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日本芝(コウライシバ)管理の総論

監修:株式会社那須ナーセリー  武井和久


 芝生に利用されるイネ科の草本植物を「芝草」と呼びますが、通常、「芝草を育てる」、「芝草を栽培する」とはいいません。一般には「芝生を管理する」、「芝生の手入れを行う」などと表現します。芝の場合は、対象とするのは芝草の1本1本ではなく、面的な広がりをもって生育する芝草の集まり、つまり「芝生」であるということです。また、栽培する目的も芝草を元気に大きく育てることではなく、芝生として利用しつつ、その美観や機能を常に良好な状態に維持することにあります。そのため、管理作業の内容も収穫や観賞を目的に栽培されるほかの園芸植物とは大きく異なります。ここでは、刈り込みをはじめとした芝生ならではの作業について、基本的な考え方や大切な注意点などを簡単に紹介します。

刈り込み

美しい芝生を維持するには、芝刈り機選びが非常に重要

 芝生を美しく維持するには、よく整備された切れ味の鋭い芝刈り機を使い、適正な刈り高と適切な頻度で刈り込むことが大切です。それにはまず、使用する芝刈り機の性能が重要となります。芝刈り機の良し悪しは芝生管理の良し悪しに直結する重大な問題なので、できるだけ高性能なもの、刈り高調整の自由度の高いもの、刈り刃の整備が可能なもの、そして何より、刈り込み作業がおっくうにならないものを選ぶことが大切です。

芝刈り機には芝を刈る仕組みの違いによって、リール式とロータリー式とがあります。リール式は回転する刃と固定した下刃で葉を挟んで切る、いわばハサミのような切り方です。ロータリー式は水平に高速回転する刃で葉先を刈り払う、いわばカマのような切り方です。前者は芝を低く刈るのに適しており、後者は高い刈り高に向いています。コウライシバの場合には刈り高が2~2.5cmと低めになるので、リール式の芝刈り機をおすすめします。

 芝刈り機の駆動方式には手動式、電動式、エンジン式などがありますが、騒音や作業効率などを考慮すると、家庭では電動式のものがおすすめです。電動式にはケーブルで電気を送るタイプとバッテリーを接続する充電タイプがあり、扱いやすいのはケーブルのない充電タイプですが、刈り込める面積(稼働時間)が制限されるなどの問題があるので、選ぶ際には注意が必要です。

 芝刈り機を選ぶ際に見落とされがちなのが、刈り高の設定幅と調整の自由度です。芝生の刈り高はそのときどきの芝の健康状態や伸び具合に応じて適宜、変更する必要がありますが、刈り高の設定幅が狭かったり、数段階しか調節できない機種では、適切な刈り高で刈ることができません。芝刈り機を選ぶ際には刈り込み方式や駆動方式の違いだけでなく、必ず刈り高調節の自由度についても確認しておきましょう。

刈り込みにおける最大のミス、それが「軸刈り」

 軸刈りとは不適切な深刈りにより、芝の葉の大部分を刈り取ってしまうことです。大抵は単純な刈り高の設定ミスが原因ですが、長雨などで刈り込みができずに芝が伸びすぎ、それを前回と同じ刈り高のまま刈り込んだ時に多く起こります。極端に葉が少なくなった結果、芝生が黄化し、美観を損ねるばかりか、回復までに多くの時間を要し、最悪の場合には張り替えが必要になることもあります。特に梅雨の期間は軸刈りの発生リスクが高まるので、刈り込みの前に必ず設定した刈り高が芝の高さに合っているかどうかを確認します。

 また、芝生面に大きな凹凸があると凸部の芝だけが深刈りとなり、部分的な軸刈りが発生することがあります。俗にこれを「かじる」などと表現しますが、もし芝刈り機がかじるようならば、刈り高が低すぎる証拠です。いったん、かじらない程度の高さに刈り高を上げ、目土などで凹部の補正を行います。

刈り込みにおける基本「刈り高2/3ルール」とは

 軸刈りになるほどの極端な深刈りでなくても、刈り込み自体が芝にストレスを与える行為であることに変わりはありません。よって、刈り込みを行うに当たっては、できるだけ芝へのダメージを抑えるような配慮が必要です。そのひとつが、「1回の刈り込みで今の芝の高さの1/3以上は刈りとらない」という刈り高を決める際の基本的な考え方、いわゆる「1/3ルール」です。このルールを守れば、少なくとも不適切な低刈りによって芝の生育を悪化させることはないとされています。

