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5月-1.5月は緑色

 ヒガンザクラ、ソメイヨシノ、サトザクラと、近所で観賞できるサクラの花の移ろいは、今年もスピーディーだったわりに寒さが戻ったこともあって、花は意外と長持ちした印象がありました。毎年、私は眼福のお礼参りという名目で、5月の大型連休をめどにもう一回サクラを訪ねます。

共存しながら

 花見客で賑わっていた緑地は、休日を楽しむ親子たちの遊び場の体を取り戻していました。サクラは遊び場にも、そして突然やってきた「みちくさ」者にも、さっそく緑陰を提供してくれます。小さな果実をつけたミザクラの木は野鳥のおやつコーナーと化していて、突然の鳥の羽音にどっきりさせられたり。
 花ではなく、やっと木に戻り、のびのびと枝葉を伸ばすサクラに「また来るね、時折寄らせていただきます」と挨拶をし、その日の「みちくさ」は帰路となりました。

 私は都市部で暮らしているので、自分が栽培している植物以外に日常で触れる植物は、街路樹や公園の植物がほとんどです。国内で、全く人の手つかずの自然がある場所を訪ねることはほとんどありませんが、自然のままの場所の植物たちと都市の植物は、種類から育ちかたから何から何まで違うのは当然のこと。都市部の植物は、大幅に人の手を借りて育っているのですから、ひいてはそれが矯正に見えるという方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、人と植物が共存していくには、ある程度のルールは欠かせません。お互いに。

 一見、自然的であっても、実は巧妙に人の手が施されている植物も、都市部のみどりの特徴です。そんな植物たちは私たちに脅威を感じさせず、ちょうどよく自然の風合いと心地よさを提供してくれるという役割を担っています。その代表的なものが、農地や自然公園ではないでしょうか。

緑色の自己主張

 では、人間の管理下に置かれた都市部の植物は、植物らしい生命力に欠けるのかといえば、そんなことはありません。先日目に留まったのが、街路樹の様子でした。道路の交通を妨げたり、通行人に怪我がないよう、多くの街路樹は強めに剪定されています。また、行政のスケジュール優先で、生育に適切な時期に剪定されるとは限らないため、たまに「あれ? 今切るの?」という時期の作業を目撃することもあります。例えばある晩夏。もう少しの間、緑陰でいて欲しかったし、黄葉も待ち遠しかったイチョウが、短くカットされていました。
 案の定、その冬はコンパクトな黄葉並木がお披露目されたわけですが、今この時期にそのイチョウを観察してみると、街路樹の幹肌からは新しい葉が芽吹いていたり、株元からは頼んでもいない「ひこばえ」が伸びてきて、街路樹の樹木としての自己主張が始まっていました。

 そんな小さな変化でも、都市部の植物とあってはありがたいと思われてしまうのかと、彼らが少し気の毒な気もします。しかし、このように私の目に都市の植物たちは、十分に個性的に映っているのです。

 思い起こせば子どものころ、5月の雑木林を写生するのが大好きでした。芽吹いたばかりのうぶな緑色、勢いをます若々しい緑色、すっかりベテランの落ち着いた緑色、そして赤みを帯びて役割を交代せんとばかりの常緑樹の葉色。こんなに様々な緑色を一気にパレットにつくっては広げ、画用紙に乗せて絵を描けるのも、5月だけの楽しみだったからです。多様な緑色がつくる5月ならではの立体感と陰影を眺めていたら、緑色の水彩絵の具のにおいを、ふと思い出したのでした。

緑色の自己主張
コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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