4月-4.駆け上がれ!野菜苗前線

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トマトの旬を考える

 キュウリ、キャベツ、ダイコン、タマネギ、トマトなど、暮らしに馴染みがあり消費量が多い野菜14品目は、「指定野菜」というグループにまとめられます。それは国によって定められており、年間を通じて安定供給されるような仕組みが整っています。たとえばトマトは寒い時季なら暖地で、暑い時季なら寒冷地で生産されて、全国に供給されているのですが、季節によって産地が南から北へ移行していくようすは、まるで「桜前線」さながら。
 また、トマトはご存知のとおり南アメリカのアンデス山脈という高地が原産です。日本では夏野菜として扱われるため高温に強いと思われがちですが、トマトの実際の生育適温は日中の気温25~30℃、夜温10~15℃程度。日中は日ざしが照りつけて高温になっても、夜は肌寒いぐらいに気温が落ちるという、高地ならではの気候下で最もよく育つのです。そのため、高温多湿の日本の真夏はトマトにとっては本当は苦手な季節で、成長が停止したり、果実の色づきが早まる傾向にあります。近年の野菜売場で、早春からトマトがずらっと並ぶようになったのは、ガラス温室などの施設園芸の発達とともに、昼夜の温度をトマト好みにコントロールできるようになった栽培技術の恩恵によるものです。おかげで青果流通の分野では、今や春こそトマトの旬として挙げることも少なくありません。「トマトの旬は夏。寒い時期に無理矢理つくったトマトなんておいしいはずがない」という声もありますが、夏よりも時間をかけてじっくり赤くなった春トマトの味わいは、侮れないと感じています。

野菜苗の流通も、北上!

 とはいえ設備がなく、人為的な温度管理が難しい一般家庭では、自然の気温に頼って果菜類を栽培するほかありません。最近ではますます野菜苗の流通時期が早まり、関東地方以西では4月上旬にはすでに、トマトの苗が園芸店に並ぶようになりました。しかしこの時季はまだ遅霜があったり、日中の平均気温が20℃に満たない地域がほとんどです。果菜苗の入手はセオリー通り、大型連休を待ったほうがよいでしょう。しかし、欲しい品種がある、連休のころは忙しくて苗探しができないなどの理由で、どうしても早期に苗を入手しなくてはならない場合は、入手後すぐに2回りほど大きなポットに仮植えし、日中は暖かな場所に置き、夜間は軒下や室内に取り込みます。菜園への植えつけは、適期が訪れてから行うようにしましょう。
 また、昔から、タネまきや苗の植えつけ時期を判断するのに、「ソメイヨシノが散るころ」「ヤエザクラが咲くころ」など、サクラのようすがひとつの目安とされてきました。南北に長い日本列島の南と北では、ひと月以上も季節に差があります。こうした時期の目安を、身近なサクラの開花に合わせて語った先人の知恵は、今も変わらず生きているのです。「桜前線」に足並みを揃えて、あるいは追いかけるかのように、野菜苗の流通前線も南から北へと駆け上っていきます。夏の菜園プランを頭に描きながら、週末は園芸店へ足を運んでみませんか。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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