 初心者にもわかりやすく、刈り高や刈り込みのタイミングを決めるのに非常に便利なこの「1/3ルール」ですが、ネーミングとしてはあまり気の利いたものではありません。通常、刈り込みを行う際に知りたいのは、「今の芝の高さに対して適正な刈り高は何㎝なのか?」であり、それには先程の「1/3以上は刈り取らない」という表現よりも「芝の2/3以上は残す」という表現のほうが、はるかにわかりやすいはずです。

この「芝の2/3以上は残す」を刈り込みにおける基本ルールとして覚えると、刈り高を決める際や刈り込みのタイミングを決める際におおいに役立ちます。適正な刈り高を知りたければ、芝の高さを測り、それに2/3を掛けるだけです。また、安全な刈り込みのタイミングを知りたければ、設定した刈り高を2/3で割る、つまり1.5倍して、芝を何cmまで伸ばせるかを計算します。芝の高さの上限がわかれば、芝がその高さになる前に刈り込みを行えばよいことになり、もし悪天候などでそれまでに刈り込むことができなかった場合には、刈り高を上げる必要があると判断できます。このように、刈り込みにおいては2/3という数字こそが重要であり、ぜひ、「1/3ルール」ではなく、「刈り高2/3ルール」として覚えておくことをおすすめします。

水やり

水やりに適した時間帯は早朝

 基本的に水やりは風のない早朝に行います。早朝ならば比較的風も弱く、しかも昼ごろには芝の表面も乾くので、蒸れや病原菌の繁殖を抑えられます。もちろん、日中や夕方であっても芝がしおれてきた場合にはすぐに水やりする必要がありますが、夜間も地上部や表層が湿っていると病気の発生リスクが高まるので、できるだけ早朝1回の作業だけで間に合うような水やりを心がけてください。

 なお、冬は、低温の早朝よりも気温が上がった午前中に水やりを行います。

水やりの基本は「水量は多く、回数は少なく」

 コウライシバは乾燥すると葉が丸まって針状になるので、観察さえ怠らなければすぐにそれとわかります。葉がしおれはじめたら、スプリンクラーか散水ホースを使って、すぐに水やりを行います。

 水やりの基本は、「水量は多く、回数は少なく」です。作業時は、土壌深くしみるまでたっぷり、ゆっくり水を与えますが、水やりの間隔はできるだけあけるようにします。少量ずつ頻繁に水やりすると芝の根が浅くなるだけでなく、土壌中に新鮮な空気も入らなくなり、根が窒息して弱ってしまいます。とくに粘土質系の土壌では水の浸透が遅いため、水が浮いてきたからと水やりを止めてしまうと撒水量が不足し、結果的に頻繁な水やりが必要になります。そのような土壌では、浮いた水が浸透するのを待って、再度、水やりします。

施肥

肥料を与える場合には、まきすぎと「肥料焼け」に注意

 芝生に肥料を与える場合には、まきすぎと肥料焼けに注意する必要があります。肥料のまきすぎは芝の伸長を急激に増加させ、芝の大型化、軟弱化をもたらします。さらに刈り込みなどの手間もふえ、病害虫や乾燥にも弱くなります。いったん与えてしまった肥料は回収できないので、肥料は少量ずつ与え、芝の伸びや葉色の変化を見ながら、与える間隔を調整します。

 肥料焼けは、溶け出した高濃度の肥料成分にさらされて葉が枯れる症状で、「葉焼け」とも呼ばれます。この肥料焼け(葉焼け)は速効性の肥料で起きやすく、とくに葉が湿った状態のときに粒状の固形肥料をまき、葉に肥料が付いたまま放置すると起きやすくなります。したがって、粒状の速効性肥料を使用する場合には、散布後に水やりをして葉から肥料の粒を洗い落とします。また、肥料をまいたすぐあとに芝生に立ち入ると、肥料の粒が踏まれて潰れ、高濃度の成分がしみ出すことになるので、粒状肥料をまいたらしばらく芝生へ立ち入らないよう注意します。さらに、肥料焼けは高温のときほど起こりやすいので、夏は速効性の粒状肥料は使わずに、液体肥料や緩効性肥料を使用するとよいでしょう。

