夏になると日差しも強くなり、日中は日向と日陰のコントラストが高すぎて、
写真に収めるには難しい状況が多くなります。
でも、ときによって陰影は何気ない風景にメリハリを与え、写したくないものを隠してくれるので、草花の撮影にも役立ちます。
夏の光が演出する陰影をうまく画面に取り入れて、草花それぞれのいつもとは違う美しさを表現しましょう。
雑然とした日中の野原
高原で姿よく伸びたオミナエシを見つけました。しかし、周辺には雑草が生え、日差しも強く、あまり絵になる光景ではありません。そこで、コントラストを利用してオミナエシだけを望遠レンズで切り取ることにしました。
背景の陰影を利用してオミナエシを際立たせる
オミナエシには直射日光が当たり、背景の林との明暗の差が大きいので、カメラの明るさ調整を暗く設定すると背景は黒くつぶれて、オミナエシの細いラインがくっきりと浮かび上がりました。肉眼では雑然と見える背景も、明暗の差が大きいと写真では一様な黒い画面になります。
強いコントラストは風景全体を同じトーンで表現するには向いていませんが、
草花など対象物を際立たせる効果はあります。早朝から夕暮れまで、夏のいろいろな光は、それぞれその瞬間だけの草花の美しさを引き出します。
早朝は最高の撮影タイム
垣根道に咲くアメリカフヨウです。早朝は太陽が低く影も長く伸び、空気
感のある写真が撮れます。まだ柔らかい日光は草花を生き生きと見せてくれるので、庭を撮るにも最適の時間です。
風景の陰影を写す
陰影は広い風景でも同じようにいろいろな表情を作ります。日中はどうということのない山里の畑も朝日の陰影がまったく別の印象的な光景にしてくれます。太陽を待ちわびたようなヒマワリがアクセントになっています。
ただの草が見せる美しさ
高原の池に生えていた葦の仲間です。いつもはとくに目を引くこともない草ですが、日光の当たり具合でハッとするような美しい姿を見せてくれます。
花自身の陰影が見せる色
沈む間際の夕陽にほんのり染まったグラジオラスです。日光は背景だけでなく花色の微妙な陰影も演出してくれます。とくに秋のコスモスやダリアなどのピンクや赤系の花は、夕方にとても妖艶な姿を見せてくれます。
美ヶ原から霧ヶ峰、蓼科に続く夏の定番ドライブコースですが、いくつかの花スポットでは駐車場から歩いてすぐ花畑が広がるので手軽に撮影にとりかかれます。ハイキングコースも整備されています。(写真はキスゲ咲く霧ヶ峰。見頃は7月中旬。8月にはマツムシソウやワレモコウなどの秋草に替わる)
ビーナスラインの中ほどにある八島ヶ原湿原は花撮影の人気スポット。周遊できる散策路もあり、ヤナギランやコオニユリなどいろいろな花が迎えてくれます。
写真家。自然の中の風景写真を様々な媒体に提供するほか、園芸雑誌でも撮影を担当している。