブは品種別にまとまって植えられていますが、混ざっている場合でもこの写真にあるような隙間や水路、八つ橋など異質なものを入れてアクセントにします。
パターンの中のアクセントとして
逆にパターンの中の異質な要素として花を強調する場合もあります。ここでは、杉林の縦のストライプの中でヤマアジサイがアクセントになっています。シンプルなパターンの背景ほど花が引き立ちます。
広い風景もパターンの組み合わせで
田んぼの脇に植えられたアジサイです。遠くへ続くあぜ道が田んぼに模様を作っています。風景の中で見つけたいろいろな模様を背景として組み合わせると絵画的な花風景の写真になります。
パターン化で別の表情を
ドクダミの上にフトイが倒れて織物のような模様を作っています。フトイの中ではドクダミの花形がかわいらしく映ります。
着物や工芸品に見られる意匠のように、草花のある一面を強調することもパターン化の効果の一つです。
東京の中心に野草が咲き競う隠れた花の名所です。江戸城跡らしい日本庭園にはハナショウブもありますが、雑木林付近には季節ごとの可憐な野の花がいくつも見られます。東京駅に近く入園無料なので、東京にいらした際は、おすすめの撮影スポットです。(休園日あり。写真は初夏の高原を思わせるレンゲツツジ咲く雑木林。4月撮影)
6月に見られるノカンゾウ。他にノリウツギなどの雑木からママコノシリヌグイのような野草まで、様々な花がさりげなく咲いています。
写真家。自然の中の風景写真を様々な媒体に提供するほか、園芸雑誌でも撮影を担当している。