芝生用の肥料は細粒で成分量の少ない肥料がおすすめ

 芝生ならではの施肥のポイントは、粒状肥料を使用する場合の粒の大きさです。コウライシバの芝生では茎葉の密度が高く目が詰まっているので、大きな粒状肥料は葉の上に留まり、地際までうまく落ちてくれません。葉の上に残ったままの肥料は肥料焼けの原因になるだけでなく、刈り込みの際に刈りかすと一緒に回収されてしまったり、人に踏まれて粒が砕け、肥料分が過剰に溶け出すことにもなりかねません。芝生に固形の肥料をまく場合には、必ず細粒のものを選び、散布後は水やりなどで肥料を地際まで落とすことが重要です。

 また、芝生の場合、肥料のまきムラがあると、それが芝生の色ムラとなって現れ、芝生の美観を損ないます。そのため、肥料をいかに均一にムラなくまくかが重要となります。それにはできるだけ小さな粒で、成分量の少ないものを選ぶことです。成分量の多い高度化成肥料ではおのずと粒の数が少なくなり、それだけまきムラが生じやすくなります。したがって、芝生用の粒状肥料としては「マイガーデン芝生用」(N-P-K=8-8-8)のような細粒で成分量の少ない肥料が、肥料焼けや色ムラが起きにくく扱いやすいといえるでしょう。

サッチ取り

サッチとは

サッチとは、分解されずに残った枯れた茎葉やほふく茎、地下茎などに生きた根や地下茎などが入り込み、ある程度の厚さになったもののことです。サッチと聞くと刈りかすをイメージされる方も多いでしょうが、温度が高く、土壌微生物が元気に活動していれば刈りかすの分解は早いので、ほとんどサッチとしては残りません。ですから、刈りかすを回収せずに土に戻す「グラスサイクリング」を行ってもサッチの蓄積にはつながらないとされています。

 サッチになる古い直立茎やほふく茎、地下茎、根などは分解されにくい成分を多く含むため、いつまでも表層に残り、それが堆積してサッチ層を形成します。そして、その層のなかに生きた根や地下茎などが入り込み、サッチ層はさらに厚くなります。サッチ層が厚くなるとスポンジ状になり、ふかふかな芝生となるだけでなく、芝の生育や管理面でいろいろと悪影響をおよぼします。たとえば、厚いサッチ層は水や空気の通りを妨げ、芝の根を浅くし、病原菌やキノコの菌のすみかとなり、病害等の発生リスクを高めます。さらに、サッチ層が邪魔をして、除草剤や肥料の効きも悪くなります。ただ、サッチには芝のすり切れ防止などの効果もあるので、あくまでサッチ取りは過剰な蓄積を防ぎ、サッチ層を適度な厚さ(1cm程度)に維持することを目標とします。

目土入れ

コウライシバの芝生でこそ重要となる目土入れ

 目土入れは、コウライシバのようなふかふかになりやすい芝生ではとくに重要で、美しい芝生を永続的に維持するうえでは欠かすことのできない大切な作業です。

 芝生面の凹凸を補正する場合ならば、相応に厚く目土を入れる必要がありますが、更新作業としての目土は新たな分けつの発生や枯葉の分解を促したり、サッチに目土を混ぜてサッチ層の形成を緩和することが目的なので、入れる量はわずかで十分です。目安は地際に残る枯れ落ちた古い葉が隠れる程度で、その上にある緑の葉が隠れるほど入れる必要はありません。その代わり、できるだけ定期的に回数多く実施するのが理想的です。とくにマット化しやすいコウライシバの芝生においては、この頻繁な薄目土こそが、良好な芝生を長く維持するための重要なポイントになります。

目土にはどのようなものを使うべきか、その判断が非常に重要

 床土に異なる土壌の層をつくることは、土壌中の水や空気の移動に少なからず影響をおよぼします。そのため、目土には床土と同じものを使用するのが理想とされています。しかし、実際には、砂や市販の用土を床土とした場合でもない限り、床土と同じ土を入手することは困難です。したがって、多くの場合、床土とは別の土を使用することになりますが、その際はできるだけ通気性や水はけに優れ、固結しにくく、雑草のタネを含まないもの、たとえば、川砂や洗い砂、焼き砂、目土用の園芸培土などを選びます。

