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6月-3.雨の日の植物園

 5月の陽気は意外と変化に富んでいて、「あれ?5月ってこんなだったっけ?」 と、去年の日記を読み返してみたりしていました。バラが少し早めに咲き出したのだけは、ただ嬉しいばかり。
 そして、いよいよ雨の季節。屋外取材の日程を組むのがとても悩ましくなり、予定表と天気予報でにらめっこが増えるのです。

懐かしい面影を探しながら

 先月のある日の屋外取材は、真夏のような日ざしのなかでした。まだ5月だしと油断していて真夏仕様の準備をせずに臨んだため、高温と流れる汗にちょっとヘトヘト気味になりながら、仕事を進めることになりました。
 ところがその翌日は、朝からどんより曇り空。出先では、ときおり雨が音を立てて降り、都度軒下に駆け込んだりしていて、前日とのギャップに身体がついていけなくなりそう。
 そうこうしながら用件を終え、帰路へと向かったのですが、やっぱり「みちくさ」へと足が向いてしまいました。その場所は私にとって懐かしいはずなのに、全然「知らない場所」だったのです。

 降ったり止んだりの、梅雨のハシリみたいな雨のすき間にみちくさしたその場所は、小学生までの私が何回も訪れていた植物園。しかし、記憶にある佇まいとはすっかり変わっていました。駅からの道すがらの風景も、園の門も、建物も、すべて建て替えられていて違うもの。それでも園内を進めば、伸びやかなマツの巨木の姿を記憶のなかに探し求める自分がいました。
 「アカマツの近くに池があったはず?」「あのころは植物よりオタマジャクシやトカゲを探すのが楽しかったな」「こんなに敷地は広かったっけ?」などと、ひとつひとつの植物を見るよりも、記憶の下敷きをかざしながら景色を楽しむひと時でした。

こんな植物と出会った

 「降ってきたわよー」。
 園内のオープンカフェのスタッフが声を上げると、樹木の葉がばらばらばらばらと一斉に音を立てはじめて、驟雨がやってきました。来園者たちは一斉に建物のある方へ小走りに急ぎます。
 植物園の園内で身近な建物といえば、そう、温室。私が遊びに来ていた時代に温室があった記憶はなく、あっても家庭用のビニールハウス然としたものだったような。

 さっそく入室した温室の入り口脇の目につくところには、今一番の見ごろを迎えた「ヒマラヤの青いケシ」ことメコノプシスが展示されていました。ガラスで囲まれたこの一角は、冷温室です。20鉢以上は並んでいたでしょうか。スタッフに尋ねてみると、25℃以上にはならない冷温室で管理されているものの、東京の熱い夏を越すことはなかなか難しく、寒冷地の産地から株を購入して栽培しているのだそう。メコノプシスは箱根の仙石原の植物園でも見たことがありますが、標高の高い箱根でももはや、夏越しが難しいと聞いています。
 温室内をぐるりと巡ったあとふと外に目をやると、弱まった雨のなか、合羽姿で屋外での植物を観察している熱心な来園者の姿が見られました。

 「よーし、私も!」と、ウインドブレーカーのフードをかぶって、いざ屋外へ。
 古の武蔵野の面影を残す樹木区域へ踏み込むと、植物のさまざまな香りが満ち満ちて、清々しさを満喫です。街中や住宅街の雨の日散歩も大好きだけれども、6月はあえて雨の日を選んで、植物園の園内を巡るのもいいな。また新しい秘密の愉しみを発見してしまった。そんなポジティブな気分をお土産に、懐かしいのに知らなかった場所の門を後にしたのでした。

花後のバラとクレマチス
コラム|ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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