6月-2.日本が誇る果物、柿

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6月は柿の開花期

 秋になるとオレンジ色に色づいて遠目にもはっきりわかる柿は、実りの季節のシンボルのひとつ。今の時期のテーマにしては、ちょっと季節外れ? と感じる方も少なくないと思いますが、じつは柿の開花期は6月上旬。花自体は小さく、緑色を帯びて目立たず気づかれにくいために、ほかの花木や果樹の花のように、話題に上ることが少ないのでしょう。
 柿の花は雄花と雌花に分かれていますが、多くの品種では雄花がつきません。ところが柿は雌花が受粉しなくても果実をつける単為結果性という性質をもっているため、1本でも果実をつけることができるのです。
 若い果実が落ちる現象は、カキノヘタムシガなどの虫害の場合もありますが、多くは生理的に自然落果するものです。柿の木自身が実つき具合を調整して、エネルギーを無駄遣いしないようにしているのです。生理落果が起きる時期は開花が終わった6月下旬ごろ。よい果実を実らせるための人為的な摘果作業は、生理落果が一段落したころに行うとよいでしょう。

日本から欧米へ広がった柿

 柿の起源は中国との説がありますが、紀元前より日本を含む中国、韓国など東アジアの一部に分布していました。日本では縄文・弥生時代の遺跡からタネが見つかっており、7世紀ごろには栽培開始、10世紀にはすでに広く普及していたそうです。やがて17世紀には日本からヨーロッパへ、19世紀には北アメリカへ伝わりました。日本から欧米へ伝わった経緯から、学名(ディオスピロス・カキ/Diospyros kaki)にも「カキ」の名前が使われているのです。
 さて、ホームページコンテンツ内コラム『日本の伝統野菜入門・京都の伝統野菜』の中で、日本原産の野菜はたった20種ほどと触れていますが、日本に古くからあるものとしては、柿のほか、スモモ、日本ナシ程度と、果物は種類がさらにぐっと少なくなります。それでも柿は私たちの祖先の身近で長く親しまれてきたので、明治時代の調査ではすでに1000品種近くがあると記録されています。現在も各地に柿の品種、およびその地域ならではの流通名がつけられたものがあり、青果物として一般流通するほか、それぞれが各地の名産品としても扱われています。

利用幅が広い果物

 畑だけに限らず、家の庭先などにも気軽に植えられ、庶民に四季の移ろいと豊穣の恵みをもたらしてくれる柿。熟した果実を生食するほか、干し柿にすれば保存できるという利点があります。甘味が贅沢だった古い時代は、さぞ重宝だったことでしょう。晩秋から冬にかけての干し柿づくりの様子は、今もなお生産地以外の農村でもよく見られる光景です。
 また、渋みが豊富な未熟な果実を発酵、熟成させてつくる柿渋(かきしぶ)は、古い時代から木工製品や紙製品の下塗り剤、防腐剤、保護剤などにも利用されてきました。
 柿の木は強度的に弱い割に加工が難しい点があるものの、ゴルフのドライバーに利用されるなど、高級木材として扱われています。このように食用以外での用途が広いことも、ほかの果物にはない柿ならではの特徴といえるでしょう。
 さらに近年では、ジャムやゼリーなどの各種菓子類のほか、柿ワインや柿酢、そして食品以外では石けんなどにも加工されています。柿は、さらに多様な利用の可能性を秘めている果物なのかもしれません。これを機に、日本が誇る古くて新しい果物・柿を、もう一度見直してみませんか。

コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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