 砂や目土用土を使用する場合には、粒径にも注意します。ひと口に川砂、洗い砂といっても、含まれる粒の大きさはさまざまです。本来、砂であれば粒径は2mm以下のはずですが、ものによっては2mmを超える礫(れき)が混ざる場合もあり、そうした大きな粒は芝生の上に残り、美観を損ねるばかりか刈り込みの際に刈り刃を傷める原因にもなります。また、目土用土として販売される製品であっても粒径が大きすぎる場合もあるので、購入前に必ず粒の大きさについても確認しておきましょう。

エアレーション

エアレーションが必要な芝生とは

 エアレーションとは芝生に小さな穴を開け、そこに新鮮な土を入れて芝生と土壌の更新を図る作業です。過剰なサッチ層が形成されて芝生がマット化した場合や、床土が固結して通気性や水はけに問題が生じた場合などに実施します。したがって、床土の固結も見られず、目土入れやサッチ取りなどで十分に美しい芝生が維持できているのであれば、あえてエアレーションを行う必要はありません。基本的に、造成して間もない新しい芝生であればエアレーションは必要ありませんが、もし水やりの際や降雨時に水はけの悪さを感じたり、施肥が十分であっても芝の根が浅い場合などは、たとえ造成1年目の芝生であってもエアレーションを行うことをおすすめします。

 また、床土が火山灰土壌である場合、とりわけ造成時に元肥としてリン酸肥料を入れなかった場合にもエアレーションはおすすめです。火山灰土壌にはリン酸を固定して無効化する性質があり、そのため、追肥としてリン酸を施しても多くは土壌に固定されてしまい、芝はほとんど吸収することができません。しかもリン酸は土壌中をあまり移動しないので、芝生の上からの施用では、表層ばかりにリン酸が集中してしまいます。そこでエアレーションを行って穴を開け、そこに熔リンや蒸製骨粉などのク溶性*のリン酸を目土と一緒に擦り込みます。こうすることで、少しずつですが芝の根にリン酸が吸収されるようになり、芝の生育の改善や安定化につながります。
※ク溶性のリン酸:根からの分泌物によって溶け出すタイプのリン酸。土壌に固定されにくい。

病害虫対策

コウライシバでの病害虫対策は予防が中心

 家庭での芝生の病害虫防除は決して簡単ではありません。なぜならば、専門的な知識や技術以前に、多くの場合、早期発見に不可欠である常時の観察や、被害を最小に抑えるための迅速な対応が難しいからです。そのため、家庭の芝生においては病害虫を発生させない予防的な対策こそが重要であり、これが病害虫防除の中心になります。

 家庭園芸における予防的対策とは、病害虫の発生しやすい時期に、あらかじめ殺菌剤や殺虫剤を散布することではありません。日ごろの刈り込みや施肥、水やり、サッチ取り、目土入れやエアレーションなどの各種作業を通じて、病害虫の発生しにくい環境を整え、芝のストレスを減らし、病気や害虫に強い丈夫な芝を育てること。これこそが家庭園芸での病害虫対策の主眼です。

 このようにいうと、なにか病害虫を防ぐコツがあるように思われるかもしれませんが、やるべきことは各種作業の基本を守って、適切な時期に適切な方法で行うということだけです。つまり、誤った時期に誤った方法で行ったり、やるべき時期にやるべき作業をしないということがないよう心がけ、自らの怠け心に打ち勝つことにほかなりません。そもそも、コウライシバは必要とする管理作業もさほど多くはないので、家庭園芸であっても基本的な作業を適切に実践することは可能なはずです。万一の場合には殺菌剤や殺虫剤で防除するという手段もあるわけですから、みだりに病害虫をおそれず、日常の作業をひとつひとつまじめに行うことが大切です。ただし、万一の場合を見逃さないよう、日ごろの観察だけはくれぐれも怠らないようにします。

病害虫対策には代表的な病害虫についての知識も必要

 芝生になんらかの異変が生じたとき、その原因が何なのかがわからないと正しい対策が立てられません。しかし、このこと自体、家庭園芸においては決してやさしいことではありません。

