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11月-2. 青い花への想い

青い花に、なぜか心惹かれて

 秋のガーデニングシーズンは、さまざまな植物のタネまき適期でもあります。春に見学した公園の花壇で、チューリップの足元をふんわり覆っていたワスレナグサに一目惚れ。秋は必ずタネまきして育てるぞ! と思っていたのに、天候不順により、10月のタネまきのチャンスを逃してしまいました。ワスレナグサのパステルブルーは、はかなげで美しく、健気な名前との相乗効果もあって、長年のファンもたくさんいらっしゃいます。
 そんなわけで今回のみちくさは、ワスレナグサの色、ブルーの花についてめぐります。

 私は、持ちものや服などにあえてブルーを選ぶことはあまりないのですが、花だとやはり、ブルーに惹かれることがあります。イングリッシュガーデンブームのときのデルフィニウムやニゲラ、ヤグルマギクなど、ガーデンにブルーの花というのは、ひとつの憧れでもありました。蒸し暑い日本で春夏の花壇には目にも涼しげで爽やかな色を、とブルー系が人気な理由もあります。

 しかし、青い花を用いようと思っても、季節的、管理的、もしくはデザイン的に、ぴったりするものが見つからなかったりしませんか。被子植物が28万種あるうち、青い花は1割に満たないというデータがあるそうですが、それぐらい少ないと思っていても間違いないようです。そのせいで青い花は、より一層、憧れの花という意味合いを強くします。特に、バラ、キク、ユリ、チューリップなどのポピュラーな花に青花がないことも、その気持ちをいっそう駆り立てるのでしょう。「青いバラは不可能の代名詞」といわれますが、これはバラが青い色素を持たないことに因んでいます。

不可能を可能に

 しかし、憧れが強ければ強いほど、不可能だといわれればいわれるほど、何とか実現したいと思うのが私たち人類たるところ。
 たとえば、バラ。古くから青いバラの育種は熱心に行われてきました。現代バラにその転機が訪れたのは、1957年の「スターリング・シルバー」「ブルームーン」の発表でしょう。もちろん日本の育種家たちも、後年「ブルーヘブン」(2002年、河本バラ園)「青龍」(2002年、小林森治氏)といった品種を発表しています。

 こうした青いバラ実現への熱意は遺伝子組換え技術にもおよび、日本の企業、サントリーフラワーズと、オーストラリアの企業の共同研究開発によって2009年に「アプローズ」という青いバラが切り花として発売されました。
 遺伝子組換え技術による青い花の実現は、1997年にカーネーションの切り花、「ムーンダスト」が最初で、今夏には青いキクができたというニュースが流れました。これらバラ、カーネーション、キクは元来青い色素を持たないため、ほかの花から色素を取り込む遺伝子組換え技術によって生まれました。

 切り花の世界では、どんどん進化する青い花。鉢ものとしては2013年に、千葉大学植物細胞工学研究室の三位教授が遺伝子組換えによって青いコチョウランを発表しています。しかし、これは一般流通はしておらず、イベントの展示などで見ることができるだけです。
 では、バイオテクノロジーによって生まれた青い花で、私たちが入手して楽しむことができるものは存在しないのでしょうか。じつは、あるんです。

 それは、今のシーズンにぴったりの花、シクラメン。こちらも前出のサントリーフラワーズが開発に関わっており、2011年に発売された「セレナーディアシリーズ」は、毎シーズン流通しています。
 こちらは、ほかの花から青い色素を取り込む遺伝子組換え技術によって生まれたバラ、カーネーション、キク、そしてコチョウランなどとは、また違う技術を用いて生まれました。青い花実現の技術は、遺伝子組換え技術だけによるものではないということに、今後のさらなる青い花の登場が期待できます。

 今秋、その青いシクラメンに、いっそう青い色を極める新ブランド「CCYT」が登場しました。すっきりとした剣弁の「江戸ノ青」、かわいらしい丸弁の「瑠璃玉」、シルバーリーフの「月下」、チョウが舞うような花姿の「胡蝶」、白と青の「冬化粧」の5品種で、和風なネーミングにも心惹かれる「現在最も青いシクラメン」といえそうです。

 このように私たちは、どこまでも青い花を追求してやみません。また、青い花の歴史に新たな一石が投じられるできごとが、日本の鉢もの生産を黎明期から支えてきたシクラメンだったということは、この秋の、ちょっと喜ばしい個人的なニュースでもあったのです。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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