10月-3.多彩に楽しむ秋のバラ園(ローズヒップ)

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秋バラは、栽培者の勲章

 春バラの饗宴が過ぎ、厳しい夏をやり過ごしてきたバラたち。夜の気温がしっかり下がるころになると、成長が穏やかになるので、花弁の数もぐっとふえます。夏の間はひらひらぺったんこだった品種も、ふっくら丸い花を咲かせるようになるでしょう。春よりも弁数が多かったり、花色が濃厚に見えたり、また、芳香が強く感じられるという人もいます。いよいよ秋バラのシーズンが始まりました。
 妖艶な秋バラは、夏の間じゅう、一見地味に見える難しい手入れを、丁寧に遂行してきた賜物といえます。栽培者たちの確かな腕が、花のきらめきとなって咲き誇っています。しかし、秋バラを楽しめるのは、四季咲き性をもつ品種だけなので、残念ながら、オールドローズや原種のバラの多くは、花が咲きません。

ローズヒップ、いろいろ

 秋バラを楽しめない一季咲きの種類にも、この時季だけのお楽しみがあります。そう、ローズヒップです。いわゆるバラの実ですが、果物の果実とは違う仕組みをもっています。植物学的には正しくは、花の子房部分が発達したものを果実としていますが、バラの実は、その内部に子房が発達したタネがあるので、本来はなかにあるタネのほうが果実(痩果/そうか)です。そして、バラの実そのものが果実=タネに見えることから、ニセの果実、偽果(ぎか)と呼ぶのが正確です。
 さて、ローズヒップのうち、もっとも身近なのは、ローズヒップティーとして楽しまれる種類でしょう。ローズヒップティーには、ロサ・カニナ(ドッグ・ローズ)やハマナスがよく利用されています。ハマナスは、寒冷地に自生する野生種ですが、この名前はハマナシ、浜の梨の転訛という説があります。そのローズヒップは丸く大きく、確かに梨のよう。自生地ではそろそろ赤く色づくのではないでしょうか。中間地では残念なことに、花後から色づいて、今の時季には落果してしまうのがほとんどです。
 春に、花径10cm近い一重の白花を咲かせるナニワイバラ。このローズヒップはオレンジ色で、細かい棘に覆われています。漢方薬では金桜子(きんおうし)という名前で呼ばれ、止瀉、縮尿などに利用されているそうです。
 生花店に並ぶローズヒップといえば、ノイバラでしょう。小さな真っ赤なヒップを無数につけた枝物が、秋らしさを添える花材として、出回ります。ノイバラのほか、ロサ・セティゲラ、ロサ・グラウカなどのたわわな赤いヒップつき枝物を、鈴バラという花材名で見かけることもあります。
 種類ごとに違う色形をもったローズヒップは、秋ならではのバラの楽しみのひとつです。艶やかな秋バラ観賞のおりに、バラ園や植物園で探してみませんか。私の一番のお気に入りは、ロサ・ギガンティアのヒップです。春に咲く、ミルク色の一重の花は、大きいけれどちょっと地味。だけど、現代バラにティの香りと尖った花弁をもたらしたといわれる重要な原種です。そのヒップは、ころっとまぁるい山吹色で、なんだかおいしそうに見えて、秋らしい豊穣さを強く感じさせてくれます。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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