 芝が傷む原因は実にさまざまで、ときに芝生管理のプロでも判断がつかないことがあります。ですが、コウライシバの芝生に発生しやすい病気や虫害は何かだけでも知っていれば、たとえアマチュアであっても、ある程度まで候補を絞りこむことはできます。さらに、それらの病害虫がいつごろ、どのような天候のときに発生しやすいかまで知っていれば、より高い精度での絞りこみが可能となります。ぜひ、コウライシバに発生する代表的な病害虫だけでも、その名称や症状、発生時期、有効な対策などを理解しておいてください。きっと何かの異変があったとき、その知識があなたの心強い味方になるはずです。

コウライシバに多い病気

 コウライシバに多い病気としては、芝生に黒っぽい5~10cm程度の斑点が生じる「カーブラリア葉枯病(犬の足跡)」や、黄色からオレンジ色の鉄さび状のものが付着する「さび病」、直径20~30cm程度の白っぽい枯れが生じる「疑似葉腐病(象の足跡)」などがあり、これらは家庭の芝生でも発生しやすい病気です。また、キノコの菌が原因の「フェアリーリング病」が発生することも珍しいことではなく、白色や灰色、紫色などの泥状のものが茎葉に付着する「ほこりかび病」もときおり発生が観察されます。

 「カーブラリア葉枯病(犬の足跡)」の発生は5月以降で、雨が続くと発生しやすく、とくに梅雨や秋の長雨のときに多く発生します。サッチの蓄積や水はけ不良、チッ素過多などに注意し、発生した場合には早めにTPN水和剤やイプロジオン水和剤などで防除します。とくに秋の発生は病気の痕が長く残るので、早期発見、早期防除を心がけます。

 「さび病」は5~7月と9~10月の年2回が発生しやすい時期です。発生が多いと靴が黄色くなるほどですが、芝が枯死するほどの被害にはならないので自然回復を待ってもよいでしょう。薬剤で防除するのであればサプロール乳剤などのトリホリン乳剤が使用できます。詳しくはこちらを参照してください。

 「疑似葉腐病(象の足跡)」は5~6月と10~11月に多く発生します。芝が枯死することはありませんが、パッチ(斑)がふえると芝生の美観が損なわれます。発病初期であればTPN水和剤が有効です。

 「フェアリーリング病」はリング状に芝が変色または枯死し、そこからキノコが発生する病気です。早春から晩秋まで幅広く発生しますが、もっとも多いのは春と秋です。防除の方法など詳しくはこちらを参照してください。

 「ほこりかび病」は梅雨や秋の長雨などのときに発生しやすく、ある日突然、泥のかたまりのようなものが葉に付着しているのに気づき、その異様さに驚かされます。芝へのダメージはほとんどなく、発生も短期間かつ局所的なので、とくに防除は必要ありません。

コウライシバに多い虫害

 虫害としては、幼虫による根や茎葉の食害が大きな問題になります。被害をおよぼす害虫としては、コガネムシ類やスジキリヨトウ、シバツトガなどの幼虫があげられます。

 いずれも日中は地際や地中に隠れていることが多く、それが原因の特定を難しくしています。しかし、いずれの場合も茎葉や根を食べられることによる被害なので、枯れた部分をよく観察すれば食害かどうかは容易に判断できます。スジキリヨトウやシバツトガなどの芝の茎葉を食べる害虫であれば、枯れた部分の茎葉が軸刈りしたかのようになくなっています。コガネムシ類などの根を食べる害虫であれば、枯れた茎葉は乾燥害と同じようにしおれ、引っぱるともちあがるのでそれとわかります。また、芝生にカラスが飛来し、くちばしで芝生をつついているようなようすが見られれば、コガネムシなどの幼虫がいる可能性が疑われます。すぐに殺虫剤を散布する必要はありませんが、虫害の発生に注意して経過を観察しましょう。

 虫害への対応については、その被害の面積や広がる早さで判断します。発生した害虫の数に応じて被害の程度も変わるので、被害面積が大きい場合や急速に拡大しているような場合には、殺虫剤による防除を検討します。コガネムシ類であればMEP剤が、スジキリヨトウやシバツトガであればMEP剤やアセフェート剤が使用できます。

