11月-2. 寒さを味方に(イチゴ・ナバナ)

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かわいいイチゴは寒さに遭わせよ

 この時季、みちくさついでに菜園をのぞいてみると、畝に行儀よく並ぶイチゴの苗が目に留まります。かわいらしい真っ赤な果実を期待して、コンテナの寄せ植えに利用している方もいるでしょう。この時季から冬の間のイチゴの株は、あまり変化が見られず、じっと寒さに耐えているように見えます。じつはイチゴの花芽は、9月中旬ごろに気温が下がり、さらに日が短くなったことに反応してできるので、家庭菜園での植えつけ適期になる10月中旬ごろには、苗の体のなかにすでに花の準備ができているのです。秋が深まるとともに気温はどんどん低下しますが、イチゴはだいたい気温5℃ぐらいまでは、花芽をつくるそうです。
 では、その花芽がそのまま開花に至らないのはなぜでしょう。
 気温が5℃より低くなると、イチゴは休眠に入ります。花芽はつくったものの、無駄なエネルギーをつかわないようにできるだけ体は大きくせずにいるのは、厳しい冬をやり過ごすための作戦です。イチゴは5℃以下の気温を一定時間以上経験し、今度は再び日が長くなったことに反応して、ようやく花を咲かせることができるのです。つまりイチゴにとって冬の寒さを経験することは、耐え忍ぶだけではなく、開花に必要な条件でもあるのです。ちなみに低温の必要時間は品種ごとに異なり、家庭菜園でおなじみの‘女峰’は5℃以下の気温に250時間以下、‘宝交早生’では500時間程度とされています。東京の最低気温が5℃程度になるのは12月に入ってから。開花は2月下旬~3月ごろから始まります。

寒さに遭わせるものと、寒さから守るもの

 11月に入ると青果として店頭に並び始めるナバナ。アブラナ(在来ナタネ)や西洋ナタネの花蕾を味わうもので、春の味覚として親しまれています。11月から流通するのは営利農家ならではの栽培方法で、家庭菜園では9月下旬~10月にタネをまき、3月~4月上旬に伸びてきた花蕾を収穫するのが一般的です。
 この花蕾がつく花茎が伸びてくることを「とう立ち」、専門用語では「抽苔(ちゅうだい)」といいますが、花蕾の元となる花芽はタネが水分を得て発芽したときに秋の低温に反応してでき上がっています。花芽を擁しながら株は育ち、やがて冬至をこえて、その後日が長くなったことに反応し、いよいよ「とう立ち」して花蕾をつけるのです。
 ある程度の大きさになった株が、寒さを感じて花芽をつけるイチゴに対し、ナバナはタネの段階で低温に反応するという違いはありますが、両者とも開花のスイッチが、寒さと日の長さに関係しています。また、この性質は野菜ばかりではなく、秋まき、秋植え球根など、冬を越えて花を咲かせる観賞用植物にも共通しています。だからこれらの植物は、寒くてかわいそうだからといって、暖房の効いた部屋に置いてしまうと、うまく花が咲きません。いずれも戸外でしっかりと寒さを経験させてこそ、春によい花を咲かせることができるのです。
 ところが、秋から春にかけて栽培するナバナと同じアブラナ科の野菜のなかには、花が咲いてしまうと価値が落ちてしまうものもあります。ダイコン、カブ、コマツナ、チンゲンサイ、ハクサイなどは、「とう立ち」させると葉が堅くなったり、食用にする部位の食味が劣ってしまうタイプ。これらは「とう立ち」を抑えるために、タネまきをした段階からビニールトンネルなどで覆い、寒さに遭わせないように栽培します。広大な畑では、何列にも並ぶビニールトンネルが見られるでしょう。これらは野菜を寒さから守るためのものですが、守る理由には「おいしく食べる」という、そんなワケがあったのです。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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