雑草対策

雑草対策は造成時とその後1年間が大切

芝生を美しく維持するうえで雑草の発生は非常にやっかいな問題で、とくにこまめな手入れが難しい家庭の芝生においては病害虫以上に深刻な問題といえます。ともすると、造成当初は美しい「芝生」だったところが、次第に雑草がふえて「草生」になり、数年後には「草むら」になってしまうことがあります。こうなるともはや専門家でもお手上げで、たとえ除草剤でうまく雑草を枯らせても、芝はほとんど残っておらず、ただの裸地にしかなりません。

 これはあくまで最悪のケースですが、コウライシバのような比較的手間のかからない芝生においても、雑草対策だけはほかの芝生と変わりません。手間を惜しめばそれだけ問題は深刻化し、再び美しい芝生に戻すには相応の手間と苦労が必要となります。病害虫と同様、雑草の問題についても、被害が小さいうちに有効な対策を講じ、被害を拡大させないことが肝心です。そのためにはまず、芝生を造成する際にしっかりと雑草対策を行い、さらにその後の1年間に雑草を徹底的に取り除くことが大切です。

 造成時の雑草対策は、除草剤できちんと雑草防除された良質の切り芝を入手するところからはじまります。芝は目地を開けずに張り、その上に適度な厚みの目土をまんべんなく入れます。このとき、目土には必ず雑草のタネが混入していない、焼き砂や洗い砂、目土専用の培土などの用土を使用します。雑草のタネが混ざった土を使用したのでは、かえって雑草をふやすだけです。その後は芝が乾いて枯れないよう十分に水やりし、芝のすみやかな活着と再生を促します。さらに、芝生の周囲に雑草がないかも確認して、もし雑草があれば手で除草します。これらの対策を徹底できれば、造成後に発生する雑草も少なくなり、管理段階での除草の手間を大幅に軽減できるはずです。

 造成後は、最初に迎える春と秋が勝負です。雑草の発生には春と秋の2回のピークがあり、それぞれ発生する雑草の種類が異なります。たとえ造成時の対策を十分に行ったとしても、床土には多くの雑草のタネが眠っており、最初の春と秋にはそれなりに雑草が発生するはずです。しかし、1年目にしっかりと除草できればそのぶん芝生の密度も高まり、2年目以降、雑草対策はほとんど不要になってきます。それまでの辛抱なので、1年目の春と秋は徹底した手での除草を心がけてください。

雑草がふえすぎた場合は、除草剤による防除がおすすめ

 すでに芝生を造成ずみであれば、上記のような造成時の雑草対策は行えません。その場合は、地道な手での除草か、除草剤による防除を行うことになります。

 先述のように多くの雑草は春と秋に発生が集中するので、その時期を中心に、雑草を見つけ次第、小さいうちに手での除草を行います。しかし、実際に手での除草で対応できるのはポツポツと発生した雑草までで、一面に大発生した雑草や、放任して大型化してしまった雑草に対してはあまり有効ではありません。そうした場合に役に立つのが、コウライシバに影響をおよぼさず、雑草だけを枯らしてくれる芝生用の選択性除草剤です。今では家庭園芸向けに使いやすく工夫された芝生用除草剤があるので、雑草がふえて困った場合の解決策としておすすめです。

 芝生用の除草剤には茎葉処理剤と土壌処理剤とがあり、前者はすでに発生してる雑草にのみ効果があり、後者はこれから発芽してくる雑草や発芽して間もない幼い雑草のみに効果があります。また、除草剤ごとに効果がある雑草の種類も異なるので、入手する際には必ず用途に合った正しい除草剤を選んでください。さらに、使用に際しては、必ず付属の説明書を読み、正しい用法、用量で使用するよう心がけてください。

監修:芝生研究家  武井和久

1963年栃木県生まれ。千葉大学大学院園芸学研究科修士課程修了。 1989年より千葉大学園芸学部助手。園芸別科(造園・樹木専攻)担当の傍ら芝草研究に従事。 1993年より株式会社那須ナーセリーに入社。寒地型芝草研究所研究員、後に主任研究員。2000年よりウェブサイトの制作・運営に携わり、芝生関連情報の公開およびサポートに努める。2006年より情報管理課長。現在、社内のIT全般を担当しつつ、芝生調査や教育研修に当たる。 2016年3月、家の光協会より「一年中美しい 家庭で楽しむ芝生づくり12か月」を上梓。

芝生の管理のための作業について、考え方や注意点をご紹介しているページです。
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